2017年02月19日

オイコノミア 兄弟姉妹の経済学

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オイコノミア
兄弟姉妹の経済学



生まれ順で特性が違う?
兄弟姉妹の中で、よく一番上はしっかり者であるなどと言われますが、経済学の観点から兄弟姉妹を見た場合はどうなるのでしょうか。大阪大学の大竹教授は、生まれ順による特性を経済学から研究をしています。大竹先生によると、兄弟姉妹の生まれ順による特性の一つとして、「姉をもった男性は競争的報酬を好まない」ということを挙げています。

この結果はある実験から導き出されました。実験で4人に迷路を解いてもらい、事前に2つの報酬の渡し方を提示し選んでもらいました。一つ目は正解数に応じて報酬を支払う出来高制です。もうひとつは、4人の中でも最も正解が多かった一人だけに出来高制給の4倍の報酬を支払う方法です。

実験の結果わかったことは、姉を持つ男性は競争を避けて確実に報酬をもらえる方法を選ぶということでした。一方で、兄弟・姉妹のように同性同士では競争を嫌わないこともわかっています。また、弟を持った女性は、妹を持った女性に比べて競争好きで自信がある、姉を持った男性は、優しく協調性の性格を持つ傾向があると言われています。

競争がお互いを高める
意識や能力の高い人や集団と切磋琢磨しお互いを高め合うことをピア効果といいます。近畿大学の研究では、水泳の選手はひとりで泳ぐ時より両側のレーンに競争相手がいるときの方が好タイムが出るということがわかっています。

兄弟姉妹は、お互いに長い時間を一緒に過ごすために、ピア効果は大きくなります。ピア効果には、正のピア効果と負のピア効果があります。先の水泳の例は正のピア効果ですが、一方であまり努力をしない兄弟姉妹がいると他の兄弟姉妹も努力しなくなるというような負のピア効果も存在します。

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行動遺伝学から読み解く
兄弟姉妹


兄弟姉妹の性格が形成される要因は大きく分けて2つあります。遺伝的要因と環境的要因です。人格形成などに遺伝がどの程度影響しているのかを行動遺伝学の観点から研究をしている慶應義塾大学の安藤寿康教授によると、2つの要因が人格形成に影響を及ぼす割合は、半々だといいます。

例えば、パーソナリティ(外交性や神経質さ)は40%が遺伝の影響で、知能や学力は遺伝の影響が高く50%から60%くらいだと安藤教授は語ります。顔形だけでなく人間の行動や心の動きは、教育や自分のトレーニングによって作られていると皆が信じていますが、実は遺伝の影響を大きく受けていると言えます。

ひとりっ子政策の影響
1979年から中国では人口増加を抑えるためにひとりっ子政策が始まりました。ひとりっ子政策が始まった1979年前後に北京で生まれたひとりっ子と兄弟のいる男女400人を対象にした調査があります。

調査の内容は次のような形です。まずAさんは1万円を受け取ります。1万円の中からいくらかをCさんに預けるとその3倍の金額がBさんに手渡されます。Bさんは手渡された金額のうち、いくらかをAさんに手渡します。

この調査は「信頼ゲーム」と呼ばれ、相手をどれだけ信頼するかがわかります。Aさんの信頼する気持ちが強ければ、もらった1万円を全て預けることでBさんは3万円を手にします。それを2等分すると、それぞれが15000円ずつを手にし、お互いの利益が最大となります。相手を信頼する気持ちがなければ、決してお互いの利益が最大になることはありません。

この信頼ゲームを中国のひとりっ子に行ったところ、他人への信頼感が少なく、リスクをとることもまた少ないことがわかりました。ただし、中国の場合は、ひとりっ子政策のため、周りも全てひとりっ子という特殊な状況であったことを鑑みるとこの結果が、日本のひとりっ子にも当てはまるかというと疑問の余地が残ります。

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2017年01月28日

オイコノミア(Eテレ) 音楽の経済学

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オイコノミア
音楽の経済学


今回のオイコノミアのテーマ「音楽」です。音楽について経済学の視点から見ていきます。これまで音楽はCDという形式で販売されてきましたが、現在はitunesなどを始め楽曲のダウンロードサービスが主流となっており、1曲から購入が可能です。さらに今では定額で楽曲が聴き放題というプランもあり、年々CDの販売枚数は減少の一途を辿っています。その一方でライブやコンサートの件数が年々伸びています。

今回はライブのチケット高額転売問題を通して見えてくるチケットの価格について学び、さらに価格をテーマに掘り下げて消費者がサービスの対価として支払う金額についての意外な一面に迫ります。

経学用語「補完財」とは?
東京渋谷にある書店には音楽CDや雑貨小物、ワインなどが販売されています。この店舗の形式を経済学で見てみるとひとつの経済用語が浮かび上がります。それが補完財です。

補完財
2つの財を一緒に使うと効用がより高まる財

例 パンとジャム

音楽単独で販売するのではなく、他の商品と組み合わせて売ることで補完財の働きをするのです。最近は多くの店舗でこのようにメインの商品とは別のものを販売しているお店を見かけるようになりましたが、まさに補完財効果を狙っているのでしょう。

チケット高額転売問題
CDの販売が伸び悩む一方でライブやコンサートの売り上げは伸びています。2016年8月 チケット高額転売に反対する新聞広告が掲載されました。このチケット高額転売問題について経済学から考えてみます。


高額転売が起こる理由
まずどうしてチケットの高額転売が起こるのでしょうか。その理由から考えてみましょう。チケットの値段と観客数の関係は、チケットが安ければ多くのひとが購入します。一方でチケットが高額の場合は購入するひとは少なくなります。

あるアーティストのコンサートのチケットが8,000円だったとします。8000円の場合の観客数は300人とします。チケットの値段を12,000円にした場合は、150人が購入します。すると150枚のチケットが余ってしまいます。また、チケットの値段を4000円にした場合は、400人の人が購入を希望します。すると100名がチケットを買いたくても購入できない結果となります。

そして、ここがポイントなのですが、チケットを購入できない人の中には、チケット購入に4,000円しか出さない人と4,000円以上支払ってもコンサートに参加したいという人がいます。4,000円以上支払ってもよいという人の需要が発生するため、高額高額転売を目論む輩が出現するのです。

つまり、チケットの価格が安いことが高額高額転売問題の原因のひとつと考えられます。しかし、長期的な視点からみるとチッケットが安い方がアーティストとファンの両方にメリットがあるのです。その理由は、、、

チケットを安く売る理由
・長期的にファンでいてもらうため
・ファンの新規開拓ができる

アーティストとファンの双方にメリットがあるようにチケットの価格は設定されているのですが、高額転売が起こるとその価格のバランスが崩れてしまうため、先に紹介したように新聞広告で高額転売に対する反対を訴えたという訳です。

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価格についての経済学
行動経済学の実験

行動経済学者のウリ・ニーズィが行なった実験です。実験の舞台となったのはツアーボートです。このボートには乗船前に写真を撮って後で販売するというビジネスがありました。ニーズィは定価15ドルで販売している記念写真を次の3通りの方法で販売し、どの方法が最も売れるか調べました。

1、定価の15ドルで販売
2、5ドルに値下げして販売
3、客の言い値で販売

結果は次のとおりでした。それぞれ左から15$で販売した場合、 5$で販売した場合、 言い値で販売した場合の数値が並んでいます。

注目すべきは言い値で販売した場合の1枚あたりの利益が3.50$と他の他の販売方法よりも良いことです。その訳を経済学から考えてみるとひとつの経済用語が浮かび上がります。それは「セルフイメージ仮説」です。

購入者  23% 64% 55%
平均価格  15$ 5$ 6.43$
1枚の利益  3.45$ 3.2$ 3.50$

セルフイメージ仮説
自分がフェアな人間であるという自己イメージを守るために利他的な行動をとるという行動経済学の仮説


このセルフイメージ仮説は誰も見ていなくても働くことがポイントです。オーストリアで行われた実験でレストランで食事をした後に客の言い値で支払いを行いました。その支払方法は2つあり、ひとつは言い値の金額を封筒に入れる方法、もうひとつは直接レストランのオーナーに支払う方法です。

どちらが多くの金額を集めたでしょうか。結果は意外かと思われますが封筒に入れて支払う方法の方がより多くの金額が集まったのです。つまり、誰が見ていなくても自分自身のセルフイメージを保つために人は行動をすることを意味しています。

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posted by CYL at 09:37 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年12月15日

オイコノミア|落語の経済学

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オイコノミア|落語の経済学



落語「千両みかん」の経済学
落語の演目「千両みかん」から経済学が見えてきます。果たしてそれは一体どんなことでしょうか、探して見ましょう。

千両みかんとはこんなお話。
8月にみかんを食べたいと病に臥せった若旦那が言った。その父は息子のためを思い番頭さんにみかんを探すように頼んだ。ところがみかんは冬の果物だけに江戸中の八百屋をまわった番頭さんでしたが、みかんを見つけることができませんでした。

みかん問屋を訪れた番頭さん。みかんはあるがそのお値段は、、、なんと千両だというではありませんか。若旦那の願いを叶えるためには千両でも安いと若旦那の父は番頭さんに購入するように命じました。若旦那はみかんを美味しそうに食べ、残り3房を父、母に分けて、最後の一房は番頭さんへとみかんを手渡しました。みかん1つで千両ということは1房100文と考えた番頭さんはそのまま姿をくらませてしまったというお話です。

この千両みかんのお話を経済学の視点から見てみると2つの経済学用語が浮かび上がります。それは次の2つです。

1、使用価値
あるモノが「使う人にとって」どのくらい価値があるのか。
例:若旦那とそのお父さんには、みかんは千両の価値があった

2、交換価値
市場でほかの商品と交換できる客観的な価値
みかんには千両の交換価値はない
つまり、使用価値と交換価値はイコールではない。


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落語「花見酒」の経済学
花見酒はこんな話です。
兄貴分と弟分の二人が花見の季節に酒を売ってひと儲けしようと考えました。二人は酒屋で2升のお酒を後払いで購入しました。酒を運ぶ途中で兄貴分は我慢できずに弟分に10文を払って一杯飲んでしまった。弟分はお金を払ってもらったので文句はありません。少しすると今度は弟分がお酒を飲みたくなってしまった。弟分は先ほど兄貴分からもらった10文を兄貴分に払って一杯飲んだ。お互いに10文をやり取りしながら続けていくうちにお酒は空になってしまいました。

この話から見えてくる経済学は
「共有地の悲劇」です。

共有地の悲劇とは
何人かで共有する資源をそれぞれが自由に使えると乱用して悪い結果になってしまう。
例:牧草地→牧草は食べ尽くされてしまう
うなぎ →取り放題→絶滅

ひとりが所有していれば大切に使うことになるが、共有地の悲劇は、”みんなのものは誰のものでもない”ということです。税金は共有地の悲劇の一例かも知れません。


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落語界の仕組みを
経済学で考える


入門(弟子入り)しないとプロの落語家になれないのが落語の世界です。落語の世界には独特の階級があります。見習い→前座→二ツ目→真打ちという4段階の階級です。この階級は年功序列で約15年で真打ちに昇格するといいます。

落語界が徒弟制度になっているのには訳があります。経済用語の人的資本(人間が身につけている知識や技能を資本とみなすこと)は、さらに二つに分類することができます。一般的人的資本と特殊的人的資本です。落語は特殊的人的資源にあたり、教科書などに記述するのが難しいため、徒弟制度が今も続いているのです。

一般的人的資本
読み書き、計算、外国語など応用範囲の広い能力

特殊的人的資本
一部の専門的な職種でのみ力を発揮できる能力。
教科書などに記述するのが難しく徒弟制度が効果的だとされる。










posted by CYL at 07:00 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年09月22日

オイコノミア|結婚の経済学

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オイコノミア|結婚の経済学




今結婚をしない若者が増えています。2035年の生涯未婚率の推定では男性は29%、女性19%が生涯一度も結婚をしないという予測があります。


なぜ未婚化、非婚化が進んでいるのか?
街で独身の人に結婚をしない理由について尋ねると様々な答えが返ってきます。その中で気になるのが、「独身の方が楽しい」「結婚したら自分の時間がなくなる」といった回答です。

これらの回答は経済学でいうところのプロジェクション・バイアスがかかっています。

プロジェクション・バイアス
今の現在の状況を過度に未来に投影してしまい正しく予測することができないという心の偏り

例えば、お腹がいっぱいの状態で夕食の買い物をすると、夜は控えめで良いと考え、食材も少なめに買います。逆にお腹が空いた状態で買い物をした場合は、夕食はたくさん食べようと考え、多めに食材を買ってしまいます。

ところが時間が経過し、いざ夕食になった時、買い物の時にいっぱいだったお腹も空いていますし、空いていたお腹も落ち着いてしまった結果、夕食の量が少なかったり、逆に多すぎたりといった結果になってしまうのです。

つまり、現在の状況(お腹がいっぱい、お腹が空いている)を過度に未来に投影してしまい正しく予測することができないのです。

今の独身生活が楽しいからといって将来の独身生活も楽しいとは限らないのです。


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出会いが多いと結婚が遅れる?
経済学では出会いが多いほど結婚が遅れる可能性が高いと言われています。チャンスが多いほど期待が大きくなり、数が多いほど妥協せずに探し続け、その結果、相手に求める基準も高くなるからです。

留保水準(OKライン)
取引の際にこの値段だったら売らない、このぐらいの品質だったら買わないというように取引をとどめる水準のこと


どうすればベストパートナーをみつけられる?
例えば、あなたが会社の社長さんで10人の候補者から秘書を採用するとしましょう。ただし、面接をした直後に採用不採用の決断をしなければなりません。優秀な人材を確保するためにはどうしたらよいでしょうか?

まず1人目がもっとの優秀な可能性は10%です。そして一人目の採用を見送って一人目よりも優秀な人が出た時点で採用した場合、その人が最も優秀である可能性は28%です。同様に計算を続けていくと3.7人を見送って、その後に現れた優秀な人を採用するのがベストであることがわかっています。


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当たり前は変化する
行動経済成長期、バブル崩壊後では家庭の在り方、男女の働き方に変化が生まれています。ところが従来の専業主婦家庭に育った若者が社会構造が変わったのにもかかわらず従来と同じ父親像と母親像を求めてしまう(求められてしまう)ことがあります。

例えば、男は一家の大黒柱として家計を支えるといった考えです。非正規の人や病気の人、親の介護を行っている人などは、家計を支えるという概念から外れてしまうため結婚ができないのです。

これらは経済学でいう「選好の内生性」が影響をしています。選好の内生性とは、人の好みは経験や環境によって形成されるということです。


posted by CYL at 00:21 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年09月20日

オイコノミア|美味しさ倍増の経済学

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オイコノミア|美味しさ倍増の経済学



価格が高いと美味しいのか?
経済学では基本的に価格と自分にとっての価値は切り離されているものと考えます。ピカソの絵が数百億円で取引されていますが興味がない人にとってそれほどの価値はありません。

しかし、価格が高いと価値があると思ってしまうことも実際にあります。経済学でいう認知的不協和が関係しています。

認知的不協和
矛盾する二つの認知を抱えた不快な状態のこと

例えば高級料理店で高い料理を食べたがそれほど美味しくなかったという状況があったとします。人はこのような矛盾が生じた場合、変えられる方を変えてしまうのです。

ちょっと変わった味だったけれどこれが最先端の味なのかもしれないなどと理由をつけることで矛盾した状況の辻褄あわせを行うのです。つまり、高いから美味しいと自分を納得させることで認知的不協和を脱しようとします。

また、価格が高いと皆が価値を見出し買ってしまうものがあります。これは見せびらかすための消費でウェブレン財と言います。例えば高級料理店などでの食事です。

ウェブレン財
自分の経済力を誇示するために消費する贅沢品のこと


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美味しいものは食べすぎる?
深夜にラーメンを食べたり、お酒を浴びるほど飲んでしまったり、はたから見たら愚かとしか思えない行動を時にしてしまうことがありますが、そんな愚行をする権利というのでしょうか、経済学では愚行権と言います。

愚行権
他人から愚かだと判断される行為でも自分が満足であれば自由を行使できる権利

これまで愚かな行為の自由と規制の線引きに人間の社会は苦しんできました。経済学には、直接的な規制をせず選択の自由を残したまま人々を望ましい方向へと誘導する「リバタリアン・パターナリズム」と呼ばれる考え方があります。

リバタリアン・パターナリズム
直接的な規制をせず選択の自由を残したまま人々を望ましい方向へと誘導する考え方


行動経済学のリチャード・セイラーは、行動経済学において人を望ましい方向へ促すリバタリアン・パターナリズムの手法の一つ、NUDGE(ナッジ)を提唱しました。NUDGE(ナッジ)とは英語で「肘でそっとつつく」という意味です。

例えば食べ過ぎを抑えるためにメニューにカロリー表示をするというようなことです。実際に肥満大国のアメリカでは、2008年ニューヨーク市がフランチャイズチェーン店のメニューにカロリー表示を義務付けました。

お客は好きなだけ食べることができますがカロリー表示があると心理的な食べ過ぎのブレーキになります。これがまさに肘でつつくような誘導法のNUDGE(ナッジ)です。


posted by CYL at 10:00 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする