2015年06月18日

NHK「スーパープレゼンテーション」|「世の中にはいろんなタイプの脳が必要だ」テンプル・グランディン

世の中にはいろんなタイプの脳が必要だ|テンプル・グランディン.jpg



NHK「スーパープレゼンテーション」|
「世の中にはいろんなタイプの脳が必要だ」
テンプル・グランディン



Temple Grandin:
「The world needs all kinds of minds」


テンプル・グランディン
アメリカの動物学者。2歳のときに自閉症と診断される。スピーチセラピーや様々な訓練を経て、現在はコロラド州立大学教授を務め、自閉症に関する講演活動を行っています。その他、家畜施設のデザインを手がけています。教師の一番好きな部分:生徒の”やる気スイッチ”をオンにすること


通常の脳は細部を無視しますが、自閉症の脳は細部に注目する特徴があります。今の世の中は概念的な方向に偏りすぎています。実践するということから遠ざかり、体験型の授業の減少がとても気がかりです。私は美術のような科目に秀でていましたからね。

体験型の授業の必要性.jpg


牛に関しての話|家畜施設のデザイン
ほんどのひとが見落とす些細な点が牛を尻込みさせていました。牛の通路にもぐり、牛の視点に立ってみてわかったことです。フェンスにかかったコートや影や床のホースが牛を尻込みさていましたが、だれも気がついていませんでした。

わたしは視覚型思考という言語ではなく絵で考えるという思考を持っていますが、それは脳内で映画を見るようなものです。たとえば、教会の尖塔というと大半の人は一般的なものを想像しますが、私はグーグルの画像検索のように具体的な画像が次々と浮かんでくるのです。靴という言葉では50年代、60年代とたくさんの靴が脳内に浮かんでくるのです。

私は社交的ではなかったので自分自身ではなく、自分の作品を売る必要があると早い時点で学びました。自分が書いた図面を見せて家畜施設の仕事を得ました。わたしの視覚型思考は家畜施設をデザインする上で利点になりました。おかげでデザインした設備を自分の脳内で試験運用することができました。


情報の分別
私の視覚的思考は動物の気持ちを知る上で大きな力となりました。動物は知覚で考える生き物です。言語ではなく、絵で考え、音で考え、においで考えます。動物や私の脳は知覚で得た情報をカテゴリーに分別します。馬に乗っている人、地面に立っている人、これらはまったく別のものとして認識されます。

たとえば、乗り手に虐待された馬がいるとします。この馬は獣医や蹄鉄工を恐ることはしませんが、乗馬はさせないでしょう。一方で蹄鉄工に虐待された馬がいたとします。その馬は、地面に落ちているものや獣医を恐るようになりますが乗馬することはできます。

一般には、このように情報を分別することを苦手とする人が多いのです。私が施設の設備などの問題を解決しているとき彼らは把握できないのです。人の訓練の問題なのか、その設備に問題があるのか、設備の問題と人間の問題に分別する必要があるのですが、多くの人は苦手なのです。

航空機の問題を考えてみましょう。私が連邦航空局にいたらどこに飛行機の安全な運行についてどこに注視するかといえば、飛行機の尾部です。過去20年間で5件の大事故が尾部が原因で起こっています。私がこういうことを考えるとき、すべての詳細な情報をたぐって具体的で基礎的な部分から検証をします。細かなピースを集めて、パズルのように組み立てます。

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あらゆるタイプの脳が協力することが大切
将来必要となる時代が必ずやってくる



私をいらつかせることのひとつは、自閉症の会合に参加し多くの天才予備軍に出会いますが、ちょっと社会的でないだけで、彼らの関心を科学や他のことに向けさせようとしないことです。

わたし自身が高校のときはダメ生徒扱いを受けました。カーロック先生の科学の授業を受けるまでは勉強に興味を向けることがありませんでした。しかし、カーロック先生はわたしに目の錯覚を解き明かすよう仕向けたのです。カーロック先生が行ったことは、子供たちが興味をそそられるものを提示したということです。残念なことに中西部やあまり進んでいない地域では教師が何をすべきかわかっていないのです。そのために道を誤ってしまいます。


自閉症の脳の後頭部辺りには余剰な回路があるという研究があります。より思慮深い認識能力のある頭脳にすることもより社会的な頭脳にすることも可能です。わたしはカーロック先生に背中を押されるまで勉強嫌いのダメ生徒でしたが、仕事の経験がありました。時間を守るという基本は8歳のときに教わりましたし、祖母の家でテーブルマナーを学んだり幼い頃に教えられたのです。13歳のときには洋服の仕立て屋で裁縫の仕事をしていましたし、大学ではインターンシップに参加しました。


馬のばかり描くわたしに他の絵も描いてみないと母が言ってくれました。自閉症の脳は執着する傾向がありますがそれを利用して子供のやる気を引き出すことができます。たとえばレーシンガーが好きならそれを算数に使って、この距離を何分で走るなどと執着心を利用するのです。


わたしの背中を押してくれたカーロック先生は非公認の先生でNASAの科学者でした。アメリカではいくつかの州で生物学や化学の学位があれば教壇に立つことができます。この仕組みを有効に活用すべきだと考えています。たとえば、ソフトウェア産業をリタイアした人たちに教えてもらうことです。教える内容が古くても構いません。引き金となることが大切です。子供達のスイッチを入れるんです。新しいことは自ら学ぶでしょう。指導者は必要不可欠です。

最後にあなたの会社にインターンとして自閉症の子がやって来たとしましょう。「何かをつくれ」ではなく具体的な指示を出してください。「電話機のためのソフトでこの機能を持つ必要がある、使えるメモリはこれだ」といった具合にです。


子供達のスイッチをONにする.jpg




posted by CYL at 11:11 | スーパープレゼンテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月12日

NHK「スーパープレゼンテーション」|スローテレビ

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NHK「スーパープレゼンテーション」
スローテレビ


スローテレビといわれる北欧ノルウェーのテレビ番組が世界の注目を集めています。たとえば、その放送内容は暖炉で燃える薪をノーカットで12時間放送というものです。船からの景色を134時間生中継した番組では国民の6割以上が視聴し、世界最長の中継ドキュメンタリーとしてギネス世界記録に登録されました。今回のプレゼンはスローテレビの仕掛け人、ノルウェーのテレビプロデューサーのトーマス・ヘルムさんのプレゼンです。なぜ人はスローテレビに魅了されるのでしょうか?

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スローテレビのきっかけ

ノルウェーのテレビプロデューサーのトーマス・ヘルムは、意外な番組のアイデアで高視聴率をとって話題になりました。ノルウェーは国土の半分が北極圏に位置し人口はおよそ550万人です。ノルウェー最大のテレビ局がNRK(ノルウェー放送協会)でテレビプロデューサーを務めるトーマス・ヘルムは1992年に入社し、カメラマンを経てドキュメンタリー専門のプロデューサーになりました。2009年に同僚と食事中にあるアイデアを思いつきます。ノルウェーを横断する鉄道の旅をノーカットで放送できないかとひらめきました。トンネルが160箇所もあり、そもそも視聴者に受け入れられるのかと考えましたが、前代未聞の挑戦にヘルムさんは挑みました。

ヘルゲン鉄道7時間ノーカット

ノルウェーを横断するヘルゲン鉄道が開業100周年を迎えたことをきっかけに7時間のノーカット映像を取ることに決めました。撮影時間は7時間4分を想定しましたが、実際は信号故障があって7時間14分となりました。カメラは4台でそのうち3台が外の景色を映し出し、ときどき画面にテロップがでます。真っ暗になってしまうトンネルでは、記録映像を流しました。良い番組ができたと思ったヘルムさんは、鉄道オタク2000人くらいがみるだろうと思っていました。

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2009年11月に放送すると予想外の大ヒットを記録し、普通の金曜日に放送された番組は120万人が見たのです。SNSでも話題になり、人々がまるで一緒に旅をしているような感じでやりとりをしていました。76歳のある男性は終点の駅で立ち上がり荷物を取る動作をし家のカーテンレールに手をぶつけて我に返ったというほどに、番組の中に入り込んでいたのです。そんな中、視聴者から、もっと長い番組、たとえば8040分でノルウェー沿岸急行船の旅とはどうかという感想がありました。


3000kmの船旅をライブで

ベルゲンからキルケネスまで3000kmを結ぶ航路は120年の歴史を誇り、いまも沿岸住民の生活を支えています。鉄道の旅は録画したものを放送しました。列車が出発するときに手を振る男性が写っていますが、彼は記者であらかじめテレビ局から連絡をしてきてもらっていたのです。もしコレが生放送だったらたくさんの人が訪れてくれるかもしれないとヘルムさんは考え、船旅の番組は生放送で放送しようと決心しました。

多くの人が船を見送りました

テレビ局にとって船での撮影ははじめてではありませんでしたが、5日半に及ぶ番組で何がみたいか意見をネットで聞き多くの意見が寄せられました。2011年6月、番組スタッフ23人が船に乗り込んで撮影に出発しました。予想通り多くの人が船を見送りました。SNSでも盛り上がり、最終日、ノルウェー王妃が登場したときにはツイッターがダウンしてしまったほどに人々は熱狂していました。またネットを通じて世界148カ国に配信された動画はユネスコの認定を受けたため、一生残ることとなったのです。82歳の男性は番組放送中の5日間ほとんど寝ずに番組を見ていたそうです。人口550万人の国で320万人が見ていたのです。撮影をしている船の乗客まで番組を見ていました。

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連続ヒット作

その後、放送されたスローテレビでもノルウェー国民を魅了し続けました。これまで放送されたのは、鳥を観察する14時間番組やサーモン釣りの18時間の番組、12時間のテレマルク運河の船旅、薪割りの映像からはじまって暖炉の映像が8時間続く番組では国民の20%が視聴しました。さらに編み物をテーマにした番組では、羊からセーターができるまでを8時間生中継しました。

スローテレビが注目されるワケ

これほどスローテレビに人々が魅了されたのは、他の番組とまったく異なるからです。スローテレビはリアルタイム進行で視聴者は自分がそこにいるような気分になります。こうした感覚は時間を編集していないからこそ起こるのです。そして、扱う題材は身近なもの、文化に根ざしたものであることが大事です。昨夏の7週間の船旅は緻密な計画を立てましたが、どんなことが起こるかは決めたりせず、スポーツ中継のような感覚で撮影をしました。そしてストーリーは見る人につくってもらうというのがスローテレビの最大の特徴です。

ヘルムさんは「人々が”それダメだろ”というネタこそアリだと思っています。ちょっと笑っちゃうくらいのネタ、人生ってちょっとヘンなくらいが一番楽しいでしょ」と語ります。


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posted by CYL at 08:38 | スーパープレゼンテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月04日

NHK「スーパープレゼンテーション」女性起業家ロビン・チェイスさん


NHK「スーパープレゼンテーション」
女性起業家ロビン・チェイスさん


2015年6月3日放送のNHK「スーパープレゼンテーション」のプレゼンターは、女性起業家ロビン・チェイスさんです。アメリカで最大のカーシェアリングの会社を立ち上げてアメリカの車社会を変えたということで有名な女性です。

1958年生まれのロビンさんは、大学卒業後、公衆衛生の仕事に就きながらビジネススクールで企業経営を学びます。3人の子の母親になってからもビジネスを通して世界を良くしたいという思いを持ち続けていました。2000年、ロビンさんが42歳のときにカーシェアリングの会社「Zipcar」を立ち上げるのです。

カーシェアリングとは、車を会員同士でシェアし利用時間に応じて料金を払うシステムです。いまでは、日本の都心部でみかけることが多くなりました。カーシェアリングで車の数を減らすことができれば排気ガスやCO2削減できると考えたのです。

そして「Zipcar」はインターネットを利用して気軽に使えるシステムを開発し、いまでは会員数90万人を超える北米最大のカーシェアリング会社に成長しています。車を買うのではなく共有するというライフスタイルと提供しています。また、カーシェアリングは共有型経済(sharing economy)の先駆けとなりました。共有型経済はモノを所有するのではなく共有し効率良く使うことです。

今回のプレゼンでロビンさんが語るのは、カーシェアリングビジネスのその先のビジネスについてです。お楽しみにどうぞ。





”ピアーズ会社”

カーシェリングは、1台で15台の車の削減につながり、さらに乗る度にお金がかかるので運転量の80%削減につながるのです。ロビンさんは「Zipcar」で成功をおさめ2010年に家族でパリに引っ越し、その翌年2011年にBuzzcarを立ち上げました。Buzzcarは、カーシェアリングの進化版というべきのスタイルで、登録者が自分の車を貸すというサービスです。車をシェアしたい人たちを企業の力で支える仕組みで、ある人はこの仕組みをpeer to peerと呼びます。人と人との関わりという意味です。

ネット上に参加型のプラットフォームを作り参加者たちと手を組んで共通の価値観を築き、補い合って強くなるというこのやり方を”ピアーズ会社(Peers Inc.)”とロビンさんは呼んでいます。

企業サイドは企業の得意なことを行います。たとえば、大規模なビジネス展開や多額で長期的な投資、専門知識や技術の提供、サービスに関する基準やルールなどの設定や管理、ブランドとしての約束など参加型プラットフォームの提供を行います。

一方で、参加者(ピアーズ)はその強みを生かします。たとえば、素晴らしい多様性、ローカライズやカスタマイズ、人と人のネットワークを作るといったことです。つまりピアーズ会社では、サービスや商品は参加者(ピアーズ)が提供し運営は会社が行うというものです。


”ピアーズ会社"の良い例

良い例が相乗り募集サイト「Carpooling.com」です。10年で登録ユーザー数が350万人で毎月100万人が相乗りしています。フランスの高速鉄道TGVに換算すると2500本分の人数に匹敵します。Carpooling.comは、余剰キャパシティーを活用しているだけです。「Fiverr」は5ドルで自分のスキルを売るサイトで75万件の”仕事・サービス”が掲載されています。

また、”ピアーズ会社”のやり方で複雑なサービスを提供することも可能なことを「Topcoder」が示しています。 40万人がプログラミング技術を提供しているのです。

「Etsy」は手作り品を売買するサイトです。開設から7年以上が経ちました。出品された手作り品の売り上げで2011年の総販売額は5億3000万ドルとなっています。ただし、ウェブサイトをつくれば楽して稼げるというわけではありません。

車を貸す人と車を借りる人を結ぶ「Buzzcar」

ロビンさんがフランスではじめた「Buzzcar」は車を貸す人と車を借りる人をつなぐものですので、当然両者のことを考えなければなりません。問題はたとえば自動車保険です。様々な保険会社と会議を重ねてやっと決まったのは1年半後でした。時間と労力だけではなく、弁護士がついたのでお金もかかりました。結果的には貸し手には責任が及ばず、車両に保険がつき、借り手には低い免責金額と24時間のロードサービスがつくこととなりました。

やっと運用が始まって登録者が増え利用者の希望が入ってきました。しかし、大半の人は登録したにもかかわらずリクエストが来たら無視をしたのです。このときロビンが気づいたことは、工業生産と”ピアーズ会社”の違いでした。工業生産には品質のばらつきがでないということが特徴です。Zipcarは安定したサービスですが、一方の”ピアーズ会社”というのはやり方が違ってかなり品質にばらつきが出ることに気がつきました。

元祖”ピアーズ会社”ともいえるオークションサイト「eBay」はばらつきへの対策として評価する機能をつけました。これによって買う側の人はトラブルを避けられるようになりました。

いろんな人、いろんな車、いろんな価格、いろんな地域、Buzzcarは開始から1年後には1000台の車と6000人のドライバーが登録しました。従来のビジネスモデルでは実現不可能でしょう。

これは良い例ですが、ある人が海へドライブするために車をレンタルしました。オーナーがよいビーチや美味しい店などを教えてくれたのです。こうして人間関係が構築されて、急な依頼にも応えてくれたりするのです。普通の会社ならイノベーションにかかわるひとはほんの一握りですが、”ピアーズ会社”の場合その数は比べものにならないくらい大きくなります。

ハチをイメージしたBuzzcar

たくさんのハチが集まって巣をつくるイメージからBuzzcarと名付けられました。世の中には急を要する大きな課題がたくさんありますが”ピアーズ会社”ならそれらを解決することができます。いま、ネットが個人に力を与えています。”ピアーズ会社”が次のステージへと導きます。企業の力で個人を超パワーアップさせるというわけです。コラボレーション、力を合わせれば課題は解決できるのです。


街全体をビッグデータ化

ポルトガルのポルトでロビンさんは新たな事業をはじめています。それは街を走る車やバスなどにインターネットをつけて街全体をビッグデータ化することです。未来のまちづくりに住民全ての力を借りようという壮大な試みです。

ロビンさんのように次々とベンチャー企業を立ち上げる人を連続起業家(serial entrepreneur)といいますが、そんなロビンさんは起業することはいつも不安との戦いだといいます。「もともと私には資金もないし、ビジネスがうまくいかず途方にくれることもよくありました。でも素晴らしいアイデアとそれを伝える努力があれば協力してくれる人は必ず現れます。」と語ります。



posted by CYL at 15:47 | スーパープレゼンテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年05月28日

NHK「スーパープレゼンテーション」恥辱の代償ーモニカ・ルインスキー


NHK「スーパープレゼンテーション」
恥辱の代償ーモニカ・ルインスキー



2015年5月28日のNHK「スーパープレゼンテーション」のプレゼンターは社会活動家のモニカ・ルインスキーさんです。クリントン元大統領との不適切な関係でスキャンダルになってから17年の沈黙を破っての登場となりました。一体何を語るのでしょうか。

大統領との不適切な関係

いまから17年前の1998年、第42代アメリカ大統領のビル・クリントン大統領と不適切な関係を持ったとして報道されたとき、ルインスキーさんは大学を卒業したばかりの22才でした。ホワイトハウスの研修生として働いていたルインスキーさんは、上司であるクリントン大統領と約1年半にわたり密会を続けていました。

事実が公になったことでそれを隠していたクリントン大統領は議会で弾劾裁判にかけられました。ルインスキーさんは就職もできずにメディアから隠すようにアメリカを離れました。

その後、英国の大学院で社会心理学を学び、自らの体験を社会に役立てる必要性に気がついたといいます。そして、長年の沈黙を破り人前に立つことを決心したのです。

恥辱の代償
(The price of shame)
モニカ・ルインスキー
(Monica Lewinsky)


22歳の過ち

つい数ヶ月前に10年ぶりに講演を行いました。20代向けの講演で全て30以下の若者1500人が集まっていました。30歳以下ということはスキャンダル当時の年齢は最年長で14歳、一番若い人は4歳になります。

彼らの中にはルインスキーさんをラップで知っているという人もいます。スキャンダルがラップの歌詞として40曲以上に使われていたからです。講演が終わったあと、27歳の若者が41歳のルインスキーさんを口説きました。ルインスキーさんは嬉しかったけれど断りました。すると彼は「もう一度22歳の気持ちに戻してあげる」と言ったのです。しかし、ルインスキーさんは22歳には決して戻りたくないと思っています。

ネットいじめ被害者第1号

ルインスキーさんは、22歳で恋に落ち、24歳でさんざんな目に遭いました。いまでも自分の過ちを思い出さない日はないといいます。

数年前までニュースを知る手段は3つだけでした。それは新聞・雑誌を読むこと、ラジオを聞くこと、テレビを見ることの3つです。1998年1月、スキャンダルがネットで流れました。情報源としてネットが従来のマスコミを超えた初のケースとなりました。

一夜にして一般人から全世界の晒し者になったのです。世界規模で信用と尊厳を失ったルインスキーさんは「ネット晒し」の被害者第1号です。人々は悪口をネットに書き込んだり、メールで送ったりしたのです。尻軽女、バカ女、浮気者、人々はルインスキーさんが生身の感情をもった人間だということを忘れていました。

17年前にはこの現象に名前はありませんでした。いまではネットいじめ(cyber bulling)と呼ばれています。

晒し行為が増加

1998年スキャンダルが明らかになり、偶然友人が録音していた1年前の電話の会話を収録した音声が、ネットやテレビで流れました。普段の何気ない会話から大統領への恋心と失恋について語るルインスキーさんの電話内容が公開されたのです。1998年当時では、他人のプライベートな発言や写真などを盗んで一般に公開することは珍しいことでした。

無断で脈略のない思いやりのない晒し行為は2010年に誕生したSNSにより悲しいことに増加しています。その範囲は過ちを犯した人だけでなく、過ちを犯していない人まで広がっています。現実にそれが最悪の事態へと繋がった事例まで存在しています。

バーチャルの世界にとどまらない

2010年9月、ルインスキーさんは母と電話で会話を交わしました。ラトーガス大学1年生のタイラー・クレメンティさんの事件について。彼は寮の自室で男性と関係を持っているところを盗撮され、その映像をネットで公開されてしまったのです。その後、彼は橋から飛び降りて自らの命を絶ってしまいました。18歳でした。

1998年当時の事を思い出すとずっと両親がルインスキーさんの側に付き添っていてくれたといいます。シャワーを浴びるときに扉を開けておくようにと母はルインスキーさんに言いました。娘が死んでしまうのではないかと両親は心配していたのです。

タイラー・クレメンティさんの事件を受けて、ルインスキーさんは自らの経験を違った視点から見直しました。するとネットいじめから見えてきたことがありました。

屈辱文化の誕生

1998年当時は、ネットが世の中をどう変えるのか誰にも知るよしはありませんでした。ネットは人々のつながりをもたらした一方でネットいじめが爆発的に増加しました。被害にあっているのは傷つきやすい若者たちです。タイラー・クレメンティさんのように自殺してしまう人もいます。決してバーチャルな世界の話でとどまらないのです。

イギリスのNPO法人にはネットいじめに関する相談が87%も増加しているといいます。ある研究では屈辱というのは喜びや怒りよりも強烈な感情だとしています。昔はせいぜい恥をかいても学校や町といった規模の話でした。

恥辱に値札がついている

いまではハリウッド女優のプライベート写真が盗まれ流出し、写真を掲載したゴシップサイトが500万アクセスを記録し、映画配給会社のハッキング事件では、流出データのうちで注目を集めたのは恥ずかしい内容のメールでした。

いまや恥辱に値札がついていて、他人のプライバシーをまるで資源のように採掘し、売って利益を得ている人がいます。恥は商品として扱われ産業化してしまっています。激しい恥辱はクリックされ広告収入アップに繋がります。人々はそんな恥辱のゴシップを見れば見るほど同情心が薄れさらに閲覧を続けてしまいます。さらに悪いのは流行はやがて容認に繋がっていくということです。

恥は共感に勝てない

ネットいじめやハッキングなどの増加を食い止めるには意識を変えることが必要です。いまでは人種差別、ゲイ差別などへの人々の意識が変わってます。同性婚が認められるようにもなりました。またエコ意識にも変化が起きています。

同じように意識を変えてネットに思いやりと共感を取り戻すことが大切です。研究者のB・ブラウンは「恥は共感には勝てない」と言っています。ひとりの共感でも効果があることはルインスキーさん自身がよくわかっています。

社会心理学者S・モスコヴィッシによると少数派でも一貫して主張し続けることで変化を起こせるといいます。いじめをみたら報告、そしていじめ防止団体を支援しましょう。表現の自由とその責任を自覚し、本性が出やすいネットでは共感を示すことが重要です。



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2015年05月21日

NHK「スーパープレゼンテーション」音楽特集part 2 マーク・ロンソン


NHK「スーパープレゼンテーション」音楽特集part 2


アメリカのプレゼンイベント「TED」は、最先端のアイデアの世界へとあなたを誘います。TEDは、さまざま分野で活躍する人々がプレゼンを行うイベントです。プレゼンのテーマは、技術(T)、エンターテイメント(E)、デザイン(D)頭文字をとってTED(テッド)と名付けられています。


マーク・ロンソン

音楽プロデューサーでDJのマーク・ロンソンさん(39)は、イギリス生まれで8歳からNYで育ちました。16歳でDJデビューを果たしいまやアメリカを代表するトップDJとなっています。

また、エイミー・ワインハウスのリハブをプロデュースするなど音楽プロデューサーとしても才能を発揮しています。どこか懐かしい音楽にミュージシャンの個性を取り込むのが彼のスタイルです。

サンプリング

そんな彼が今回取り上げるのは「サンプリング」という手法についてです。サンプリングとは、過去の曲や音源を取り込んで新しい楽曲を制作する技法です。

彼のプレゼンにもサンプリングが使われていてとても斬新なプレゼンとなっています。




講演を依頼されて

ロンソンさんは、TEDから講演を依頼されて過去の講演を多く視聴しました。講演の中で琴線に触れたフレーズがあるとメモ紙に書き出していきました。そんな中で彼はいい講演に出会うとその講演者と親友になりたいと感じたといいます。

子供バンド

デュラン・デュランが大好きだったロンソンさんは友人と子供バンドを組んで講堂に上がりました。しかし待ち受けていたのはブーングでした。気分は良くなかったといいますが、デュランデュランが大好きだったので曲を演奏することでどうしても関わりたかったのです。(スターと親友にはなれませんからね。)

サンプリングの歴史

30年前にデジタルサンプラーが登場し、あらゆる音源からサンプリングが可能になりました。好きな曲やスネア音、ベースラインと何でも使えます。

1984年に発表されたスリック・リックとダグ・E・フレッシュによる作品「La Di Da Di」はサンプリングされた回数は史上第5位の曲です。1997年には、ノートリアス・BIGのヒット曲「Hypnotize」で「La Di Da Di」がサンプリングされました。かれは「La Di Da Di」が発表された当時は13歳でした。思い出の曲だったのでしょう。彼流に解釈し模倣とは異なる曲に見事に仕上げました。そして、ポップスターのマイリー・サイラスが「La Di Da Di」を自分の世代に向けて大胆に再解釈しました。原曲が発売されたときは、マイリーは生まれていませんでしたが、新しい世代へと伝わっていくのです。

サンプリングには、懐かしさだけではなく、新鮮味がないといけないと気がついたのは、ロンソンさんが故エイミー・ワインハウスと仕事をした時でした。レトロなサウンドが話題になりましたが、エイミーの現代的な感覚と赤裸々な歌詞がなければただの模倣で終わっていたかもしれないと感じたのです。

ロッキスト

サンプリングを音楽として認めるか否かという議論は昔から存在します。グラミー賞では、二次使用素材を含む曲は受賞対象とはみなされていません。偏狭なロックミュージシャンを「ロッキスト」と呼びます。彼らはサンプリングは邪道だとラップやポップとけなします。しかし、いまは自分で好きなものをアレンジする時代です。価値ある新鮮な要素を足すことができれば好きな音楽の一部になれるかもしれないのです。

サンプリングは決して手抜きではなく、また知名度を利用して稼ごうとするためのものでもありせん。好きな曲と一体化するために思い入れのある曲をサンプリングするのです。

ロンソンさんが、プレゼンの最後に披露したのは、盲目で自閉症の天才ピアニストのデレク・パウヴィチー二と南スーダンの元少年兵で詩人でラッパーのエマニュエル・ジャルの講演のサンプリングでした。好きだから関わりたいとロンソンさんは語ります。

著作権の問題

アメリカでは最近著作権が厳しくなり容易にサンプリンができなくなっています。一方日本ではゆるい著作権によってCGキャラクター「初音ミク」がネットで人気を博しています。多くのアーティストが初音ミクというキャラクターを使って映像などを製作しているのです。著作権が厳しければ、これほどまでの人気にはならなかったかもしれません。

技術の世界に似ている

ものづくりのメーカーなどの新商品開発では、まったくのゼロから新しいものが生まれることはほぼないと言われています。大抵は既存の技術の組み合わせであったり、他の分野への技術の応用だったりすることがほとんどです。

また、技術の分野で著作権にあたるのが特許ですが、トヨタ自動車が燃料電池車に関連する特許を自由に使用することを認めました。それは初音ミクと同じように多くの人につかってもらうことで燃料電池車の市場を広げたほうがよいという発想と同じものです。


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posted by CYL at 17:10 | スーパープレゼンテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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