2015年07月15日

オイコノミア|お酒選びの経済学

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オイコノミア|お酒選びの経済学



イメージに惑わされずにおいしいお酒を選ぶための方法を、経済学から学びましょう。

講義をしてくれるのは日本酒が大好きだという日本大学教授の浅田義久さんです。ゲストはお酒が大好きで、お酒が生活の軸になっているというタレントの真鍋かをりさんです。そして最近ハイボールが好きになったというお笑い芸人の又吉直樹さんの3人で進めていきます。

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情報の非対称性
情報の非対称性とは、取引を行う際、ものを売る側と買う側の間で商品に関する知識や情報に格差があることをいいます。なかでもお酒は種類が多く飲んでみないとわからないために、買う側である私たちの多くは、見た目やイメージで選んでしまうのです。そこでよいお酒選びには、情報の非対称性をなくすことが必要となります。


情報の非対称性をなくすには@
消費者自らが学ぶ方法”ビールの価格”

情報の非対称性をなくすために考えられる方法は大きく分けて2つあります。ひとつは、消費者が学びより多くの情報を自ら得る方法です。そしてもう一つは生産者が消費者に正確な情報開示を行うことで多くの情報を消費者に提供することです。まずはビールなどのお酒の価格を構成するひとつである酒税について学びます。

西荻窪|ブルーパブ
ブルーパブとは、店内で醸造した自家製ビールを提供する店のことをいいます。近年の規制緩和により、ブルーパブのような小さなビールの醸造所が多く誕生しています。

ビールの価格|麦芽の量
店内で提供されるビールの値段は、主に原料に含まれる麦芽の量によって決まっています。ビールは麦芽の量によって酒税という税金がかかります。ビールの価格は、原料費に酒税などを加えて決められていますので、麦芽が多いと高め、少ないとお手頃になります。つまり、味がおいしいから値段が高いというワケではないのです。

酒税|お酒の種類
日本酒の場合、安いカップ酒も高い大吟醸もかかる税金は同じ140円です。安い日本酒を買う人は割高な酒税を払い、高い日本酒を買う人は割安な酒税を払うという逆進的な酒税になっています。昔からある焼酎などは、比較的酒税が安く、いまでは一般的なビールですが、最初は高級品とされていたために酒税の割合が高いのです。

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日本と主要国のビールの酒税を比べるとその差は歴然としています。ビール633mlの場合、日本の酒税は139円となります。それに比べてフランスでは9円、ドイツ9円、アメリカ10円、イギリス72円となっています。

価格弾力性
お酒というのは、少し価格を高くしても消費者は買います。その現象を価格弾力性が小さいと経済学では呼びます。価格弾力性の小さなものに課税することは、経済学的に正しいとされています。
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情報の非対称性をなくすには@
消費者自らが学ぶ方法”ワインの価格”

数あるお酒の中で近年売り上げを伸ばしているのがワインです。フランスやイタリア産に加え、南米やアメリカ産の手頃な価格のワインが登場したことで人気となり、一人当たりの消費量が日本酒を超えました。人気が高まる一方で、ぶどうの品種や産地、飲み方など情報が複雑で、ワインを選ぶのは難しいと言われます。

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ソムリエ|田崎真也さん
ワインは食べものをおいしくするための食事のソースのようなものだと田崎さんは語ります。そのため、例え1500円のワインだとしても、ワインに合ったグラス、温度管理、さらにワインにあう料理を提供することができれば、その価値を上げることができるといいます。そして、ワインの値段がわかるようになるには、”比較をする”しかないと田崎さんは語ります。

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情報の非対称性をなくすにはA
正確な情報開示


情報の非対称性による逆選択
消費者がワインのことを知らずに選ぶと問題が起きることがあるそうです。たとえば、プレミアムワインと普通のワインがあるとします。消費者はその違いが分からなければ、より価格の安い普通のワインを買うことになります。その結果、プレミアムワインは市場から淘汰されてしまうことになってしまい、市場には安い普通のワインしか残らなくなります。この現象を経済学では「情報の非対称性による逆選択」といいます。

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正確な情報開示|老舗ワイナリー
日本を代表するワインの産地、山梨県甲府市勝沼にあるワイナリー「まるき葡萄酒」では、積極的に情報開示に取り組んでいます。まるき葡萄酒は、明治時代に設立された日本で最古のワイナリーです。

自社農園で取れた国産ブドウにこだわってワイン造りをしてきました。そのワケは、国産ワインと呼ばれるもののおよそ8割には、海外産のぶどう果汁が使われているからです。

2014年にワイナリーのオーナーとなった清川浩志さんは、明確な表示ルールのない日本のワインの現状に危機感を抱きました。そこで取り組んだのが正確な情報開示でした。

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正確な情報開示によって、安心して選んでもらえるようになっていると清川さんは感じています。また、それぞれのニーズにあった商品選びをしてもらっていると考えています。さらに品質においても、いままでよりも”よりよいもの”をつくろうという想いが増したといいます。



posted by CYL at 17:09 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月07日

オイコノミア|飲み屋選びの経済学

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オイコノミア|それってお徳?
飲み屋選びの経済学


お得な飲み方といえば飲み放題ですが、本当にお徳なのでしょうか?

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支払い意志額
支払い意志額とは、最大いくらまで支払ってもいいと考える金額のことです。下図はビール1杯ごとの支払い意志額を表しています。お腹が膨れるごとに支払い意志額は減っていき、6杯目で0円になると仮定しています。

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1杯目のビールはおいしいため、実際に価格が300円でも500円支払いたいと考えます。その差額200円が得をしたという”お得感”ということになります。ビールを飲む人の支払い意志額が実際の価格を下回ったときに飲むことを止めるのが経済学では合理的だと言われています。つまり、この人の場合は、4杯目から支払い意志額200円が、実際の販売価格300円を下回りますので、3杯で止めるのが合理的です。

飲み放題でも同様に、支払い意志額がプラスまでしか飲まないのが合理的です。元が取れるところまで飲むと失敗してしまいます。そのため、飲み放題は半分以上の人が損をしているのです。逆に考えるとそうでなければ商売として飲み放題は成り立たないのです。

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1杯の費用|固定費+可変費用
飲み物1杯の費用は大きく分けて2つからなっています。固定費用と可変費用です。固定費用は、地代や設備費など売り上げにかかわらずかかる費用です。一方、可変費用は食材やお酒、人件費(アルバイト)など客ごとに変動する費用です。居酒屋チェーンのような大量販売のお店は、固定費用にお金をかける傾向があり、味で勝負するお店は可変費用にお金をかける傾向があります。そこには立地の条件が大きくかかわっています。

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大量販売のお店は、固定費を沢山かけて大量に販売することを目指すので、店の立地は人が多く集まる駅前を選びます。味で勝負する店は、可変費用にお金をかけるため、固定費用にはお金を多く使えません。そのため、駅から遠い場所や郊外にお店を構えることが多くなります。ゆえにお店の種類の立地傾向から、安ければよいという人は、手っ取り早く駅前のお店を選び、味にこだわっておいしく飲むなら労を惜しまず探すことが重要になってきます。

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差別価格
渋谷にある居酒屋の「相席屋」は、見ず知らずの男女が相席となり、お酒と会話を気軽に楽しむお店です。週末には300人以上が訪れるといいます。このお店の特徴は、なんと言っても料金体系です。女性は、とにかくタダ。飲み放題・時間無制限で食事とドリンクを自由に楽しむことができます。男性の場合、相席の場合30分1500円で飲み放題食べ放題、ただし相席になるのを待っている間は、1杯500円かかるという仕組みです。若者の居酒屋離れが進んでいると言われていますが、2014のオープン以来、全国に25店舗を展開する盛況ぶりです。

人気の「相席屋」では、女性はタダで男性は30分1500円という経済学でいう”差別価格”を採用しています。差別価格とは、同じ商品でも高く買う人には高く売り、安くなければ買わない人には安く売ることです。ほかに差別価格を昔から使っているのが、映画料金です。見る映画は同じでも大人、学生、子どもで異なる料金となっています。

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ヴェブレン効果
例えば、あなたの前に3本のワインが並んでいるとします。それぞれのワインボトルには1000円、3000円、5000円の価格札がついています。それぞれを試飲してみると5000円のワインが一番美味しく感じる傾向があります。これは、価格が高いほど、商品への期待が高まるという心理効果で”ヴェブレン効果”といいます。番組内では、同じワインに違う価格をつけて実験しましたが、ゲストとしてやってきたお酒好きのお笑い芸人千鳥の大吾さんは見事にすべて同じワインだと見抜きました。



posted by CYL at 17:26 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月03日

オイコノミア|”障害”を見つめ直そう

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オイコノミア|”障害”を見つめ直そう


経済学の視点から「障害」を見つめ直す
お笑い芸人の又吉さんは、東京大学の松井教授に連れられてある施設にやってきました。金町学園は、聴覚障害のある子どもたちが親元を離れて暮らす社会福祉施設です。松井先生によると金町学園に、障害について経済学から考えるヒントがあるというのですが、それは一体なんでしょうか。

障害は社会がつくりだす
金町学園で夕食を一緒にとった又吉さんは手話が分からないため、身振り手振りを交えて話しますが、なかなか会話が盛り上がりません。そして逆にまわりに人達が盛り上がる話題についていくことができませんでした。この場面では手話ができる人は多数派で、手話ができない又吉さんは少数派ということになります。ある意味で金町学園では又吉さんが”障害者”であったのです。障害は個人が持っていると考えかがちですが、多数派、少数派という社会が作り出しているものとも言えます。

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ゲスト|デザイナー今中博之さん
ゲストの今中さんは、デザイン会社などでショールームなどのデザインを手がけてきました。現在は、知的障害者のために社会福祉施設を運営しています。今中さんには、生まれつき軟骨の形成不全の障害「偽性アコンドロプラージア」という障害があります。その発症は100万人に1人という圧倒的な少数派です。

経済学の効率性
多数派だけを考えて社会をデザインすると効率性が悪くなるのではないか心配する又吉さんですが、松井先生は、経済学の効率性は誤解をされやすいと解説をしてくれました。

たとえば、障害者と健常者が、3個のアイスクリームを取りに行く状況を考えてみます。ただし、アイスクリームは遠く離れた場所にあり、障害者がたどり着くころにはアイスは溶けて半分になっていると仮定します。

Aの状況
健常者が3個のアイスと取り、障害者は一つも取ることができません。

Bの状況
健常者が1個のアイスを取りしますが、障害者がたどり着くころには2個のアイスクリームは半分になってしまい実質1個分のアイスを手にします。

AとB、二つの状況ではどちらが効率的ということができるでしょうか?

経済学的には、どちらの状況も効率的だということになります。それにはパレート効率が関係しています。パレート効率とは、経済学の資源配分の概念で、誰かの満足度を下げることなしに他の誰かの満足度をそれ以上上げられない状況のことを経済学では”効率的”といいます。

あらためてAの状況とBの状況を見てみます。Aの場合は、障害者の満足度を上げるために、健常者のアイスを1個減らした場合、健常者の満足度を下げざるを得ません。よっていまの分け方が効率的ということになります。一方のBの場合、健常者の満足度を上げようとすると、障害者の満足度を下げざるとえません。結局いまの分け方が効率的となるのです。つまり、Aの場合もBの場合も両方とも効率的ということになるのです。比較して優劣をつけることはできないのです。

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経済学の大前提|自立性
経済学では、自由に行動を選択できる自立した個人を前提に様々な理論を組み立てています。しかし、障害というテーマを扱うとき、経済学ではこの大前提をも問い直します。

又吉さんは、松井先生の紹介で障害と自立について問い続ける研究者の熊谷晋一郎さんを訪ねました。熊谷さんは出生時のトラブルにより脳性麻痺になりました。当事者として研究に取り組む”当事者研究”に取り組んでいます。その中で、自立という言葉の中に新たな意味を見いだしました。

自立の反対語について問うと多くの人は”依存”と考えます。しかし、本当にそうだだろうかと熊谷さんは考えました。東日本大震災に際に、障害者も健常者も逃げるという目的は一緒でも”依存できるものの数”に違いがあったことに気がつかされたと熊谷さんは語ります。健常者には、避難方法として、エレベータや非常階段、はしごなどがありますが、車いすの障害者の場合は、エレベータしかないといった具合です。つまり障害者の自立のためには、依存できるものを社会に増やしていくことが自立への方向だと熊谷さんはいいます。

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社会福祉施設|アトリエインカーブ
丹念に白いペンで描かれた絵が黒いキャンバスを埋め尽くしています。作者は知的障害のあるアーティストの寺尾勝広さんです。寺尾さんのモチーフは一貫して”鉄”です。自らの作品を”鉄骨の図面”と呼びます。海外からも高い評価を受けている寺尾さんの作品ですが、そのきっかけをつくったのがゲストの今中さんでした。

今中さんが2002年に立ち上げたアトリエインカーブは、知的障害がある人たちが、絵画や立体作品などを制作する社会福祉施設です。現在26名のアーティストが在籍し、今中さんは障害者のアートという枠組みを超えて作品そのものの価値が評価される市場に送り出してきました。

アトリエインカーブでは、経費を除いた収益をアーティストに還元します。一方で絵画を元にしたグッズを販売することで得る収益を均等に分配し、生活の基盤をつくるという福祉的な働きも果たしています。


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posted by CYL at 18:18 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月23日

オイコノミア|お金がない人の経済学


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オイコノミア|お金がない人の経済学



今回のテーマは「お金がない」です。

ゲストはダンディーな俳優の風間トオルさんです。少年のころはお金がなかったそうで、家にお風呂がなかったために、銭湯に通っていましたが、毎日ではなく週に1回だったといいます。風間さんは、小学5年生のころ両親が離婚し、父方の祖父母に育てられました。お腹が空いたときには公園で草を食べたこともあるといいます。

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相対的貧困率

所得の低い人から順番に並べてちょうど真ん中に来る人の所得の半分を貧困線と呼びます。貧困線に満たない人の割合が人口に対してどのくらいを占めるのかを相対的貧困率と呼びます。日本の相対的貧困率は上昇中で、2012年には16.1%(6人に1人)が貧困という結果になりました。ちなみに2012年の貧困線は、年収122万円です。つまり、1ヶ月の生活費が10万円以下の人が約2000万人がいることを示しています。10万円では生活費を捻出したらほとんど残らない状況です。

貧困率上昇の主な原因は、不況の長期化、高齢化、技術革新・グローバル化、離婚率の上昇などが考えられます。一人親世帯では55%が貧困にあると言われています。

貧困のきっかけは、さまざまですが、たとえば離婚、病気、失業、親の介護など身の回り起こる可能性のある小さなきっかけにより貧困になってしまうケースがあります。貧困は決して他人事ではないのです。

また、相対的貧困という概念に対して、絶対的貧困という概念もあります。世界銀行(アメリカに本部を置き途上国などに資金や技術援助などを行う金融機関)の定義によると、1日の所得が1ドル25セント(日本円で約150円)以下が貧困ラインとなっています。

貧困はお金が不足している状態です。どうしてそういう状態が起こるのか、どうやったらそこから抜け出せるのかを経済学から読み解いていきます。

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貧困に陥ると

お金が究極的に欠乏した状態が貧困ですから、欠乏はあるものが足りないときにそれに集中させる力を持っています。お金が欠乏しているときというのは、お金について考える集中力が高まっています。そうすると貧困で困っているひとは、消費税の計算や買い物に関する計算が速いという研究結果があります。目先の欠乏の対処に集中できるというメリットはありますが、集中し過ぎるともっと重要かもしれないことに気がつかず、意識の外に追い出して放置してしまうということもあります。経済学でいいうところのトンネリングが起きてしまいます。

トンネリングとは、トンネルの中にいると外が見えないように、何かに集中していると他のことに意識がいかなくなってしまうことをいいます。目先の欠乏に対処することだけに集中し、その他のことをほったらかしにしてしまうのです。

そんなトンネリングの状態を繰り返しているとジャグリングという状況に陥ってしまいます。もともとの意味は、大道芸などで披露されるジャグリングですが、それが転じた考え方として経済学で最近注目されています。

ジャグリングとは、目先のことに追われその場しのぎの対処を続けることをいいます。ひとつのことを解決しても次から次へと課題を解決しなくてはならない状態をいい、まさに大道芸のお手玉と一緒です。貧困になると一日、一日を暮らしていく集中力は高くなりますが、先を見通す余裕はなくなります。そのためちょっとしたきっかけでジャグリング状態へ陥ってしまいます。

アメリカの貧困層の18%が料金を支払うことができずに電話回線を切られてしまったというデータがあります。そこにトンネリングとジャグリングが起きています。電話回線の料金は、期日までに支払うと通話料金のみの請求で済みますが、料金を支払うことができずに一度回線が切断される(トンネリング)と、通話料金に加えて手数料と延滞金を支払わなければならないのです(ジャグリング)。結局、普通に支払ったときに比べ、支出が増えてしまう結果となります。

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経済学で見る|貧困から抜け出すには


その1:教育

経済学では貧困の連鎖から抜け出すために”教育”が非常に大切だと考えられています。教育を受けることで将来、より賃金の高い仕事の就くチャンスが高くなるからです。しかし、世帯年収と子どもの学力を調査した結果、小中学生では親の年収が学力に影響していることがわかりました。その理由のひとつは、貧困家庭の子どもたちは塾などの学習の機会が少ないこと、さらに問題なのが自己肯定感(学習意欲)を持ちにくい傾向があることだと考えられています。

教師を育成するNPO法人
子どもたちに自己肯定感を持たせる講師を育成することを目指しているNPO法人を又吉さんが訪ねました。教育系NPO法人代表理事の松田悠介さんによると、格差は0歳から開いていきますが、その差は僅かなものの積み重ねだといいます。たとえば、九九がわかったかどうか、中学校1年生のときに英語を学ぶ喜びを感じさせる授業だったのか、自分の個性を見つけてくれる先生がいたのかなどのちょっとした差によって、最終的に高校や大学に進学することができたのか否かという大きな差に繋がっていくといいます。

いまの状態がどうであっても子ども達に無限の可能性があるということを教師がいかに信じられるか、応援できるのかが大切で、チャレンジしようと思った子どもに対してサポートしてあげるような教師が増えることで、現在ある社会課題がどんどん解決されていくと松田さんは考えています。

企業制度|奨学金の返済を肩代わり
経済的に苦しくても高等教育を受けるチャンスがもらえる奨学金の貸与金額は年々増加傾向にあります。ところがその奨学金を返済することができない人が増え、問題となっています。つまり、仕事の就いても返済できる賃金が得られないのです。

社員の奨学金の返済を肩代わりする制度をもつ眼鏡販売会社を又吉産が訪ねました。眼鏡製造販売会社社長の田中修治さんは、「奨学金を受けて大学に通い色々な経験を身につければ、社会に出てから”評価”として買い取ってもらえる受け皿があれば、金銭的に苦しいけれど、大学まで通ってしっかり勉強しようとする人が増えるのではないか」と語ります。奨学金の返済を肩代わりする制度をつくることで、次の世代の人たちに”道”をつくることができると考え、田中さんは制度をはじめたといいます。


経済学で見る|貧困から抜け出すには
その2:国や自治体の「援助」

国や自治体の「援助」で貧困から抜け出すことができ、長い目でみると財政的なメリットもあるという試算があります。たとえば、18歳で生活保護受給者となると65歳までに国は5000万円から6000万円を負担することとなります。

一方、国が2年間の職業訓練として460万円を負担し、非正規や正規社員として就労できるようになれば、税金や社会保険料など国に納めることになります。生活保護受給者となった場合と比べると、その差額は7000万円から1億円となります。

このようなことを背景に、各自治体では、生活保護受給者になる前に何らかの対策を立てることで、親子間の貧困の連鎖を断ち切ると同時に、増加する社会保障費を減らす取り組みがなされています。

経済学で見る|貧困から抜け出すには
その3:自立

自治体(川崎市)では面接用のスーツを貸し出したり、仕事が見つからない人との個別面談を行ったりしています。たとえば、失業のきっかけが親の介護だった場合、履歴書上は何年か空白期間ができてしまい、就職活動には不利だと言われています。実際に親の介護をした経験を生かすため、介護の資格を取ることを助言し実際に仕事に就いたというケースがあります。

経済学で見る|貧困から抜け出すには
その4:貯金

貧困から抜け出すためには貯金が必要なのです。突発的な自然災害や病気によって生活そのものが破綻してしまう危険を回避するために貯金が必要となります。貧困だから貯金ができないという正論がありますが、少しずつ貯金をしておくと貧困を抜け出すきっかけをつくってくれるという例があり、インド出身の経済学者が説明しています。

ケニアのある地方では、教会が管理する畑は豊作なのに対し、一方で農民の畑は不作でした。その理由を調べてみると教会では肥料を使っていて、農民の畑では使っていないことがわかりました。肥料を使ったときの収益率は7割、つまり肥料購入に1万円をかければ、1万7千円分の作物が収穫できるのです。実際に農家の人々も、肥料を使えば作物がたくさんできることは知っていました。しかし、彼らは収穫後にお金が入ると使い果たしてしまい、肥料代に当てるお金がなかったのです。

そこで研究者たちはどうしたら農民に肥料を買ってもらえるかを考えました。農家のひとの問題は、収穫後のお金があるときについつい別のものを購入してしまい、必要なときに肥料が買えなくなっていることでしたので、肥料と交換できる予約券を収穫直後に販売しました。これで畑を耕す時期に手元にお金がなくても肥料を手に入れられるようになり、収穫高が上がったのです。

ここには人間のある特性が潜んでいると経済学では考えます。突然ですが、夏休みの宿題は、夏休み前はいつやろうと思っていましたか?

双曲割引

それは、将来手にするものの価値を大きく割り引いてしまうという特性です。経済学では双曲割引といいます。双曲割引とは、今手に入るものの価値に比べて将来手に入るものの価値をかなり小さく考えてしまう人間の特性です。先ほどの農家がお金が手に入るとついつい必要のないものを買ってしまったのも双曲割引が関係しています。

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双曲割引の典型は、夏休みの宿題を毎日均等または最初にやろうと考えますが、夏休みがはじまると毎日宿題を先延ばししていって、最終的には夏休みの最後に宿題をするパターンに陥る人です。

そこで、自分自身の選択の癖を知ることが大切で、選択を誤らないようにすることが大切になってきます。先延ばしをする癖があるひとは、それをしないような設定を自分に設けておくことが大切です。



posted by CYL at 12:51 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月16日

NHK「オイコノミア」|時間がない人のための経済学

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NHK「オイコノミア」|
時間がない人のための経済学



今回のテーマは「忙しい」


日本人の多くが時間がないと感じています。そんな毎日を忙しく過ごしている日本人が抱える”忙しさ”について経済学から考えてみましょう。突然ですが、1週間の労働時間が最長40時間の場合、漁獲高がいちばん多いのはどのタイプでしょうか?

1、毎日8時間タイプ
2、目標漁獲高タイプ
3、大漁時集中タイプ

実際に漁師さんでは3番の大量時集中タイプが一番多く、ついで8時間タイプと続きます。時間に制限があるために魚がいないときに漁に出ることを避ける方がよいためです。

現在、又吉(お笑い芸人)さんはいま仕事がたくさんのあるで一生懸命働いている大漁時集中タイプの働き方をしています。又吉さんに限らず若手の芸能人や歌手は売れっ子になると寝る間もないくらい働き続けます。それは、賃金が一時的に高くなったときほど人はより多く働くという傾向があることを示しています。経済学では「異時点間代替」と呼ばれています。

「異時点間代替」とは、今行うか将来行うか行動する時期を変えることをいいます。たとえば今の収入が将来予想される収入よりも高いと考えた場合、いまは一生懸命働き将来は余暇を楽しもうと考えるようなことです。

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ゲストは売れっ子作家角田光代さん
作家の角田光代さんは、1990年小説「幸福な遊戯」でデビューし「対岸の彼女」で直木賞受賞しました。小説やエッセーなど著作多数のいまもっとも多忙な作家のひとりです。



時間がないことのメリットとデメリット


メリット|集中力が高まる

角田さんは現在月に10本のエッセイの仕事を抱えています。そんな角田さんは、忙しいからこそひらめくことがあるといいます。昔は1年に1作くらいしか小説を執筆していなかった角田さんは、執筆の時間も好きな時間に書いていたといいます。ある時から平日の9時〜5時までに区切って仕事をするようにしたところすごく書けるようになったといいます。忙しければ忙しいほど書きやすくなったという時期があったと語ります。

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作家にとってゆっくり書く時期とばんばん書いていく時期のふたつの時期があると考えていた角田さんは、ある時期に仕事をたくさん受けて締め切りだらけにしたそうです。すると短編ひとつ書くのが以前に比べてぐっと楽になったといいます。

又吉さんも、毎日2〜3つのお笑いライブに出ていたときは毎月新ネタを10本くらい書いていたが、いまでは新ネタを月に10本書くのは容易ではないといいます。


あるマーケティングの実験
片方のグループには期限付きのクーポン券、一方のグループには期限がないクーポン券を渡しどちらの利用者が多かったか調べてみました。すると期限がない方が利用者にとっては利用しやすいはずなのに、期限付きクーポン券の方が利用者が多かったのです。

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デメリット|トンネリング

作家の角田光代さんは、月の締め切りが28コを超えると日常生活に支障がでると語ります。それは経済学でいうところの「トンネリング」が関係していると思われます。トンネリングとは、トンネルの中にいると外が見えないように何かに集中していると他のことに意識がいかなくなってしまうことです。目先の欠乏に対処することだけに集中しその他のことをほったらかしにしてしまうのです。

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トンネリングが起こっていると人は物事の選択の仕方が普段とは違ってきます。角田さんの作家のお仕事を例にとってみると買い物、締め切り、友人との約束という3つの物事の選択があったとします。角田さんにトンネリングが起こっていなければどの用事から済ませるか合理的に判断し行動します。しかし、トンネリングが起こっていると頭の中には「締め切り」しかないという状態になってしまい、友人との約束がすっぽりと抜け落ちてしまったりするのです。

航空管制官と子育てに関する研究
飛行機を安全に運行させるための指示を行う航空管制官は、長時間にわたって認知力に負荷をかけるという状態になっています。管制官が忙しいときとそうではないときで自宅に帰ってからの子どもに接する態度を調べた研究があります。その結果は、仕事が忙しかったときは子どもを意味なく叱ったりするというこうとがわかったのです。普段はきっちとしている管制官でも仕事が忙しかったときはよくない躾をしたということです。

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忙しさ対策|スラッグ

たとえば旅行へ出かける際にあなたはどちらのカバンを選びますか?荷物が隙間なくおさまるとカバンか、それとも荷物に対して余裕がある大きめのカバン、どちらでしょうか。当たり前かもしれませんが、忙しさにはカバンの隙間のような余裕が必要です。実際に旅行でありがちなのが、隙間のないカバンで出かけ、帰りのお土産が入らなかったりします。経済学ではカバンの隙間のような余裕をスラックと呼びます。スラックとは、突発的に起こった出来事に対処するためのゆとりをもつことで、元来は「ゆるみ」「たるみ」を意味する英語です。

人は将来の計画に対して楽観的な傾向があります。締め切りがある仕事などでは、最初からスラックとして時間に余裕を設定しておけばスケジュールがくるわないのですが、スラックが少ないとひとつのスケジュールがずれたときに連動して他のスケジュールもずれてしまうことになります。

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経済学の窓|
強制的にスラッグをつくる企業の取り組み

日本人の睡眠時間の変化をみてみると年々、睡眠時間は減少していることがわかっています。一説には睡眠不足による経済損失は年間3.5兆円にのぼるともいわれています。そんな中、政府は国家公務員の長時間労働抑制を目指す取り組みをはじめることを発表しました。その取り組みのひとつが、いまでは多くの民間企業で取り入れている「早朝出勤」です。社内に人が少なく効率の上がる早朝に出勤し、夕方からの時間は家族や自分のために利用するというワークスタイルです。

又吉さんが訪れたある会社では、早朝出勤などの制度をつくり、忙しくならないように効率良く働く仕組みづくりに取り組んでいます。例えば、早朝出勤を促すために200名限定でモーニングおむすびを無料で配布しています。また、以前までは21時以降の仕事をする際に求めていた残業申請を18時以降と変更し、残業をしにくい環境にしています。

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さらに残業をなくすために、夕方から社内ミニコンサートやピラティスの教室、社内無料バーなどの仕組みをつくっています。このように強制的にスラックをつくることでミスが減って効率が上がるということを経験的に理解して、多くの企業が制度として整えはじめているのです。


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経済学とはどんな学問?

経済学は人々がどうしたら幸福になるのか、豊かになるかを考える学問です。そのためにどういう制度や社会の仕組みをつくったら良いのかを考えるのが一番の目的です。

昔は、お金だけを目標に生きている人々を題材にして学問がつくられたのですが、お金以外の人間的な側面もしっかり見ようということで、だんだん経済学も発展してきました。前述のトンネリングはもともとは心理学で研究されていた分野ですが、人間の行動のひとつとして経済学に取り入れて分析するように変わり、現在ではそれが「行動経済学」と呼ばれています。

行動経済学は、人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、心理学や脳科学の知見などを取り入れ実証的に研究する新しい経済学です。


2015年6月15日放送NHK「オイコノミア」


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