2015年10月26日

オイコノミア|話せばわかる交渉の経済学

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オイコノミア|話せばわかる交渉の経済学


交渉に苦手意識をもっているあなた。経済学で上手に希望を伝えられるようになりましょう!

身近な交渉として家賃交渉を考えてみましょう。いまA物件9万円、B物件8万円、ともに同じくらい魅力的な物件があり、あなたはA物件の大家さんと家賃交渉をするとします。

交渉術その1
他の選択肢を持つこと
他に選べる選択肢のことを経済学では「外部機会」といいます。目の前で取引しているのとは別に選ぶことのできる潜在的な選択肢のことです。交渉では魅力的な外部機会を持っていれば交渉で強くなれるのです。反対に相手の持っている外部機会を想定することも大切となります。

家賃交渉の場合、B物件が外部機会となります。B物件が魅力的なほどA物件の大家さんとの交渉を有利に進めることができるのです。たとえば、いま8万円でいい物件があってそちらと比較していることを匂わせるのです。

交渉術その2
交渉決着までの我慢強さ

できるだけ安く住みたいと思っている借り手と早く入居者を決めたい大家さん、どちらも交渉が長引けば長引くほど利益が損なわれます。そんな中で我慢強く交渉できるかどうかが大切となります。

交渉術その3
先に提案すること

できるだけ早く入居者を決めたい大家さんにはこちらからギリギリの線を先に提案することで優位に交渉を進めることができるのです。たとえば家賃7万5千円ならすぐに契約します!などとこちらから提案をするのです。

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番組に登場した経済学用語

比較優位
相手と比べて全ての面で能力が劣っていたとしても比較的得意な仕事を引き受ければ全体の成果を最大限に上げられるという考え方。

コースの定理
ノーベル経済学者ロナルド・H・コース(1910ー2013)が提唱
当事者がコストをかけずに交渉できるのであれば社会全体にとって望ましい結果を実現できるという考え方。

たとえば近隣の騒音問題。法律で騒音問題を解決するよりも当事者の間で交渉したほうがよい結果となるということです。つまり、当事者で合意ができる場合には社会的に望ましい状況が実現できるということです。

たとえば8時以降はパーティー禁止の取り決めがあったとします。ところが子供の誕生日などでどうしてもパーティーを開きたい。そんなときはお隣さんに事情を話し合意をしてもらえることができればパーティーを開くことができるというものです。

posted by CYL at 23:23 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月21日

オイコノミア|絶滅させない!経済学

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オイコノミア|絶滅させない!経済学


今回のテーマは、絶滅です。人の経済活動は多くの動物たちに影響を与えています。わたしたちはどのように動物たちとつきあっていくべきなのでしょうか、経済学の視点から考えてみましょう。

今回の講義をしてくれるのは、大阪大学特別教授の大竹文雄先生です。そして、ゲストは魚類学者で東京海洋大学名誉博士のさかなクンです。さかなクンは、2010年に絶滅したとされていたクニマスを再発見し、内閣総理大臣賞を受賞した経験をもつ言わずと知れたさかな博士です。

絶滅の恐れがあるウナギは取りすぎが原因

2014年、ニホンウナギは国際自然保護連合のレッドリスト(絶滅の危機にある動植物のリスト)に指定されました。レッドリストに指定されたからといってすぐに禁漁になるということはありませんが、今後国際的な世論によってウナギが食べられなくなることも考えられます。実際にニホンウナギの漁獲量を見てみると、およそ50年前、1960年には3387トンでしたが、2014年では113トンにまで落ち込んでいます。漁獲高の減少の大きな理由は、ウナギを捕りすぎたことにあります。

なぜ取りすぎてしまうのか??|共有地の悲劇

魚は海を自由に行き来する資源です。たとえば、農作物の場合は、収穫する農作物が誰の畑にあるかで所有者は明らかです。しかし、魚の場合は、海を自由に行き来するため、取られるその時まで誰のものか定かではありません。そのため、海洋資源の場合、放っておくと枯渇を招いてしまうことがあります。どういうことか実験で確かめてみましょう。

スーパーボールすくいの実験
縁日などで見かける金魚すくいならぬスーパーボールすくいで、スーパーボールを魚と見立てて実験を行います。ルールは下記の通り。

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実験の重要なポイントは10個以上残っていれば、1分ごとに補充されるということです。参加するのは大竹先生、又吉さん、さかなクンの3人です。スタートはまだみな慣れていないせいか、なかなかスーパーボールをすくうことができません。1分後、10個のスーパーボールが投入されます。さらに時間が経過し、残りの数を数えながらスーパーボールをすくっていきますが、すくうことに夢中になりすぎるあまりに取りすぎてしまい気がつくと、残りのスーパーボールの数が10個を切って9個となってしまいました。

ルールによってスーパーボールの補充は永遠にありませんので、残りの9個は早いものが勝ちです。すると大竹先生が鬼のごとく半分ヤケでほとんどのスーパーボールをとってしまいました。結果は、大竹先生17個、又吉さん7個、さかなクン6個となり、3分8秒ですべてのスーパーボールがなくなってしまいました。実験のような現象を経済学では、「共有地の悲劇」と呼ばれています。

共有地の悲劇とは、誰もが利用することができる共有地では乱獲が起こり、資源の枯渇を招いてしまうという経済学の法則です。海は人類の共有地で、魚という海洋資源はもともと競走を生みやすく、放っておくと過剰に取られやすいという性質があります。

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乱獲を防ぐ|個別割り当て方式
個別割り当て方式とは、決められた漁獲枠を漁師や漁業団体、漁船などに個別に配分する方式です。さらに譲渡可能割り当て方式では、自分の漁獲枠を使わずに他の人に売ることも可能です。

スーパーボールすくいで個別割り当て方式を採用してもう一度挑戦してみます。ひとり1分間に3個までと割り当てを決めます。その結果は下記の通りです。結果からわかるとおり、資源の枯渇を防ぐだけでなく、資源を増やすこともでき、さらに継続的に利用できるようになるのです。

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ただし、実際には個別割り当て(量)を誰が決めるのかという難しい問題がありますが、その問題を解決することができれば、漁業資源の確保に、個別割り当て方式は有効な手段となります。実際に、個別割り当て方式を取り入れたアメリカやカナダ、ノルウェーでは漁業資源が回復し、生産性が向上しているといいます。


絶滅危惧種のクロサイの保護

クロサイは、絶滅が危惧されている希少な動物です。野生のクロサイは世界でおよそ5000頭しかおらず、絶滅危惧種でも最も危険度の高いカテゴリーに指定されています。クロサイの減少の主な原因は密漁です。サイの角はアジアの一部ではガンやエイズに効くと信じられ漢方薬の材料として使われています。(ただし、科学的根拠はないと言われています。)

クロサイを守るための条約が裏目に
クロサイを守るために角の取引は30年以上前に禁止されていますが、密漁を止めるどころかさらなる悲劇をもたらしました。1977年、ワシントン条約によりクロサイの角の国際的な取引禁止が決定します。するとクロサイの希少価値が高まり、ブラックマーケットでクロサイの価格が高騰し、逆に密漁が進んでしまったのです。この場合、クロサイを守るための国際取引の禁止が逆効果となってしまいました。


南アフリカ政府が行ったインセンティブを使ったクロサイの密猟対策
インセンティブとは、人の意欲を引き出すため、外部から与えられる刺激や動機づけのことをいいます。経済学は、インセンティブを考える学問とも言われています。たとえば、人のやる気を引き出すために会社が給料を上げたり、福利厚生を充実させたり、子育て支援制度を設けたりしますが、それらはすべて社員にとってのインセンティブとなります。

クロサイを保護したくなるインセンティブ設計
南アフリカ政府がクロサイを守るために行ったことは、クロサイのいる土地の地主に対して、クロサイの狩猟権の販売を許可したのです。それを受けて地主は、お金持ちの趣味で猟を行うハンターに、クロサイを撃つことができる狩猟権を1500万円で販売しました。お金持ちの趣味ハンターは、滅多に撃つことでできないクロサイを撃つことができると大金をはたいて権利を買い取ります。地主は、密猟者からクロサイを守り繁殖をさせる方が得をするという金銭的なインセンティブが働くようになり、クロサイの保護や繁殖に設備投資を行い、密猟者からクロサイを守るようになるのです。その結果、南アフリカではクロサイの個体数が増えました。

ここでのポイントは、狩猟権に数の制限を設けたことです。つまり、限られた数のクロサイを犠牲にすることが、クロサイを絶滅から救う手段となっているのです。この南アフリカ政府の政策については賛否両論がありますが、クロサイの個体数が増えたことは事実なのです。


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posted by CYL at 17:12 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月15日

オイコノミア|お酒選びの経済学

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オイコノミア|お酒選びの経済学



イメージに惑わされずにおいしいお酒を選ぶための方法を、経済学から学びましょう。

講義をしてくれるのは日本酒が大好きだという日本大学教授の浅田義久さんです。ゲストはお酒が大好きで、お酒が生活の軸になっているというタレントの真鍋かをりさんです。そして最近ハイボールが好きになったというお笑い芸人の又吉直樹さんの3人で進めていきます。

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情報の非対称性
情報の非対称性とは、取引を行う際、ものを売る側と買う側の間で商品に関する知識や情報に格差があることをいいます。なかでもお酒は種類が多く飲んでみないとわからないために、買う側である私たちの多くは、見た目やイメージで選んでしまうのです。そこでよいお酒選びには、情報の非対称性をなくすことが必要となります。


情報の非対称性をなくすには@
消費者自らが学ぶ方法”ビールの価格”

情報の非対称性をなくすために考えられる方法は大きく分けて2つあります。ひとつは、消費者が学びより多くの情報を自ら得る方法です。そしてもう一つは生産者が消費者に正確な情報開示を行うことで多くの情報を消費者に提供することです。まずはビールなどのお酒の価格を構成するひとつである酒税について学びます。

西荻窪|ブルーパブ
ブルーパブとは、店内で醸造した自家製ビールを提供する店のことをいいます。近年の規制緩和により、ブルーパブのような小さなビールの醸造所が多く誕生しています。

ビールの価格|麦芽の量
店内で提供されるビールの値段は、主に原料に含まれる麦芽の量によって決まっています。ビールは麦芽の量によって酒税という税金がかかります。ビールの価格は、原料費に酒税などを加えて決められていますので、麦芽が多いと高め、少ないとお手頃になります。つまり、味がおいしいから値段が高いというワケではないのです。

酒税|お酒の種類
日本酒の場合、安いカップ酒も高い大吟醸もかかる税金は同じ140円です。安い日本酒を買う人は割高な酒税を払い、高い日本酒を買う人は割安な酒税を払うという逆進的な酒税になっています。昔からある焼酎などは、比較的酒税が安く、いまでは一般的なビールですが、最初は高級品とされていたために酒税の割合が高いのです。

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日本と主要国のビールの酒税を比べるとその差は歴然としています。ビール633mlの場合、日本の酒税は139円となります。それに比べてフランスでは9円、ドイツ9円、アメリカ10円、イギリス72円となっています。

価格弾力性
お酒というのは、少し価格を高くしても消費者は買います。その現象を価格弾力性が小さいと経済学では呼びます。価格弾力性の小さなものに課税することは、経済学的に正しいとされています。
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情報の非対称性をなくすには@
消費者自らが学ぶ方法”ワインの価格”

数あるお酒の中で近年売り上げを伸ばしているのがワインです。フランスやイタリア産に加え、南米やアメリカ産の手頃な価格のワインが登場したことで人気となり、一人当たりの消費量が日本酒を超えました。人気が高まる一方で、ぶどうの品種や産地、飲み方など情報が複雑で、ワインを選ぶのは難しいと言われます。

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ソムリエ|田崎真也さん
ワインは食べものをおいしくするための食事のソースのようなものだと田崎さんは語ります。そのため、例え1500円のワインだとしても、ワインに合ったグラス、温度管理、さらにワインにあう料理を提供することができれば、その価値を上げることができるといいます。そして、ワインの値段がわかるようになるには、”比較をする”しかないと田崎さんは語ります。

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情報の非対称性をなくすにはA
正確な情報開示


情報の非対称性による逆選択
消費者がワインのことを知らずに選ぶと問題が起きることがあるそうです。たとえば、プレミアムワインと普通のワインがあるとします。消費者はその違いが分からなければ、より価格の安い普通のワインを買うことになります。その結果、プレミアムワインは市場から淘汰されてしまうことになってしまい、市場には安い普通のワインしか残らなくなります。この現象を経済学では「情報の非対称性による逆選択」といいます。

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正確な情報開示|老舗ワイナリー
日本を代表するワインの産地、山梨県甲府市勝沼にあるワイナリー「まるき葡萄酒」では、積極的に情報開示に取り組んでいます。まるき葡萄酒は、明治時代に設立された日本で最古のワイナリーです。

自社農園で取れた国産ブドウにこだわってワイン造りをしてきました。そのワケは、国産ワインと呼ばれるもののおよそ8割には、海外産のぶどう果汁が使われているからです。

2014年にワイナリーのオーナーとなった清川浩志さんは、明確な表示ルールのない日本のワインの現状に危機感を抱きました。そこで取り組んだのが正確な情報開示でした。

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正確な情報開示によって、安心して選んでもらえるようになっていると清川さんは感じています。また、それぞれのニーズにあった商品選びをしてもらっていると考えています。さらに品質においても、いままでよりも”よりよいもの”をつくろうという想いが増したといいます。



posted by CYL at 17:09 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月07日

オイコノミア|飲み屋選びの経済学

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オイコノミア|それってお徳?
飲み屋選びの経済学


お得な飲み方といえば飲み放題ですが、本当にお徳なのでしょうか?

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支払い意志額
支払い意志額とは、最大いくらまで支払ってもいいと考える金額のことです。下図はビール1杯ごとの支払い意志額を表しています。お腹が膨れるごとに支払い意志額は減っていき、6杯目で0円になると仮定しています。

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1杯目のビールはおいしいため、実際に価格が300円でも500円支払いたいと考えます。その差額200円が得をしたという”お得感”ということになります。ビールを飲む人の支払い意志額が実際の価格を下回ったときに飲むことを止めるのが経済学では合理的だと言われています。つまり、この人の場合は、4杯目から支払い意志額200円が、実際の販売価格300円を下回りますので、3杯で止めるのが合理的です。

飲み放題でも同様に、支払い意志額がプラスまでしか飲まないのが合理的です。元が取れるところまで飲むと失敗してしまいます。そのため、飲み放題は半分以上の人が損をしているのです。逆に考えるとそうでなければ商売として飲み放題は成り立たないのです。

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1杯の費用|固定費+可変費用
飲み物1杯の費用は大きく分けて2つからなっています。固定費用と可変費用です。固定費用は、地代や設備費など売り上げにかかわらずかかる費用です。一方、可変費用は食材やお酒、人件費(アルバイト)など客ごとに変動する費用です。居酒屋チェーンのような大量販売のお店は、固定費用にお金をかける傾向があり、味で勝負するお店は可変費用にお金をかける傾向があります。そこには立地の条件が大きくかかわっています。

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大量販売のお店は、固定費を沢山かけて大量に販売することを目指すので、店の立地は人が多く集まる駅前を選びます。味で勝負する店は、可変費用にお金をかけるため、固定費用にはお金を多く使えません。そのため、駅から遠い場所や郊外にお店を構えることが多くなります。ゆえにお店の種類の立地傾向から、安ければよいという人は、手っ取り早く駅前のお店を選び、味にこだわっておいしく飲むなら労を惜しまず探すことが重要になってきます。

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差別価格
渋谷にある居酒屋の「相席屋」は、見ず知らずの男女が相席となり、お酒と会話を気軽に楽しむお店です。週末には300人以上が訪れるといいます。このお店の特徴は、なんと言っても料金体系です。女性は、とにかくタダ。飲み放題・時間無制限で食事とドリンクを自由に楽しむことができます。男性の場合、相席の場合30分1500円で飲み放題食べ放題、ただし相席になるのを待っている間は、1杯500円かかるという仕組みです。若者の居酒屋離れが進んでいると言われていますが、2014のオープン以来、全国に25店舗を展開する盛況ぶりです。

人気の「相席屋」では、女性はタダで男性は30分1500円という経済学でいう”差別価格”を採用しています。差別価格とは、同じ商品でも高く買う人には高く売り、安くなければ買わない人には安く売ることです。ほかに差別価格を昔から使っているのが、映画料金です。見る映画は同じでも大人、学生、子どもで異なる料金となっています。

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ヴェブレン効果
例えば、あなたの前に3本のワインが並んでいるとします。それぞれのワインボトルには1000円、3000円、5000円の価格札がついています。それぞれを試飲してみると5000円のワインが一番美味しく感じる傾向があります。これは、価格が高いほど、商品への期待が高まるという心理効果で”ヴェブレン効果”といいます。番組内では、同じワインに違う価格をつけて実験しましたが、ゲストとしてやってきたお酒好きのお笑い芸人千鳥の大吾さんは見事にすべて同じワインだと見抜きました。



posted by CYL at 17:26 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月03日

オイコノミア|”障害”を見つめ直そう

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オイコノミア|”障害”を見つめ直そう


経済学の視点から「障害」を見つめ直す
お笑い芸人の又吉さんは、東京大学の松井教授に連れられてある施設にやってきました。金町学園は、聴覚障害のある子どもたちが親元を離れて暮らす社会福祉施設です。松井先生によると金町学園に、障害について経済学から考えるヒントがあるというのですが、それは一体なんでしょうか。

障害は社会がつくりだす
金町学園で夕食を一緒にとった又吉さんは手話が分からないため、身振り手振りを交えて話しますが、なかなか会話が盛り上がりません。そして逆にまわりに人達が盛り上がる話題についていくことができませんでした。この場面では手話ができる人は多数派で、手話ができない又吉さんは少数派ということになります。ある意味で金町学園では又吉さんが”障害者”であったのです。障害は個人が持っていると考えかがちですが、多数派、少数派という社会が作り出しているものとも言えます。

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ゲスト|デザイナー今中博之さん
ゲストの今中さんは、デザイン会社などでショールームなどのデザインを手がけてきました。現在は、知的障害者のために社会福祉施設を運営しています。今中さんには、生まれつき軟骨の形成不全の障害「偽性アコンドロプラージア」という障害があります。その発症は100万人に1人という圧倒的な少数派です。

経済学の効率性
多数派だけを考えて社会をデザインすると効率性が悪くなるのではないか心配する又吉さんですが、松井先生は、経済学の効率性は誤解をされやすいと解説をしてくれました。

たとえば、障害者と健常者が、3個のアイスクリームを取りに行く状況を考えてみます。ただし、アイスクリームは遠く離れた場所にあり、障害者がたどり着くころにはアイスは溶けて半分になっていると仮定します。

Aの状況
健常者が3個のアイスと取り、障害者は一つも取ることができません。

Bの状況
健常者が1個のアイスを取りしますが、障害者がたどり着くころには2個のアイスクリームは半分になってしまい実質1個分のアイスを手にします。

AとB、二つの状況ではどちらが効率的ということができるでしょうか?

経済学的には、どちらの状況も効率的だということになります。それにはパレート効率が関係しています。パレート効率とは、経済学の資源配分の概念で、誰かの満足度を下げることなしに他の誰かの満足度をそれ以上上げられない状況のことを経済学では”効率的”といいます。

あらためてAの状況とBの状況を見てみます。Aの場合は、障害者の満足度を上げるために、健常者のアイスを1個減らした場合、健常者の満足度を下げざるを得ません。よっていまの分け方が効率的ということになります。一方のBの場合、健常者の満足度を上げようとすると、障害者の満足度を下げざるとえません。結局いまの分け方が効率的となるのです。つまり、Aの場合もBの場合も両方とも効率的ということになるのです。比較して優劣をつけることはできないのです。

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経済学の大前提|自立性
経済学では、自由に行動を選択できる自立した個人を前提に様々な理論を組み立てています。しかし、障害というテーマを扱うとき、経済学ではこの大前提をも問い直します。

又吉さんは、松井先生の紹介で障害と自立について問い続ける研究者の熊谷晋一郎さんを訪ねました。熊谷さんは出生時のトラブルにより脳性麻痺になりました。当事者として研究に取り組む”当事者研究”に取り組んでいます。その中で、自立という言葉の中に新たな意味を見いだしました。

自立の反対語について問うと多くの人は”依存”と考えます。しかし、本当にそうだだろうかと熊谷さんは考えました。東日本大震災に際に、障害者も健常者も逃げるという目的は一緒でも”依存できるものの数”に違いがあったことに気がつかされたと熊谷さんは語ります。健常者には、避難方法として、エレベータや非常階段、はしごなどがありますが、車いすの障害者の場合は、エレベータしかないといった具合です。つまり障害者の自立のためには、依存できるものを社会に増やしていくことが自立への方向だと熊谷さんはいいます。

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社会福祉施設|アトリエインカーブ
丹念に白いペンで描かれた絵が黒いキャンバスを埋め尽くしています。作者は知的障害のあるアーティストの寺尾勝広さんです。寺尾さんのモチーフは一貫して”鉄”です。自らの作品を”鉄骨の図面”と呼びます。海外からも高い評価を受けている寺尾さんの作品ですが、そのきっかけをつくったのがゲストの今中さんでした。

今中さんが2002年に立ち上げたアトリエインカーブは、知的障害がある人たちが、絵画や立体作品などを制作する社会福祉施設です。現在26名のアーティストが在籍し、今中さんは障害者のアートという枠組みを超えて作品そのものの価値が評価される市場に送り出してきました。

アトリエインカーブでは、経費を除いた収益をアーティストに還元します。一方で絵画を元にしたグッズを販売することで得る収益を均等に分配し、生活の基盤をつくるという福祉的な働きも果たしています。


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posted by CYL at 18:18 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする