2015年11月23日

オイコノミア|寄付の経済学

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オイコノミア|寄付の経済学



アメリカ人1世帯当たりの平均年間寄付額は約26万円。一方で日本人1世帯当たりの年間平均寄付額約2400円とまだまだ日本人にはなじみの薄い「寄付」について経済学から考えてみましょう!!


寄付は誰のため
消費と寄付の一番の違いは何でしょう?私たちが日頃行っている経済活動の消費は、モノ・サービスを受けるのは自分ですが、寄付は他人だということです。つまり、寄付とは相手に見返りを求めずに金銭を渡す、またはボランティアをすることを意味します。

寄付をすると幸せになる
それでは寄付のメリットは一体何でしょう?カナダで行われた実験をご紹介します。被験者に現在の幸福度をきいて5ドルを渡します。一方の被験者には自分のために使ってくださいと指示します。

もう一方の被験者グループには、他人への贈り物を買うかチャリティーに寄付するなど他人のために使ってくださいと指示ます。ふたつのグループに再び幸福度を尋ねると他人のためにお金を使った人の方が幸福度が高かったのです。つまり、寄付にはひとの幸福度を上げる力があるようです。

ひとはたくさんのお金を稼ぐと幸せになれると考えますが、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンは年収750万円を超えるとそれ稼いでもあまり幸福度が上がらないという説を唱えています。

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寄付して得すること
認定された寄付団体などに寄付をすると所得税が最大40%控除となります。つまり、寄付をするということは、国への支払いを減らして寄付団体への支払いを増やすことになるのです。

年収500万円(夫婦共働き子ども2人)の場合
寄付額1万円(減税額3,200円)
寄付額5万円(減税額19,800円)
寄付額10万円(減税額39,200円)

ボランティアと報酬の関係
ボランティアと報酬の関係についておもしろい実験をご紹介します。学生ボランティア180名を下記の3つのグループに分けます。どのグループが一番多く寄付を集めることができるかを実験しました。果たして結果はいかに?!

1,集めた金額1%がもらえる
2,集めた金額10%がもらえる
3,報酬なしで寄付を集める

もっとも寄付金を集めたグループは、3の報酬なしで寄付を集めたグループでした。理由はもともとボランティア志望で集まった学生というのがミソです。報酬をもらえるということでボランティアではなくなってしまう1と2のグループの学生は報酬の程度のあわせて働くことに結果になってしまうのです。



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2015年11月09日

オイコノミア|相続の経済学

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オイコノミア|相続の経済学


お金持ちだけの問題じゃない!
相続問題で裁判になるケースは年間17万件とここ10年でその数は2倍となっています。また、裁判になったケースの約30%は遺産額が1000万円以下(家や土地、現金など)のケースで争われています。決してお金持ちだけの問題というわけではなさそうです。

相続は複雑なり
遺産をホールケーキに見立て、母と姉と弟の3人が分け合うとします。民法の法定相続分では、母が2分の1,姉が4分の1、弟も4分の1というのが基本的な分け方となります。

ところがもしケーキの上にイチゴや砂糖のお菓子など色々なものが乗っていたらどうでしょうか。状況はがらりと変化し、ケーキの大きさだけでは比べることができなくなってしまいます。

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ケーキ分割問題
経済学では昔から皆が納得を行く形で資源を分けることを議論してきました。その基本はケーキでいえば、切る人と選ぶ人を別にすることです。

ケーキを切る人が相手が望むことをよく知っていれば、相手の望むものを譲って、自分の取り分を増やすことができるのです。結果として、お互いが満足できる分け方が可能なのです。

大切なことは、相手がどんなものを望んでいるのかをきちんと把握することです。そのために、実際の相続では”話し合い”がお互いが納得できるための肝となりそうです。

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限られた資源を分ける最善策
限られた資源を誰にどのように分け与えることが最善かという問題は経済学で昔から議論されてきました。代表的な二人の経済学者の考え方を見てみましょう。

ジェレミ・ベンサム
「最大多数の最大幸福」を唱え、格差があっても社会全体の利益を優先することが重要。

ジョン・ロールズ
「正義論」を唱え、最も不遇な人々の状況改善を優先することが重要。

二人の考え方を見ると、経済活動が活発な社会かまたは格差のない社会が良いのか、社会のあり方について考えさせられます。



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2015年11月02日

オイコノミア |アートの経済学

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オイコノミア |アートの経済学


アート作品の価値を推し量るのはとても難しいことです。なぜなら値札の「価格」と自分にとっての「価値」は同じではないからです。

価格と価値
経済学用語の「支払意思額」とは、買い手が最大限いくらまで支払ってもよいと考える金額のことを言います。

たとえば30万円の絵に対して、支払意思額が価格を上回っていれば購入し、下回っていれば購入しないということになります。つまり、価値とは自分の中にあるものなのです。

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作り手と買い手は、納得する価格で取引が成立するとお互いがうれしい訳ですが、これを経済学用語で「余剰」と言います。

余剰とは?
たとえば絵を描いた画家が自分の作品を20万円で売りたいと考えます。作品が30万円で売れた場合、画家は10万円の満足を得ることになります。これを生産者余剰といいます。

一方で買い手は40万円で画家の絵が買えたらよいと考えていましたが、実際には30万円で絵を購入できたので、10万円分の満足を得ます。これを消費者余剰といいます。

両者あわせて世の中に20万円分の余剰が生まれたと考えるのです。経済学の基本は”みんなが幸せ”になること、つまり、みんなが取引を通じて余剰を享受することなのです。

ご参考
アート(写真)の価格の決まり方
1、作品の大きさ
2、アーティストの知名度
3、作品の希少性

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2015年10月26日

オイコノミア|話せばわかる交渉の経済学

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オイコノミア|話せばわかる交渉の経済学


交渉に苦手意識をもっているあなた。経済学で上手に希望を伝えられるようになりましょう!

身近な交渉として家賃交渉を考えてみましょう。いまA物件9万円、B物件8万円、ともに同じくらい魅力的な物件があり、あなたはA物件の大家さんと家賃交渉をするとします。

交渉術その1
他の選択肢を持つこと
他に選べる選択肢のことを経済学では「外部機会」といいます。目の前で取引しているのとは別に選ぶことのできる潜在的な選択肢のことです。交渉では魅力的な外部機会を持っていれば交渉で強くなれるのです。反対に相手の持っている外部機会を想定することも大切となります。

家賃交渉の場合、B物件が外部機会となります。B物件が魅力的なほどA物件の大家さんとの交渉を有利に進めることができるのです。たとえば、いま8万円でいい物件があってそちらと比較していることを匂わせるのです。

交渉術その2
交渉決着までの我慢強さ

できるだけ安く住みたいと思っている借り手と早く入居者を決めたい大家さん、どちらも交渉が長引けば長引くほど利益が損なわれます。そんな中で我慢強く交渉できるかどうかが大切となります。

交渉術その3
先に提案すること

できるだけ早く入居者を決めたい大家さんにはこちらからギリギリの線を先に提案することで優位に交渉を進めることができるのです。たとえば家賃7万5千円ならすぐに契約します!などとこちらから提案をするのです。

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番組に登場した経済学用語

比較優位
相手と比べて全ての面で能力が劣っていたとしても比較的得意な仕事を引き受ければ全体の成果を最大限に上げられるという考え方。

コースの定理
ノーベル経済学者ロナルド・H・コース(1910ー2013)が提唱
当事者がコストをかけずに交渉できるのであれば社会全体にとって望ましい結果を実現できるという考え方。

たとえば近隣の騒音問題。法律で騒音問題を解決するよりも当事者の間で交渉したほうがよい結果となるということです。つまり、当事者で合意ができる場合には社会的に望ましい状況が実現できるということです。

たとえば8時以降はパーティー禁止の取り決めがあったとします。ところが子供の誕生日などでどうしてもパーティーを開きたい。そんなときはお隣さんに事情を話し合意をしてもらえることができればパーティーを開くことができるというものです。

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2015年07月21日

オイコノミア|絶滅させない!経済学

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オイコノミア|絶滅させない!経済学


今回のテーマは、絶滅です。人の経済活動は多くの動物たちに影響を与えています。わたしたちはどのように動物たちとつきあっていくべきなのでしょうか、経済学の視点から考えてみましょう。

今回の講義をしてくれるのは、大阪大学特別教授の大竹文雄先生です。そして、ゲストは魚類学者で東京海洋大学名誉博士のさかなクンです。さかなクンは、2010年に絶滅したとされていたクニマスを再発見し、内閣総理大臣賞を受賞した経験をもつ言わずと知れたさかな博士です。

絶滅の恐れがあるウナギは取りすぎが原因

2014年、ニホンウナギは国際自然保護連合のレッドリスト(絶滅の危機にある動植物のリスト)に指定されました。レッドリストに指定されたからといってすぐに禁漁になるということはありませんが、今後国際的な世論によってウナギが食べられなくなることも考えられます。実際にニホンウナギの漁獲量を見てみると、およそ50年前、1960年には3387トンでしたが、2014年では113トンにまで落ち込んでいます。漁獲高の減少の大きな理由は、ウナギを捕りすぎたことにあります。

なぜ取りすぎてしまうのか??|共有地の悲劇

魚は海を自由に行き来する資源です。たとえば、農作物の場合は、収穫する農作物が誰の畑にあるかで所有者は明らかです。しかし、魚の場合は、海を自由に行き来するため、取られるその時まで誰のものか定かではありません。そのため、海洋資源の場合、放っておくと枯渇を招いてしまうことがあります。どういうことか実験で確かめてみましょう。

スーパーボールすくいの実験
縁日などで見かける金魚すくいならぬスーパーボールすくいで、スーパーボールを魚と見立てて実験を行います。ルールは下記の通り。

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実験の重要なポイントは10個以上残っていれば、1分ごとに補充されるということです。参加するのは大竹先生、又吉さん、さかなクンの3人です。スタートはまだみな慣れていないせいか、なかなかスーパーボールをすくうことができません。1分後、10個のスーパーボールが投入されます。さらに時間が経過し、残りの数を数えながらスーパーボールをすくっていきますが、すくうことに夢中になりすぎるあまりに取りすぎてしまい気がつくと、残りのスーパーボールの数が10個を切って9個となってしまいました。

ルールによってスーパーボールの補充は永遠にありませんので、残りの9個は早いものが勝ちです。すると大竹先生が鬼のごとく半分ヤケでほとんどのスーパーボールをとってしまいました。結果は、大竹先生17個、又吉さん7個、さかなクン6個となり、3分8秒ですべてのスーパーボールがなくなってしまいました。実験のような現象を経済学では、「共有地の悲劇」と呼ばれています。

共有地の悲劇とは、誰もが利用することができる共有地では乱獲が起こり、資源の枯渇を招いてしまうという経済学の法則です。海は人類の共有地で、魚という海洋資源はもともと競走を生みやすく、放っておくと過剰に取られやすいという性質があります。

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乱獲を防ぐ|個別割り当て方式
個別割り当て方式とは、決められた漁獲枠を漁師や漁業団体、漁船などに個別に配分する方式です。さらに譲渡可能割り当て方式では、自分の漁獲枠を使わずに他の人に売ることも可能です。

スーパーボールすくいで個別割り当て方式を採用してもう一度挑戦してみます。ひとり1分間に3個までと割り当てを決めます。その結果は下記の通りです。結果からわかるとおり、資源の枯渇を防ぐだけでなく、資源を増やすこともでき、さらに継続的に利用できるようになるのです。

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ただし、実際には個別割り当て(量)を誰が決めるのかという難しい問題がありますが、その問題を解決することができれば、漁業資源の確保に、個別割り当て方式は有効な手段となります。実際に、個別割り当て方式を取り入れたアメリカやカナダ、ノルウェーでは漁業資源が回復し、生産性が向上しているといいます。


絶滅危惧種のクロサイの保護

クロサイは、絶滅が危惧されている希少な動物です。野生のクロサイは世界でおよそ5000頭しかおらず、絶滅危惧種でも最も危険度の高いカテゴリーに指定されています。クロサイの減少の主な原因は密漁です。サイの角はアジアの一部ではガンやエイズに効くと信じられ漢方薬の材料として使われています。(ただし、科学的根拠はないと言われています。)

クロサイを守るための条約が裏目に
クロサイを守るために角の取引は30年以上前に禁止されていますが、密漁を止めるどころかさらなる悲劇をもたらしました。1977年、ワシントン条約によりクロサイの角の国際的な取引禁止が決定します。するとクロサイの希少価値が高まり、ブラックマーケットでクロサイの価格が高騰し、逆に密漁が進んでしまったのです。この場合、クロサイを守るための国際取引の禁止が逆効果となってしまいました。


南アフリカ政府が行ったインセンティブを使ったクロサイの密猟対策
インセンティブとは、人の意欲を引き出すため、外部から与えられる刺激や動機づけのことをいいます。経済学は、インセンティブを考える学問とも言われています。たとえば、人のやる気を引き出すために会社が給料を上げたり、福利厚生を充実させたり、子育て支援制度を設けたりしますが、それらはすべて社員にとってのインセンティブとなります。

クロサイを保護したくなるインセンティブ設計
南アフリカ政府がクロサイを守るために行ったことは、クロサイのいる土地の地主に対して、クロサイの狩猟権の販売を許可したのです。それを受けて地主は、お金持ちの趣味で猟を行うハンターに、クロサイを撃つことができる狩猟権を1500万円で販売しました。お金持ちの趣味ハンターは、滅多に撃つことでできないクロサイを撃つことができると大金をはたいて権利を買い取ります。地主は、密猟者からクロサイを守り繁殖をさせる方が得をするという金銭的なインセンティブが働くようになり、クロサイの保護や繁殖に設備投資を行い、密猟者からクロサイを守るようになるのです。その結果、南アフリカではクロサイの個体数が増えました。

ここでのポイントは、狩猟権に数の制限を設けたことです。つまり、限られた数のクロサイを犠牲にすることが、クロサイを絶滅から救う手段となっているのです。この南アフリカ政府の政策については賛否両論がありますが、クロサイの個体数が増えたことは事実なのです。


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posted by CYL at 17:12 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする