2015年05月26日

「未来世紀ジパング」幸福の国ブータンの今


未来世紀ジパング
幸福の国「ブータン」の今



2008年9月、当時ブータンのティンレイ首相の言葉は、リーマンショックという世界金融危機で日米欧がマイナス成長を記録した後とあって、世界の人々の心に響きました。「経済成長だけで理想の未来は来るのか?国は「国民の幸福」を追求すべきだ」経済成長よりも国民の幸福度を国の政策として優先するブータンでは、5年に1度幸福度調査が行われます。九州ほどの広さのブータン全土を約70人の調査員たちが訪ね歩き約7000人を調査します。ブータンは10年間でGDPが約4倍に増え急速な経済成長を遂げており、国民の生活に変化が生まれています。

観光業に注力

ブータンがいま一番力を入れているのが観光業です。2013年の外国人観光客は約11万人でそのうち半数が欧米からの観光客が占めます。ブータンのパロにあるタクツァン寺院は、8世紀にチベット仏教が伝来しブータン巡礼の聖地となっています。山の断崖絶壁にある寺院へは半日のトレッキングで向かいます。街の喧騒を離れ未開発の自然を前にすると何かに気づかされる観光客は多い。アメリカからブータンを訪れた観光客は「自然を大切にしながら何よりも大切に生きることを考えている。お金を稼ぐことがすべてではないところがいい」と語ります。

首都ティンプーに変化

ここ数年、外資系の5つ星ホテルが首都ティンプーに次々と進出しています。昨年12月に進出したル・メリディアンの宿泊料は1泊5万5千円からとなっており、ホテルには女性に人気のスパがあり高級志向となっています。また、観光客を多く集めるために仏教国でのタブーとされる「殺生禁止(生き物を殺すことを禁ずる戒律)」を破り、ブータン初の釣り堀を建設する動きまであります。

ブータンの国技とされる伝統の弓(ダツェ)は150m先の的をめがけて弓を放つ競技ですが、現在弓をする若者が減っているといいます。長年弓を愛好してきた年配の人々はいまの若者は外国のものばかりに夢中だと嘆きます。そんな若者たちを魅了しているのがサッカーです。ブータンは国際サッカー連盟のランキングで最下位でしたが、国際大会で勝利し、ワールドカップの2次予選に進出しています。ちなみにブータン代表を率いるのは日本人監督の築舘範男さんです。

街に出れば歩きスマホをするひと、修行中の僧侶たちもスマホに夢中です。僧侶たちが熱心にスマホを眺めていたのは仏教の経典でした。何百冊の経典がいまやスマホに取って代わられています。そして信号がまだないブータンの街で多く見かけるが日産の電気自動車「リーフ」です。ブータン政府は2020年までに首都ティンプーの車の8割を電気自動車にするという目標を掲げています。政府が排ガスゼロを目指して進める「国家EV化計画」です。

幸福度調査

2005年に行われた第1回調査は実にシンプルな調査でした。3つの選択肢から1つ選ぶだけの調査です。結果は、とても幸せが45.1%、幸せが51.6%、あまり幸せでないが3.3%となりました。国民のほとんどすべてが幸せという驚きの結果によりブータンは幸せの国と呼ばれるようになりました。そんなブータンには、経済成長を図る物差しはGDP(国内総生産)ではなく、GNHという独自の物差しがあります。GNHはGross National Happinessの略で国民総幸福と呼ばれています。国に政策としてGDPよりもGNPを優先するという考えです。

調査方法

約70人の調査員が、九州ほどの広さのブータンをめぐり約7000人を対象に直接家庭に訪問をして聞き取り調査をします。聞き取り調査の質問項目は148項目で調査員はひとつひとつの質問の回答を用紙に記入していきます。また1日の生活についても調査します。今回の調査は第3回目となっており、第1回目では三択でしたが、今回は幸福度を10点満点中何点かで評価をしてもらいます。

画期的な質問

首都にある幸福度調査の本部が置かれている研究センターにはブータン各地から調査結果が送られてきていました。そこに現れたのは日本の幸福研究の第一人者である筑波大学准教授の高橋義明さんです。今回の調査にはブータン政府の要請により日本政府が専門家チームを派遣しているのです。高橋さんが今回から加えた質問はとても画期的な質問でした。それは「あなたの理想の幸福度はなんてんですか?」というものです。ある女性は幸福度を5と回答しました。一見低いように思えますが、理想の幸福度を尋ねると5と回答したのです。幸福度10ということはあり得ないからというのが女性の理由でした。つまり、彼女にとって幸福度5は満足しているということがわかります。高橋さんは「(今までは)10が良いと幸福度を捉えてきたが多角的に見られるようになった」といいます。

足りない部分を国の政策に反映

聞き取り調査の質問にはこんなものがあります。「隣の人とどのくらいの頻度で会いますか?」「野生動物に襲われる危険はありますか?」「近所に生えている植物の名前を言えますか」これらの質問にはきちんとした意図があります。たとえば、隣人と会う頻度は、地域社会の健全性を表し、野生生物の危険は治安状況を表し、植物の名前は環境保護の意識を表しています。これらの質問の回答から足りない部分を見つけ出し、国の政策に反映させることで国民の幸福度をあげるのが調査の狙いなのです。

国連の幸福度ランキング

ブータンは、幸福度を世界に広めようと国連に提唱し採用されています。2013年から国連では独自に行っている幸福度調査があります。国連の調査では、一人当たりのGDPや寿命、社会的支援など6項目を指数化して評価しています。そのためブータンのランキングは低いものとなっています。(ブータンの一人当たりのGDPは2730ドルで131位、平均寿命68歳で137位)

1位、スイス
2位、アイスランド
3位、デンマーク
4位、ノルウェー
5位、カナダ
15位 アメリカ
26位 ドイツ
46位 日本
47位 韓国
79位 ブータン

ブータンの若者たち

19歳の女性警備員
農村部から都市へ出稼ぎにくる若者が多いのですが、大卒でなければ就職はほとんどないといいます。15-24歳の都市部の失業率は22.8%(2013年)と高い失業率となっています。そんな中、いま多くの若者が従事するのが警備員の仕事です。農村部から出稼ぎにきた19歳の女性は病院の警備員を務めています。そんな彼女が暮らすのはガスも水道もないワンルームで、同僚3人でシェアして暮らしています。月収は9000円、家賃は7000円を3人で分けています。布団1枚に3人で肩を寄せ合って眠る彼女はいまはあまり幸せではないといいます。「一番大切なのはお金。幸せの国なんて口だけ」だと語ります。

政府観光局で働く女性(25)
3年前にアシスタントだったという女性は管理職になり月収15000円から21000円に上がりました。家賃1万円のマンションに住む彼女の部屋には20足もの靴が並び、ブータンで人気だというユニクロの洋服があります。そして中古で6万で購入したというニコンの一眼レフカメラを見せてくれました。部屋に大きな仏壇があり朝晩の祈りを欠かさない彼女は、休日にはボランティアで街の清掃を行っています。「仏教の大切な教えは、他の人や世の中のために何かをすることなんです。」と語ります。経済的な豊かさの中にも失われずに彼女の中に残っているのが仏教です。

ブータンと仏教

ブータンの人々の心に深く根付いているのが仏教です。仏教界の最高権威のひとり副大僧侶のロポン・サムテン・ドルジさんは「経済成長も大切ですが、それだけで心が満たされることはありません。仏教の教えで一番大切なのは自分自身の心を豊かにすることです。常に心を清らかにし生きることで幸福を得られるのです。」と語ります。チベット仏教には「輪廻転生」という考えがあります。仏教思想のひとつで来世のために現世があるという考え方です。目先の利益だけ追うことをしないのはその思想が影響を与えています。

日本の幸福度調査

2009年〜2011年に民主党政権が成長戦略に取り入れたことで行われました。(現在は行われていません)その結果は10満点中6.4というものでした。調査の中で注目は幸福度において何を重視しているかということですが、日本人の場合、1番は所得と消費です、続いて健康、家族関係、精神的なゆとり、仕事の有無や安定、友人関係などが並んでいます。日本では第12位にランクされた地域・コミュニティーとの関係ですが、ブータンでは幸福度を左右する一番大切な項目となっています。それはブータンの8割りが農家ということが関係しています。物々交換で自給自足な生活を送る人が多いためコミュニティーを大切にして地域の助け合いによって皆が幸せになっていくと考えているからです。

有機農業を国の施策に

ブータン産の松茸は日本の百貨店に並ぶほど高品質です。キノコ生産者のハルカインターナショナルの井上社長が訪れたのはブータンにある農家でした。1年前からキノコ栽培を始めたという農家ですが、1年で収穫できたキノコはわずかで収入にはならず困っていました。現地の農家のキノコの栽培法は日本では江戸時代から行われている「原木栽培」という昔ながらの栽培方法でした。そこで井上さんが開発したハルカ19号という雑菌に強い菌種を用いて菌床栽培を指導しました。菌床栽培は短期間で収穫できるメリットあります。10日後再び農家を訪ねると立派なキノコができていました。

ブータン政府は有機農業を国の施策として進めています。キノコの輸出を一大産業にしようとしているのです。そこで井上さんはブータン政府の熱い要請によってブータンを訪れて技術を無償で提供しています。井上さんは「貧しい農家に我々の技術を伝え、親御さんが子供に安心して残す収入源となれば」と語ります。





posted by CYL at 13:07 | 未来世紀ジパング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年05月19日

「未来世紀ジパング」意外すぎるマダガスカル



未来世紀ジパング
意外すぎるマダガスカル



みなさんはマダガスカルというという地名は一度は耳にしたことがあると思いますが、どこにあるのかご存知でしょうか。日本とはあまり縁のない国のように感じますが、実は意外な繋がりがあります。そして今後日本にとって重要なビジネスパートナーとなる可能性を秘めた国のひとつです。


世界第4位の島国

マダガスカルといえば、童話の星の王子様にも登場する天に向かって手をつきあげたような不思議な形をしたバオバブの木が有名です。マダガスカルは、アフリカの東部インド洋に浮かぶ島国です。その国土は約58万平方キロメートルで世界第4位の島国です。(日本は37万平方キロメートル)人口は約2200万人で、1960年までフランスの統治下にあった影響で、首都アンタナナリボにはヨーロッパの街並みが広がっています。

固有種の宝庫

マダガスカルは、珍しい生き物の宝庫。ワオキツネザル、シファカ、カメレオンだけで70種が存在しています。

諸説ありますが、マダガスカルはおよそ6500万年前に大陸と切り離されたために生物は固有の進化を遂げたとされています。10年間に600種類が新たに発見されています。また、マダガスカル人のルーツは、東南アジアから渡ってきた人たちだとされています。あかちゃんの多くに蒙古斑があります。マダガスカル語もアフリカの言語より、インドネシアやマレー語に近いと言われています。


旅行会社のHISが現地オフィス開設

HISは、マダガスカルにツアーデスクを開設しました。責任者はケニア支社長のオポンドさんです。マダガスカルには、ここにしかない観光資源があるといいます。マダガスカルへはタイバンコク経由で16時間。はじめての団体ツアーを催行しました。カヌーで水路をわたるとマダガスカル固有種のキツネザルが現れました。人を怖がることなく近づいてきてさらに頭の上に乗っかってしまいました。そこはレニュールアイランドと呼ばれるキツネザルの保護区で、キツネザルと触れ合うことができる施設でした。

アンツィラベ
フランス統治時代にリゾート地として発展した町では、プスプスと呼ばれる人力車を楽しみます。そして当時の面影を残す西洋風の建物などを巡ります。

バオバブ街道
高さ最大30m、幹の直径最大10m、樹齢は1000年を超えると言われています。

ホテルと食事
ホテルはバオバブカフェという瀟洒なホテルで敷地内にはプール、客室にはエアコンと清潔なベッドがあります。メインディッシュは魚の素揚げ、肉料理も選べます。フランス統治の影響でフレンチが主流でソースの味がいいとツアー客からも好評でした。

ツアー最大の目玉
朝5時、ホテルを出発して向かったのはまだ暗いバイバブ街道でした。少しするとバオバブの間から太陽が昇ってきました。雄大な自然と美しい朝日にだれもが満足した様子でした。

本格進出の理由
2009年に反政府勢力が事実上のクーデターを起こし状況が混乱したマダガスカルでしたが、2014年に民主的な選挙で大統領が誕生し、現在は政治が安定しています。

航空路の充実を図る政府
首都アンタナナリボにあるマダガスカル政府観光局は日本人観光客を呼ぶために支援を惜しみまないと語ります。国土が広いマダガスカルは車での移動が困難なため、航空路の充実を計画しています。すでに国営航空会社で新たに航空機3機購入したといいます。




勤勉、手先が器用なマダガスカル人

マダガスカルは親日国です。朝、町の倉庫から威勢のいい声が聞こえてきます。中を覗くと白い道着に身を包んだ男性たちが空手の稽古に励んでいます。マダガスカルには、10万人の空手愛好者がいます。また、市内の公立校の教室では日本語の授業が行われていました。日本語を学ぶ生徒の割合は、アフリカでもっとも多いと言われています。 

衣料品メーカー「ナックス」

大阪に本社を置くナックスは、百貨店などにニットなど納める衣料品メーカーです。自社製のカシミヤのセーターの生産工場を、2年前から中国からマダガスカルに移しました。現地工場の従業員は4000人を超えます。手横と呼ばれる織り機を使い縫製を行っています。なぜマダガスカルかといえば、人件費が安いことと、関税ゼロ(特定区域で製品の95%以上輸出した場合)というメリットがあるためです。さらに現地を訪れた品質管理室長も驚く、マダガスカルの優れた縫製の技術に驚いていました。マダガスカル人は勤勉で手先が器用なのです。 

スイーツにもマダガスカル産

シュークリーム専門店「ビアードパパ」は注文を受けてからクリームを入れることが大きな売りです。中に入れるカスタードクリームも店内で作っています。カスタードクリームの香りの決め手となるのがバニラビーンズです。バニラビーンズは、少量でバニラの香りがする魔法の香料です。日本で使用されているバニラビーンズの9割がマダガスカル産なのです。バニラビーンズを生産する国は、他にもメキシコ、中国などありますが、産地でまったく味が異なるといいます。

2年で価格は2倍
マダガスカル産のバニラビーンズの99%をつくっているのが北東部のサンバヴァという町です。バニラビーンズの輸入を手がけるミコヤ香商の水野社長は、日本のバニラビーンズの輸入の10%以上を扱うミスターバニラ。質のよいバニラを求めてマダガスカルにやってきました。バニラ農園を訪れると、今年は花が咲く時期に雨が多く不作だったといいます。そのため、生産量が減り価格が上昇しているのです。バニラの味は加工をしないと香りがありません。バニラビーンズにするためには手間がかかっています。お湯で煮る→発酵→3ヶ月天日干しという工程を経て香料に変わります。そんなバニラビーンズ製造工程でもマダガスカル人の手先の器用さが生かされています。



知られざる名産

マダガスカルの知られざる名産品はバニラビーンズだけではありません。チョコレートの原料となるカカオもそのひとつです。2014年国際チョコレートアワードで原産地部門金賞を受賞しています。また、3年前ほど前に日本でウナギ不足になりましたが、そのときにウナギがマダガスカルから輸入されていました。


稲作大国

国民の70%以上が農家で、耕作面積の50%以上が稲作という稲作大国のマダガスカル。街中の食堂を覗くとおかず一品に大盛りのご飯を食べています。1人あたりコメの消費量は、日本人の2倍で、コメの種類が豊富で1キロ50円程度で販売されています。

農業を教えて回るJICAの日本人
農業の支援にあたるのはJICAの日本人スタッフです。彼らが教えているのは農業の基本です。例えば、田植えの際に苗は、マス目にそって直線に植えるということです。マダガスカルでは基本的なことを知らない農家が多くコメの収穫量に差が生まれています。また、以前まで行われていた脱穀の方法を日本式に変えました。以前までは、稲を叩きつけて脱穀していましたが、コメが大量に飛び散り鶏の餌になっていたのです。そこで昔の農機具である人力の脱穀機に改良を加えた脱穀機をつくって伝授しました。すると田植えから脱穀までの日本式農法に変えると収穫量は以前の2倍から3倍になりました。

資源大国

マダガスカルは、地下資源の宝庫でもあります。サファイア、ルビーの世界有数の産地として知られています。また近年レアメタルとして注目されるニッケルは携帯電話などに使用され、マダガスカルには世界最大の鉱山があります。

大統領府で親睦

2015年4月、首都郊外にある大統領府に経済産業省と日本企業の姿がありました。ヘリー大統領が出席し、日本とマダガスカルの親睦が図れました。今後はますます両国間の距離が縮まってよきパートナーになっていくことが期待されます。



posted by CYL at 15:39 | 未来世紀ジパング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年05月12日

「未来世紀ジパング」世界で活躍する日本の鉄道

「未来世紀ジパング」
沸騰現場の経済学


世界で活躍する日本の鉄道
年間24兆円の鉄道市場



鉄道発祥の地イギリスで日立製作所がイギリス政府から高速鉄道車両866両と27年間にわたる車両の保守契約をおよそ1兆円で受注しました。先進国では環境問題への配慮、新興国では交通インフラとしての需要が高まっているのが、年間24兆円の規模を誇る鉄道市場です。世界各国で高速鉄道計画が進んでおり、今後の日本経済の成長のひとつの鍵を握る”鉄道”に熱い視線が注がれています。


鉄道の値段
公に鉄道の一両の値段は公表されていませんが、山手線のような都市型都市型電車1両でおよそ1億円、新幹線1両で3億円と言われています。ちなみに航空機は1機およそ300億円です。


<タイ>

日本の中古列車
バンコクとチェンマイを結ぶ列車には大きなバックパックを背負った欧米からの旅行者が乗り込みます。紫色の車体、車内は細長い通路とベッド、トイレのドアには日本語で”和式”の表記があります。

列車は、2008年にタイの国鉄に無償で譲渡された「ブルートレイン あさかぜ」です。日本の中古車両は、バンコクとチェンマイを毎日運行しています。料金は1等7000円、2等2800円、乗車した利用客からはさすが日本製で乗り心地がいいとの声が聞かれます。

日本製の蒸気機関車(SL)
年に1度のタイ「鉄道の日」、アユタヤ駅にカメラを構える鉄道ファンが集まっていました。彼らのお目当てはパシフィック型蒸気機関車です。1949年にタイ向けに30両が生産されたSLです。アユタヤからバンコクへ2時間の車中、年配の女性はSLの乗りながら昔の記憶に思いを馳せながら懐かしんでいました。

日本製は優秀
また、歴史の証人として貴重なC56形蒸気機関車は、1930年代に日本で製造されたもので、第2次世界大戦中に日本軍が使用していました。同年代に作られたアメリカ製やドイツ製のSLが動かなくなる中、日本製はいまも現役で走ることができるといいます。日本製の特徴は、整備がしやすく設計されていることだといいます。


バンコク都市鉄道「パープルライン」
タイ・バンコクの大渋滞は世界でも有名です。急速な経済発展により車の所有者が増えたことに対して、交通インフラの整備が間にあっていないのです。現在、バンコクでは鉄道インフラの整備が進んでいます。そのひとつ、タイで5番目の鉄道交通システムのパープルラインのプロジェクトを進めているのは、大手商社の丸紅と東芝です。

丸紅と東芝が受注
23キロの鉄道建設と車両や信号など鉄道システム一式を受注しました。それまでのプロジェクトはすべてドイツのシーメンス(鉄道車両は世界シェア12%)が請け負っていたので日本企業がはじめて手がけるタイの都市交通システムです。

パープルラインの車両製造は、横浜にある車両メーカー「総合車両製作所」が行っています。総合車両製作所は、山手線の新型車両などを手がけるステンレス製の車両を得意とするメーカーです。高温多湿のタイの気候風土にあわせてステンレス製の車両を製造しています。


<鉄道産業に関わる日本企業>
日本には自動車産業に関わる企業が多いことは有名ですが、鉄道産業に関係する企業もたくさんあります。鉄道といえば車両を一番に思い浮かべますが、そのほかに線路や架線などの設備、運行システム、メンテナンスなど主な企業だけでも下記の通りたくさんあります。さらにこれらの企業に部品などを提供する中堅中小企業を含めると膨大な数の企業が携わっているのです。


(車両)川崎重工、近畿車両、日立、総合車両、日本車両

(内装)住江織物、トヨタ紡織

(モーター)東芝、富士電機

(台車)日本車両、新日鉄住金

(ブレーキ)曙ブレーキ、三菱重工


(線路)東鉄工業、スミハツ、帝国製鋲

(架線)IHI、三和テッキ、安田製作所

(信号)日本信号、大同信号、京三製作所、

(運行システム)日立、三菱電機、東芝



<アメリカ>


アメリカの首都ワシントンで開かれた新型車両のお披露目にはバージニア州知事とともに挨拶をする日本企業の姿がありました。40年ぶりの新型車両を手がけたのは川崎重工です。ワシントンで528両の受注に成功しました。そしてもうひとり賞賛を受けていた日本人が、車両のデザインを手がけた工業デザイナーの宇田川信学さんでした。


工業デザイナーの宇田川信学さん
宇田川さんは過去25年間でもっとも影響を与えた100人に選ばれた人物です。その理由はニューヨークの地下鉄を安全で快適に変えたからです。

券売機のデザイン
宇田川さんはニューヨークに事務所を構え、パソコンや椅子などをデザインする工業デザイナーです。ニューヨークでの初仕事は地下鉄の券売機でした。それまでニューヨークの地下鉄では窓口でトークンと呼ばれるものを買って乗車していました。券売機を知らないニューヨーカーでも簡単に使えるような券売機をデザインしたのが宇田川さんでした。

車両をデザイン
券売機で高い評価を得た後、任された仕事が地下鉄車両のデザインでした。80年代のニューヨークの地下鉄は落書きだらけで、薄暗く、年間18000件の犯罪が起こる危険地帯でした。交通局は地下鉄のイメージを変えるため、車両デザインを宇田川さんへ依頼しました。当時、車両デザインの経験のない宇田川さんは、何度も地下鉄に乗り、どんな時間にどんな客が乗車しているのか、どうしたら地下鉄から犯罪がなくなるのか、落書きする心理は何かなど考えたといいます。

たどり着いたデザインは明るく、清潔感のあるデザインでした。電球の数、光量は以前と一緒
なのですが、壁を白くし、床を黒く配色することで車内は見違えるほど明るくなりました。また、床の黒色には、汚れが目立たないようにと斑点模様が入っています。落書きする心理”こんなに汚れているからいいか”を防ぐ効果があります。

犯罪率80%減少
宇田川さんの車両が導入されたあと、犯罪率は以前に比べて80%も減少しました。また安全に乗れることで乗客の数も増加したのです。宇田川さんは”デザインの力で人の行動を変えることができる”と大きな手応えを感じました。

車両にも秘密
宇田川さんのデザインした車両を製造したのは川崎重工でした。川崎重工では、独自の落書き対策を行いました。万が一の落書きに備えて、ガラスに5枚の薄いフィルムを貼りました。落書きをされても窓を変える必要がありません。また、内壁化粧板には落書きを落としやすい表面処理が施されているのです。川崎重工の車両は、ニューヨーク地下鉄のトップシェア3割を誇ります。全米でも1位のシェアです。



<年間24兆円 世界の鉄道市場>

現在、世界各国では環境への配慮やインフラ整備として高速鉄道計画が進められています。日本の新幹線をはじめ世界のビッグ3と呼ばれるシーメンス(ドイツ)、ボンバルディア(カナダ)、アルストム(フランス)などの世界企業の間で受注争奪戦が繰り広げられています。

そんな中、世界の鉄道(車両)売り上げの1位と2位の中国の鉄道会社「南車」「北車」が合併し、その売り上げ規模はビッグ3を足しても届かないほどの売り上げ規模(3.7兆円)になります。中国が世界市場への輸出を狙っています。


世界の高速鉄道計画
カナダ、アメリカ、ブラジル、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、インド、イラン、サウジアラビア、カザフスタン、エジプト、モロッコ、南アフリカ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー


ビッグ3
ドイツーシーメンス(ドイツ高速鉄道ICE)
カナダーボンバルディア(AVE)
フランスーアルストム(フランス高速鉄道TGV)



<イギリス>

1825年に世界初の鉄道が開通した鉄道発祥の地イギリスでは、現在でも20路線で蒸気機関車が走っています。そんな伝統国で鉄道を走らせるには越えるべき大きな壁が存在していました。そんな壁に挑んだのが日立製作所でした。日立製作所といえば電子機器のイメージがありますが、実は新幹線車両で3割のシェアを誇っています。

日立の挑戦
2009年に導入された日立製の高速鉄道車両が、英サウスイースタン鉄道で使われています。高速車両「クラス395」です。車両の形から通称「ジャベリン(Javelin)」(投げ槍という意味)として親しまれています。ロンドンからドーバー海峡手前のアシュフォードまでの約85キロを37分で結んでいます。最高時速225キロ、従来の半分の所用時間で走行しています。

日立は、2005年、「クラス395」174両を製造、納入、メンテナンスと合わせたパッケージ型事業として受注しました。


初受注への苦難
日立は、2005年に初受注を得るまでの5年間入札してきましたが、日立の列車は、ペーパートレイン、つまり机上の空論で実績がないとされて落札することができない状況が続きました。イギリスには、19世紀の鉄道インフラがいまも残っているために、経験がない会社には任せることができなかったのです。

そこで日立は、イギリス製の中古車両に日立の駆動装置を載せて走行試験を行いました。その結果、無事故、無故障で6000キロを走破したのです。


評価を高めた事件
2009年12月、大寒波の影響で、ユーロスターがトンネル内で故障し乗客が車内に取り残された事件が起こりました。そこで乗客の救出に使われたのが「クラス395」でした。このことで日立の車両の評価はぐっと上がりました。


新たな受注
イギリス南部の港に日立製の新型車両が上陸しました。「クラス395」の後継となる「クラス800」です。日立は「クラス800」の866両と27年間の車両メンテナンスを約1兆円でイギリス政府から受注しました。


「クラス800」はロンドンからブリストルなどをつなぐグレートウェスタン本線、ロンドンからエディンバラなどをつなぐイーストコースト本線に使用される予定です。最高速度201キロ、途中未電化の区間に対応するため、電気・ディーゼル両用のハイブリッド車両となっています。


グローバルの布石
日立は2016年から「クラス800」の現地生産をニュートンエイクリフ車両工場で開始します。この車両工場は、組み立て用の足場に特徴があります。足場は製造する車両の幅にあせて調節することができます。つまり、幅の小さい都市型車両と新幹線のような幅の広い高速車両、両方に対応可能になっています。


日本の新幹線導入 
世界の高速鉄道計画の中で日本の新幹線が導入される有力候補は、インドとタイです。

インドでは、4600キロの高速鉄道の第1弾となる、インド西部のムンバイからアーメダバードの500キロの区間、タイでは、バンコクとチェンマイ間を結ぶ高速鉄道に新幹線が採用されるっことが有力視されています。


新幹線の優位性
新幹線の優位性で一番に挙げられるのは「安全性」です。1960年の開業から死亡事故なしというのは世界でも唯一無二のことです。

品質
鉄道車輪をつくる新日鉄住金は、純度の高い車輪を製造し、国内シェア100%を誇ります。高品質で耐久性に優れています。カーブで揺れない車体の秘密は”アクティブサスペンション”という車体を1度傾ける技術が使わています。

課題
新幹線の課題を強いてあげるとすれば価格です。そんな中、中国政府が鉄道の海外輸出に力を入れています。鉄道車両の売り上げで世界1位と2位の中国南車、中国北車を合併し新会社を設立しました。 

メーカー以外の戦い
インフラの導入には資金調達の問題もあります。いま話題になっている中国主導で進められている「アジアインフラ投資銀行」、日本とアメリカ主導の「アジア開発銀行」、ともにアジア太平洋地域の経済発展に貢献することに設立された金融機関ですが、メーカーの力だけではなく中国が、アジアインフラ投資銀行の力を利用してくると手強い相手になりそうです。



posted by CYL at 12:06 | 未来世紀ジパング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年05月05日

「未来世紀ジパング」親日国トルコに異変 エルドアン大統領は独裁者か?!

未来世紀ジパング
沸騰現場の経済学

親日国トルコに異変
あなたはどのくらい現在のトルコ情勢を知っていますか?



<エルドアン大統領は英雄か?独裁者か?>
2003年から14年まで3期首相を務めるエルドアン大統領は、経済政策の面では文句なしの英雄ということができるでしょう。トルコはここ最近の10年間でGDPを約3倍にする急速な経済発展を遂げています。

一方でエルドアン大統領になり大きくトルコを変えたことがあります。これまでトルコは西洋化を目指し、政教分離で近代化を目指してきました。しかし、敬虔なイスラム教徒であるエルドアン大統領はイスラム化政策をとりました。

2008年 建国以来タブーだった公の場でのスカーフ着用を解禁
2013年 午後10時以降の売店での酒類販売が禁止

そして現在はモスクの建設ラッシュが起こっています。その数は100を越えるといわれています。中でも”エルドアンのモスク”と呼ばれるイスタンブールの高台に建設中のモスク”チャムルジャ・モスク”は総工費約50億円、35000人収容のモスクに美術館や博物館、図書館を併設された建国以来最大のモスクになる予定です。モスクの権威を示すミナレットは全部で6本というのも前代未聞で、世界一美しいといわれる”ブルーモスク”のミナレットの数6本と同じ数なのです。

さらに、エルドアン大統領は、首都アンカラに大統領公邸をつくりました。2014年10月に完成し、総工費700億円、約1000室があるという贅沢なものでした。


<言論統制>
政府を批判したメディア関係者が逮捕され、言論の自由がなくなってきています。サマンヨルTVのカラカ会長が逮捕され現在も拘留中、2014年12月にはテレビ局新聞関係者ほか27人が一斉逮捕されています。それを示すように世界の報道の自由度ランキングでは、2005年に98位だったトルコは現在149位となっています。SNSなども制限されているといいます。

政権を批判できなければ民主主義は成り立たないと訴えたメディア関係者も会見のあとにすぐに逮捕されてしまいました。


<日本との関係>
日本企業のトルコとの関係はいまも続いています。日本企業のIHIはトルコのイズミット湾横断橋の建設に携わっています。完成すれば、全長3km 世界第4位の吊り橋になります。トルコも日本と同じ地震国のため、求められたのはマグニチュード8.0の免震技術でした。

トルコは特別な感情を日本にもってくれているようですので、これからも現在のよい関係が続くように相互理解と親交を深めていくことが必要です。

前に戻る トルコとシリア、イスラム国の関係





posted by CYL at 10:12 | 未来世紀ジパング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「未来世紀ジパング」親日国トルコに異変 トルコとイスラム国の関係

未来世紀ジパング
沸騰現場の経済学

親日国トルコに異変
あなたはどのくらい現在のトルコ情勢を知っていますか?



親日国と言われるトルコですが私たちはあまりトルコについて知りません。いまトルコ大きく変貌を遂げています。そんなトルコの現状についてまとめてみました。今後もいままでと同じようによい関係を続けていくためにはトルコのことを知っておくことが必要です。

トルコは現在急速な経済発展を遂げている一方で、隣国シリアの情勢悪化でシリア難民を多く受け入れています。イスラム国との関係や3期続くエルドアン政権下で国内報道の自由が制限されているなど不安要素が生まれつつあります。


<トルコが親日の理由>
本州最南端の町、和歌山県串本町。1890年、トルコの軍艦”エルトゥールル号”が串本町の沖合で沈没し、乗組員587人が死亡する悲しい事件がありました。そんな中、地元民の懸命な救助で69人の命が救われたのです。この話はいまでもトルコで語り継がれており、教科書で学んだ人も多いといいます。

エルトゥールル号の話は「海難1890」としてトルコと日本の合作で映画化決定し2015年公開の予定で現在撮影が行われています。


<隣国シリア、イスラム国、トルコの関係>
トルコはイスラム教のスンニ派、隣国シリアはアラウィー派(シーア派の一派)ということでシリアのアサド政権はトルコの敵でした。2011年から続くシリア内戦において、シリアのアサド政権と反政府勢力による紛争で20万人が犠牲になっています。アサド政権と敵対するトルコは反政府勢力を支援してきました。しかし、反政府勢力へ流入する過激派組織が増え、ついにその中ならイスラム国という化け物が生まれてしまったのです。


<トルコはイスラム国の味方か?国際社会からの疑問>

イスラム国の戦闘員の約4割を占める外国人。その多くはトルコとシリアの国境を越えてイスラム国が首都としているシリアのラッカへ入国しています。現在はトルコの国境警備は強化されていますが、なぜ簡単に国境を越えることができるのか疑問があがっていました。

また、イスラム国への国際社会の対応は大きくわけて3つあります。1、空爆に参加、2、後方支援、3、人道支援です。トルコは日本と同じ人道支援のみとなっていましたが、最近になってやっと後方支援、武器や基地の提供をはじめました。それまでは空爆の際にトルコ上空を飛行する許可を出していない状況でした。これもいまは許可を出しています。

もともと反政府勢力を支援していたこと、そして上記2つのような状況が相まって、トルコはイスラム国の味方ではないかと思われてしまったのです。


<シリア難民ー日本の人道支援は学校>
現在トルコにはシリアからの難民が約175万人いるとされています。トルコ政府は難民へ食糧支援を行っており毎日パンを支給しています。そんな中日本とトルコは小学校をつくり人道支援にあたっています。

”さくら小学校”と命名された学校に通うのはシリアからの難民の子どもたちです。親を内戦で亡くし教育を受ける機会を失っていた彼らに教育の場を提供しています。教育を受けずに育った子どもたちはまともな仕事を得ることができずに貧困からテロリストになってしまうことがあります。テロリストになることを防ぐために教育は大きな力を持っているのです。

つづきを読む エルドアン大統領は英雄か?独裁者か?






posted by CYL at 10:04 | 未来世紀ジパング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。