2015年07月10日

カンブリア宮殿|東急電鉄社長_野本弘文さん

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カンブリア宮殿
東京急行電鉄社長_野本弘文さん



知られざる東急の新戦略

私鉄の中でも抜群の知名度を誇る東急(東京急行電鉄)は、年間の利用客数は11億人とダントツで私鉄のトップに君臨しています。関東には私鉄が8社ありますが、東急は渋谷を拠点に東京南部や神奈川県に路線を延ばしています。沿線には豪邸が立ち高級住宅地「田園調布」やファッションの街として知られる「代官山」、スウィーツの激戦区「自由が丘」など、全国でも有名な駅が目白押しです。

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東急電鉄|鉄道ビジネスモデル確立
1922年に目黒蒲田電鉄として開業した東急電鉄は、野原を拓いて、沿線に宅地を造成し街をつくるという鉄道のビジネスモデルを確立してきました。「街づくりを行いながら、鉄道を延伸していった会社。いかにお客が便利になるか、そして鉄道を利用してもらうか、沿線の人口をいかに増やすかということで安定的な収益源をつくった」と野本さんは語ります。

東急の街づくりの象徴が、田園都市線の田園調布です。当時の最先端のイギリスの街づくりを導入し、駅を中心に放射状に街をつくりました。豊かな緑の中に豪邸が立ち並び、現在も日本有数の高級住宅街となっています。

そのノウハウで開発されたのが、1966年田園都市線です。横浜郊外の丘陵地に線路を敷き、宅地を造成し、住宅を建て街をつくりました。その典型が「たまプラーザ」です。駅の周りに商業施設があり、その周りに住宅を配置しています。80年代、ドラマの舞台となった街には暮らしやすさの工夫が施されています。たとえば、歩道を広く設計し、安全と快適さを提供しています。また、住宅地と商業地を分離することで、住宅地に店を置かない静かな街づくりを実現しました。

暮らしやすさの工夫
・歩道を広く設計(安全、快適)
・住宅地と商業地を分離(静か)



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新しい街づくり|世代の循環

街ができて30年が経過した「たまプラーザ」には問題がありました。それは、もともと丘陵地を切り開いて作ったため、坂道が多く、年齢を重ねた住民にとって住みにくい街になっていました。”これからの開発は”出来上がったものの再生”が主となる。質を高める開発”と野本さんが語る通り、たまプラーザでは新しい街づくりがはじまっていました。

駅前|高齢者向けマンション
そのひとつが、駅前の高齢者向けのマンションの建設でした。それにより、坂が多い地域の一戸建てに暮らしていた高齢者の住み替えが起こりました。高齢者マンションの室内は段差がないバリアフリー構造となっています。また、駅までの道のりは坂や階段のない平坦な通路で駅に直結しています。駅までに道のりの途中には、クリニックやデイサービスという高齢者の利用頻度が高い施設が備わっています。さらに、料理、買い物代行、マッサージ、介護タクシー、話し相手など43種類のサービスが受けらるようになっています。

空き家|子育て世代向けリフォーム
高齢者が駅前のマンションに住み替えたことで空き家となる一軒家は、子育て世代向けにリフォームされ、若い世代を利用されています。野本社長は「街自体が住民の年齢と共に年をとるのではなく、いろいろな世代が循環をしながら成長し続けることが大事」と語ります。



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人口減少対策|街そのものの魅力をあげる

好調を続ける東急ですが、沿線の人口は2020年をピークに減少すると予測しています。人口減少に向けて、東急は生き残りをかけて新戦略を打ち出しました。そのキーワードは”ここでしか体験できない”です。

二子玉川|ここにしかない店
二子玉川ライズは、今年駅前にオープンした東急の商業施設です。そこには”ここにしかない店”が2つあります。

マヨルカ
マヨルカはスペイン王室御用達のデリカデッセンです。日本初上陸で、スペインの生ハムを使ったサンドイッチやトマトソースを使った魚の炭火焼といったスペイン風の様々な惣菜が並びます。

蔦屋家電 第一号店
本や雑誌が12万冊置かれる横には家電が売られています。ここは本と家電が融合した世界初のお店です。

職住近接
二子玉川はこれまで、住む街、ショッピングをする街でしたが、そこに”働く”という要素を加えるためにオフィスビルを新しく開発し、「住んでよし、働いてよし、訪れてよし」の3拍子揃った街づくりを目指しています。そんな新オフィスビルには、楽天本社の移転が決まっており、約1万人の従業員が街にやってくることが予定されています。しかし、東急の本当の狙いは、職場のすぐ近くで暮らすという「職住近接」です。働く人が東急沿線に引っ越してもらうことを目指しています。


オフィスが付加価値を
増大させる仕組みづくり

渋谷の大家と言われる東急は、いま渋谷で大規模な再開発に着手しています。渋谷駅の東側では、建設費577億円、工事期間17年をかけて巨大地下街の建設にむけた100年に1度と言われる大工事が進んでいます。地上では、JRやメトロを手を組んで渋谷をそっくり作り変える計画が進んでいます。

東急ではいわゆる”箱物”をつくり変えるだけではなく、新たなビジネスの種を蒔き、街の表情を変えようという取り組みを進めています。渋谷をITの街にしようとITベンチャー・クリエーターの交流会を開催し、渋谷に集まる会社が街に付加価値を増大させる仕組みづくり行っています。


野本社長の経歴

1971年 東急電鉄入社
1972年 厚木の宅地開発を担当
1988年 東急不動産出向
1991年 本社のメディア事業を担当
2004年 ケーブルテレビ子会社社長就任
2011年 東急電鉄社長就任

転機となったのが、ケーブルテレビ子会社の社長就任でした。社長就任当時、会社は6億5千万円の赤字を抱えたお荷物的存在でした。その原因は、電車は黙っていても客が乗ってくれるという鉄道会社の体質が子会社にも染み付いていることでした。会社では”待ちの営業”を行っていました。野本さんは、自らの考えを浸透させるために、400人の社員全員と1年をかけて食事をし、改革に取り組みました。その結果、3年で赤字を解消し、子会社を再建することに成功しました。


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posted by CYL at 13:27 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月03日

カンブリア宮殿|伊東屋五代目社長 伊藤明さん

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カンブリア宮殿|伊東屋社長_伊藤明さん



本店のリニューアル
東京銀座にあるお店の前に長い行列ができていました。その数はおよそ200人。みなさんのお目当ては、2年5ヶ月の工事期間を経て新装オープンした文房具の老舗「伊東屋」本店でした。12階まるごと文房具を販売する伊東屋は、お客をワクワクときめかせるまさに文房具のテーマパークです。

伊東屋のあゆみ
日露戦争真っ只中の1904年、銀座で洋品店を営んでいた伊藤勝太郎さんは閉めることになった隣の文具店を譲り受け「伊東屋」を創業しました。商品は西洋から輸入したノートや美術用品が並び当時としてはハイカラでした。当時、まだ普及していなかった”レジ”も、伊東屋がはじめて導入したと言われています。

1930年には、地下2階地上8階建ての大型商業ビルに改築しました。美容室をテナントに入れるなど常識にとらわれない文房具店の経営を行ってきました。年賀状印刷で一世を風靡したプリントゴッコは、まだ世に出る前に伊東屋が先行販売しました。伊東屋は、新しい文房具を生む特別な店でもありました。

五代目社長|伊藤明さん
五代目社長の伊藤明さんが見せてくれたのは、ドイツの会社がつくるペンのコレクションです。ペンが好きなのではなく、デザインが好きだからもっていると語ります。そのほかにも万年筆などを披露し、文房具に関する話を語りはじめるとなかなか止まりません。社長自身、超がつくほど文房具が好きで仕方がないようです。「愛着が持てるかどうかが大切。道具は愛着を持たずにも使える。愛着が持てるのが文房具の魅力」と伊藤さんは語ります。

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工業デザイナーから一転
伊藤さんは、1964年生まれで絵を描くのが大好きな少年でした。好きな仮面ライダーのポーズを自分で考えて絵に描いていたといいます。絵が好きだったため、工業デザイナーになろうと考えアメリカに留学しました。3年間学び自動車のデザイン会社に就職が決まりましたが、当時の社長に説得され、1992年に伊東屋に入社しました。

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ネット通販に負けない店づくり

2005年、社長に就任しました伊藤さんを苦しめたのはネット通販の台頭でした。たとえばAmazonは文房具だけで約130万点を取り扱っており、品揃えではかないません。伊東屋に来店する必要がなくなってしまうという危機感を伊藤さんは感じていました。

商品数を減らし出会いを演出
生き残るために、ネット通販と勝負できる店づくりを決心し行ったのが、銀座本店のリニューアルでした。膨大な品揃えのネット通販に対して、本店の品数数を15万点から4万点にあえて減らし、よい品との出会いが生まれる店舗づくりを行いました。「商品がいっぱい置いてあってもお客との出会いがなければ買われていかない。少なくてもよいものを選び、お客の目につく方が大事」と伊藤さんは語ります。

体験する売り場
新店舗で扱うペン700点がすべて試し書きできるコーナーを設けることで、ネット通販にはできな実店舗の強みを生かしています。

買ったらすぐに使える空間
また、ハガキや便箋を買ったお客が手紙を書き、投函できるコーナーをつくりました。ネット通販は買うだけですが、伊東屋では時間を有意義に活用することができるというわけです。利用した女性客は、ポストを探す手間を省き、出しそびれることがなくて嬉しいと語ります。

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オリジナル商品開発

オリジナル商品の数は約1300で、売上の7%を占める柱のひとつになっています。「飽きこないものを作らないといけない。シンプルなデザインほど飽きるポイントが少なくなる」と伊藤さんは語ります。そして、シンプルなデザインは構造的にもシンプルになり壊れるポイントが少ないというメリットもあります。

オリジナル商品開発は、デザインと素材がよいことにこだわって進められています。オリジナル商品開発を加速させるために、本社とは別にデザイン事務所をつくりました。

オリジナル商品開発を進める理由の第1は、他社との差別を図る意図あります。もともとのきっかけは、お客の要望に合う商品がなかったことでした。製造費は高くなるが、お客にいいものを届けて満足してもらいたいと伊藤さんは語ります。


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posted by CYL at 17:15 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月27日

カンブリア宮殿|イーグルバス社長 谷島賢さん(61)赤字路線バス復活劇

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カンブリア宮殿|
イーグルバス社長 谷島賢さん(61)


赤字路線バス復活劇
愛される超地域密着戦略



小江戸川越|人気観光スポット
埼玉県の川越は小江戸と呼ばれる蔵造りの町並みが美しい観光名所です。東京から電車で1時間ほどでタイムスリップしたような気分が味わえます。食べ歩きも充実して、家族みんなで楽しめると年間650万人の観光客が訪れます。

川越の町並み


川越に来たらぜひ味わってみたいもの、それがうなぎです。かつて川越の周りの川でたくさんのうなぎが獲れました。うなぎに特産品の醤油が合わさって、名物になったといいます。創業250年の老舗で使われるタレは、継ぎ足しながら受け継がれてきた秘伝のタレとなっています。全国でも有数のうなぎの産地である静岡県の浜名湖からやってきたというお客も納得の味だといいます。

川越名物|ボンネットバス
もうひとつ川越の名物となっているのが、レトロなボンネットバスです。観光客の中にはボンネットバスを目当てにやってくる人もいます。そんな人気のボンネットバスですが、実は観光客のためのバスではなく、街のひとの足となっている路線バスなのです。川越の観光スポットをメインに、2つのルートを走っています。1日乗車券を購入すれば500円で乗り降り自由にバスを利用できます。

観光名所のひとつ「川越城本丸御殿」のバスが近づくと、運転手がガイドをはじめました。そして突然「通りゃんせ、通りゃんせ、ここはどこの細道じゃ〜」と運転手が歌を歌いました。実は川越城の裏にある三芳野神社の参道が歌詞の中にある”細道”を指しているといいます。

運転手が観光名所を案内してくれて、車内に笑い声が溢れる路線バスは滅多にありません。そんな客を楽しませる路線バス「ボンネットバス」を運行している会社が、イーグルバスです。



イーグルバス社長|谷島賢さん(61)
イーグルバスの本社は川越市にある小さな三階建ての建物です。イーグルバスは、社員193名、車両111台、売上高9億7000万円の中堅規模のバス会社です。朝の朝礼では、日課の発声練習を行います。しっかり声を出すことが接客の基本だと考えているためです。そんなユニークなバス会社を率いるのが社長の谷島賢さん(61)です。

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免許取得|10年間の実績
苦境にあるバス業界において谷島さんは独自の手法で客足を伸ばしてきました。谷島さんは大学卒業後、大手旅行代理店に就職しました。1980年、地元川越で小さな旅行会社を経営していた父とともにイーグルバスを設立しました。当時盛況であった観光バスに乗り出したいと考えていました。しかし、簡単にはいきませんでした。観光バスに必要な免許は、実績がないと取ることができなかったのです。そこでまず許可制の送迎バスで事業をはじめました。

最初に取り組んだ送迎バスには、車椅子用のリフトが設置されていました。イーグルバスは、養護学校の送迎により10年の実績を積み、1990年に観光バス事業の免許を取得しました。その後、路線バス事業へと進出を果たしたのです。

その歴史の中でヒットしたのが、いまや川越の名物となってボンネットバスの小江戸巡回バスでした。イーグルバスは、価格ではなく顧客満足で業績を伸ばしています。

もうひとつの顔|観光協会理事
毎月18日はきものの日
谷島さんにはもうひとつの顔があります。それは観光協会の理事を務めて、川越に観光客を呼ぶ活動をしています。たとえば、毎月18日に行われている「川越きものの日」は、今年で5年目を迎え、川越の名物となっています。きものを着ているとお得なサービスがたくさん用意されています。その特典は、ドリンク注文でデザートのサービスが受けられたり、小江戸巡回バスの1日乗車券が通常500円のところ350円に値引きされます。また、自宅からきものを着てこなくてもレンタルショップで、着付け台込みで1日2160円からきものが利用できます。

小江戸川越ライトアップ
蔵の街のライトアップ「小江戸川越ライトアップ」をはじめました。その目玉はプロジェクションマッピングです。毎年秋に3日間開催しており、3万人が訪れて大盛況を博しています。このイベントを一緒に立ち上げたのは、川越の若手経営者たちです。

海外からのお客|英会話
外国人観光客のために、運転手さんが英会話の自主トレを休憩時間などに行っていました。教材はイーグルバスオリジナルの英語接客用教材です。

さまざまな取り組みによりイーグルバスの小江戸巡回バスの利用者数は1.5倍に増加し、商店街を訪れる客も増えています。「地元と一緒に元気になる」というのが谷島さんのポリシーだといいます。「街が盛り上がってお客さんが来てくれば、バスに乗ってもらえる。最初に街づくりをするのが順番から考えると正しいと思う」と谷島さんは語ります。

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路線バス業界の実態(2012年度)
事業者数約2000社のうち、赤字の事業者が72%を占めています。また路線バスの廃線は、年間約900kmにのぼります。高度成長期の頃は、通勤通学の足としてバスが大きな役割を果たしてきましたが、通勤通学の利用者のリタイアや、少子化による利用者の減少が現在の状態を表しています。

公共交通路線を担うバス会社には、”公共の顔”と”民間の顔”があるといいます。民間の顔から赤字路線を見ると心揺れ動くが、廃線にあると困る人が必ず出てきます。日本のバス会社の多くは赤字を抱えながら撤退を踏みどど待っているという状況にあると谷島さんは語ります。

バス会社の品質とは
安全と顧客満足という2つの要素からなっています。安全は事故ゼロというもの、一方の顧客満足は際限なく拡大できる余地があると谷島さんは言います。最低限としての安全の品質と顧客満足、それら合わせてバス会社の品質と谷島さんは考えています。

また谷島さんは、地域が良くならなければ企業は絶対に成長できないと考えています。「シェアを争うのではなく企業同士が力を合わせていく。そこで地域が良くなれば、企業も生かされる。「地域に生かされる」という発想の転換が必要」といいます。

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赤字路線バス復活劇〜埼玉県日高市〜

埼玉県日高市は、川越市の隣に位置する人口5万人のベッドタウンです。ここでもイーグルバスは路線バスを走らせていますが、9年前に大手バス会社が撤退し、困った自治体がイーグルバスに引き継ぎを依頼してきた路線でした。

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改革1|データ収集による見える化
イーグルバスの車庫が川越市と日高市の境にあることで、日高市に交通空白の地にしないための赤字路線を引き受けました。しかし、その決断が甘かったことをのちに思い知りました。初年度の赤字は2000万円にものぼりました。赤字の原因を探るため、谷島さんはバス業界初となる乗降者数を調べるための赤外線センサーと位置を測定するGPSをバスに取り付けました。

バスが何時のどの停留所に着いたか、そこで何人の乗客が乗り降りしたかというバスの中の「見える化」を実現しました。集めたデータをもとに谷島さんは改革に取り組みました。

改革2|運行ルート変更
データは様々なことを教えてくれました。そのひとつが埼玉県飯能市にある飯能靖和病院へのアクセスの問題でした。病院から歩いて5分離れているイーグルバスの停留所の利用客がなぜかあるときから増加しました。その理由を調べると病院前に停留所をもつ他のバス会社が運行便数を減らしていたことがわかりました。もともと1日3便あったバスが、土日祝日のみ1便に変更されていました。そこで谷島さんは、運行ルートを変更してバス停を病院の前に移動したのです。

改革3|ダイヤ改正
さらにデータからダイヤの遅れの原因が判明しました。ポイントは、日帰り温泉施設「宮沢湖温泉 喜楽里 別邸」の停留所にありました。日帰り温泉施設は、露天風呂が楽しめ、食事も充実していることから観光の人気のスポットとなっています。多くのお客が訪れる観光シーズンには、乗客の乗り降りに時間がかかることがバスの遅れの原因となっていることが判明しました。そこで谷島さんは、ダイヤ全体を見直し、停車時間に余裕を持たせることで遅延を解消したのです。これで時間通りにやってくる便利なバスになりました。その結果、月間利用者は3000人も増加しました。



赤字路線バス復活劇〜埼玉県ときがわ町〜

そんな谷島さんの手腕を頼りにしたのが、埼玉県のときがわ町です。鉄道の駅は1つしかなく、住民の足は町営バスが頼りでした。しかし、2時間に1便しかないために不便で利用客が減少し、町の財政負担となっていました。

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改革1|中継ポイント設置で便数を増やす
2007年、ときがわ町の路線バスをイーグルバスが引き継ぎました。谷島さんは、「便利になれば客は増える」と、過疎の町であえて便数を増やしました。谷島さんは町の中心に、バスの中継ポイントをつくりました。そうすることで集落と駅をつなぐバスを1時間に1便走らせることが可能となりました。

改革2|デマンドバス
さらに谷島さんはバス停から遠い町民に気を配りました。85歳の女性は、最寄りのバス停まで15分かかるため、以前はできるだけ外出を控えていました。しかし、谷島さんがはじめた”デマンドバス”というサービスで便利になったといいます。

デマンドバスとは、予約をすると臨時のバス停まで迎えに来てくれるサービスです。料金はバス料金と同じで、乗り継ぎがしやすいように中継ポイントまで運んでくれます。こうした取り組みでバスの利用客は1.7倍に増加しました。



十勝バス|路線バスの旅

地方のバス業界はどこも厳しい状況ですが、生き残りをかけた取り組みが各地のバス会社で始まっています。従業員225名の北海道十勝の十勝バスは、ユニークなバスツアーで注目を集めています。バスツアーは、通常観光バスを使用しますが、十勝バスでは路線バスをつかった日帰りプランに力を入れています。

日帰りプランでは、路線バスの往復運賃と目的地の入場料がセットになっています。路線バスのため、降りるのは停留所です。目的地までは徒歩で歩いて向かいます。母と娘の親子で利用したお客は、歩くのがいいといいます。親子が向かったのは、北海道の四季織織の花が楽しめる人気の庭園スポット「六花の森」です。

バスと入場料で通常2280円のところ、十勝バスのパックを利用すると1600円で楽しめるのです。ほかにも様々なパックプランがあります。たとえば、ばんえい競馬のパックは、500円と激安のワンコインで利用できます。しかも200円の買い物券がついてくる特典付きです。幕別温泉バスパックは、通常1990円がほぼ半額の1000円で利用できます。バス会社だけではなく、お客、施設のみんなが嬉しい取り組みです。



新たな取り組み|埼玉県東秩父村

埼玉県唯一の村、人口3000人の東秩父村で谷島さんは新しい試みをはじめていました。村への入り口となる東武東上線の小川町駅にあるイーグルバスのバス停は、休日には乗り切れないほどのお客がいました。賑わいの理由は、ハイキング客でした。東秩父村には、ハイキング初心者に人気のコース「外秩父七峰縦走ハイキングコース」があるのです。30分も山道を登れば山頂に到着です。山頂からの眺めは絶景で、天気のよい日には遠く八ヶ岳連峰まで見渡すことができます。

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イーグルバスの東秩父路線の沿線には、さまざまな観光スポットがあります。そのひとつ「和紙の里」に谷島さんは目をつけました。実は、東秩父村は1300年の歴史を誇る和紙づくりの里です。地元でつくられた「細川紙」は、2014年ユネスコ無形文化遺産に登録されました。その影響もあり、和紙の里は和紙づくりができることともあって観光スポットとして人気急上昇中です。

中継ポイント|利便性UP
谷島さんは2年前から和紙の里にバスの中継ポイントをつくり、周辺の観光地への利便性を高めようとしています。さらに、和紙の里に郵便局やコンビニ、レストランなどをつくることで観光客だけではなく、地域住民も便利になる施設を目指しています。これは、村と共同で進める一大プロジェクトとなっています。

過疎の町にこそ観光資源
谷島さんは「過疎の町にこそ観光資源」があるといいます。いまでは定年退職しても元気なひとがたくさんいます。多くのひとが健康ために「山歩き」をするのです。するとそこに足となるバスの需要が増えます。そのため、平日は利用客の少ない路線バスが、休日になるといっぱいになるのです。つまり、観光と路線バスを組み合わせれば「バスの収支が維持できる」ことになるのです。


次回
創業111年銀座伊東屋
5代目社長 伊藤明さん


posted by CYL at 11:44 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カンブリア宮殿|イーグルバス社長 谷島賢さん(61)赤字路線バス復活劇

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カンブリア宮殿|
イーグルバス社長 谷島賢さん(61)


赤字路線バス復活劇
愛される超地域密着戦略



小江戸川越|人気観光スポット
埼玉県の川越は小江戸と呼ばれる蔵造りの町並みが美しい観光名所です。東京から電車で1時間ほどでタイムスリップしたような気分が味わえます。食べ歩きも充実して、家族みんなで楽しめると年間650万人の観光客が訪れます。

川越の町並み


川越に来たらぜひ味わってみたいもの、それがうなぎです。かつて川越の周りの川でたくさんのうなぎが獲れました。うなぎに特産品の醤油が合わさって、名物になったといいます。創業250年の老舗で使われるタレは、継ぎ足しながら受け継がれてきた秘伝のタレとなっています。全国でも有数のうなぎの産地である静岡県の浜名湖からやってきたというお客も納得の味だといいます。

川越名物|ボンネットバス
もうひとつ川越の名物となっているのが、レトロなボンネットバスです。観光客の中にはボンネットバスを目当てにやってくる人もいます。そんな人気のボンネットバスですが、実は観光客のためのバスではなく、街のひとの足となっている路線バスなのです。川越の観光スポットをメインに、2つのルートを走っています。1日乗車券を購入すれば500円で乗り降り自由にバスを利用できます。

観光名所のひとつ「川越城本丸御殿」のバスが近づくと、運転手がガイドをはじめました。そして突然「通りゃんせ、通りゃんせ、ここはどこの細道じゃ〜」と運転手が歌を歌いました。実は川越城の裏にある三芳野神社の参道が歌詞の中にある”細道”を指しているといいます。

運転手が観光名所を案内してくれて、車内に笑い声が溢れる路線バスは滅多にありません。そんな客を楽しませる路線バス「ボンネットバス」を運行している会社が、イーグルバスです。



イーグルバス社長|谷島賢さん(61)
イーグルバスの本社は川越市にある小さな三階建ての建物です。イーグルバスは、社員193名、車両111台、売上高9億7000万円の中堅規模のバス会社です。朝の朝礼では、日課の発声練習を行います。しっかり声を出すことが接客の基本だと考えているためです。そんなユニークなバス会社を率いるのが社長の谷島賢さん(61)です。

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免許取得|10年間の実績
苦境にあるバス業界において谷島さんは独自の手法で客足を伸ばしてきました。谷島さんは大学卒業後、大手旅行代理店に就職しました。1980年、地元川越で小さな旅行会社を経営していた父とともにイーグルバスを設立しました。当時盛況であった観光バスに乗り出したいと考えていました。しかし、簡単にはいきませんでした。観光バスに必要な免許は、実績がないと取ることができなかったのです。そこでまず許可制の送迎バスで事業をはじめました。

最初に取り組んだ送迎バスには、車椅子用のリフトが設置されていました。イーグルバスは、養護学校の送迎により10年の実績を積み、1990年に観光バス事業の免許を取得しました。その後、路線バス事業へと進出を果たしたのです。

その歴史の中でヒットしたのが、いまや川越の名物となってボンネットバスの小江戸巡回バスでした。イーグルバスは、価格ではなく顧客満足で業績を伸ばしています。

もうひとつの顔|観光協会理事
毎月18日はきものの日
谷島さんにはもうひとつの顔があります。それは観光協会の理事を務めて、川越に観光客を呼ぶ活動をしています。たとえば、毎月18日に行われている「川越きものの日」は、今年で5年目を迎え、川越の名物となっています。きものを着ているとお得なサービスがたくさん用意されています。その特典は、ドリンク注文でデザートのサービスが受けられたり、小江戸巡回バスの1日乗車券が通常500円のところ350円に値引きされます。また、自宅からきものを着てこなくてもレンタルショップで、着付け台込みで1日2160円からきものが利用できます。

小江戸川越ライトアップ
蔵の街のライトアップ「小江戸川越ライトアップ」をはじめました。その目玉はプロジェクションマッピングです。毎年秋に3日間開催しており、3万人が訪れて大盛況を博しています。このイベントを一緒に立ち上げたのは、川越の若手経営者たちです。

海外からのお客|英会話
外国人観光客のために、運転手さんが英会話の自主トレを休憩時間などに行っていました。教材はイーグルバスオリジナルの英語接客用教材です。

さまざまな取り組みによりイーグルバスの小江戸巡回バスの利用者数は1.5倍に増加し、商店街を訪れる客も増えています。「地元と一緒に元気になる」というのが谷島さんのポリシーだといいます。「街が盛り上がってお客さんが来てくれば、バスに乗ってもらえる。最初に街づくりをするのが順番から考えると正しいと思う」と谷島さんは語ります。

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路線バス業界の実態(2012年度)
事業者数約2000社のうち、赤字の事業者が72%を占めています。また路線バスの廃線は、年間約900kmにのぼります。高度成長期の頃は、通勤通学の足としてバスが大きな役割を果たしてきましたが、通勤通学の利用者のリタイアや、少子化による利用者の減少が現在の状態を表しています。

公共交通路線を担うバス会社には、”公共の顔”と”民間の顔”があるといいます。民間の顔から赤字路線を見ると心揺れ動くが、廃線にあると困る人が必ず出てきます。日本のバス会社の多くは赤字を抱えながら撤退を踏みどど待っているという状況にあると谷島さんは語ります。

バス会社の品質とは
安全と顧客満足という2つの要素からなっています。安全は事故ゼロというもの、一方の顧客満足は際限なく拡大できる余地があると谷島さんは言います。最低限としての安全の品質と顧客満足、それら合わせてバス会社の品質と谷島さんは考えています。

また谷島さんは、地域が良くならなければ企業は絶対に成長できないと考えています。「シェアを争うのではなく企業同士が力を合わせていく。そこで地域が良くなれば、企業も生かされる。「地域に生かされる」という発想の転換が必要」といいます。

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赤字路線バス復活劇〜埼玉県日高市〜

埼玉県日高市は、川越市の隣に位置する人口5万人のベッドタウンです。ここでもイーグルバスは路線バスを走らせていますが、9年前に大手バス会社が撤退し、困った自治体がイーグルバスに引き継ぎを依頼してきた路線でした。

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改革1|データ収集による見える化
イーグルバスの車庫が川越市と日高市の境にあることで、日高市に交通空白の地にしないための赤字路線を引き受けました。しかし、その決断が甘かったことをのちに思い知りました。初年度の赤字は2000万円にものぼりました。赤字の原因を探るため、谷島さんはバス業界初となる乗降者数を調べるための赤外線センサーと位置を測定するGPSをバスに取り付けました。

バスが何時のどの停留所に着いたか、そこで何人の乗客が乗り降りしたかというバスの中の「見える化」を実現しました。集めたデータをもとに谷島さんは改革に取り組みました。

改革2|運行ルート変更
データは様々なことを教えてくれました。そのひとつが埼玉県飯能市にある飯能靖和病院へのアクセスの問題でした。病院から歩いて5分離れているイーグルバスの停留所の利用客がなぜかあるときから増加しました。その理由を調べると病院前に停留所をもつ他のバス会社が運行便数を減らしていたことがわかりました。もともと1日3便あったバスが、土日祝日のみ1便に変更されていました。そこで谷島さんは、運行ルートを変更してバス停を病院の前に移動したのです。

改革3|ダイヤ改正
さらにデータからダイヤの遅れの原因が判明しました。ポイントは、日帰り温泉施設「宮沢湖温泉 喜楽里 別邸」の停留所にありました。日帰り温泉施設は、露天風呂が楽しめ、食事も充実していることから観光の人気のスポットとなっています。多くのお客が訪れる観光シーズンには、乗客の乗り降りに時間がかかることがバスの遅れの原因となっていることが判明しました。そこで谷島さんは、ダイヤ全体を見直し、停車時間に余裕を持たせることで遅延を解消したのです。これで時間通りにやってくる便利なバスになりました。その結果、月間利用者は3000人も増加しました。



赤字路線バス復活劇〜埼玉県ときがわ町〜

そんな谷島さんの手腕を頼りにしたのが、埼玉県のときがわ町です。鉄道の駅は1つしかなく、住民の足は町営バスが頼りでした。しかし、2時間に1便しかないために不便で利用客が減少し、町の財政負担となっていました。

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改革1|中継ポイント設置で便数を増やす
2007年、ときがわ町の路線バスをイーグルバスが引き継ぎました。谷島さんは、「便利になれば客は増える」と、過疎の町であえて便数を増やしました。谷島さんは町の中心に、バスの中継ポイントをつくりました。そうすることで集落と駅をつなぐバスを1時間に1便走らせることが可能となりました。

改革2|デマンドバス
さらに谷島さんはバス停から遠い町民に気を配りました。85歳の女性は、最寄りのバス停まで15分かかるため、以前はできるだけ外出を控えていました。しかし、谷島さんがはじめた”デマンドバス”というサービスで便利になったといいます。

デマンドバスとは、予約をすると臨時のバス停まで迎えに来てくれるサービスです。料金はバス料金と同じで、乗り継ぎがしやすいように中継ポイントまで運んでくれます。こうした取り組みでバスの利用客は1.7倍に増加しました。



十勝バス|路線バスの旅

地方のバス業界はどこも厳しい状況ですが、生き残りをかけた取り組みが各地のバス会社で始まっています。従業員225名の北海道十勝の十勝バスは、ユニークなバスツアーで注目を集めています。バスツアーは、通常観光バスを使用しますが、十勝バスでは路線バスをつかった日帰りプランに力を入れています。

日帰りプランでは、路線バスの往復運賃と目的地の入場料がセットになっています。路線バスのため、降りるのは停留所です。目的地までは徒歩で歩いて向かいます。母と娘の親子で利用したお客は、歩くのがいいといいます。親子が向かったのは、北海道の四季織織の花が楽しめる人気の庭園スポット「六花の森」です。

バスと入場料で通常2280円のところ、十勝バスのパックを利用すると1600円で楽しめるのです。ほかにも様々なパックプランがあります。たとえば、ばんえい競馬のパックは、500円と激安のワンコインで利用できます。しかも200円の買い物券がついてくる特典付きです。幕別温泉バスパックは、通常1990円がほぼ半額の1000円で利用できます。バス会社だけではなく、お客、施設のみんなが嬉しい取り組みです。



新たな取り組み|埼玉県東秩父村

埼玉県唯一の村、人口3000人の東秩父村で谷島さんは新しい試みをはじめていました。村への入り口となる東武東上線の小川町駅にあるイーグルバスのバス停は、休日には乗り切れないほどのお客がいました。賑わいの理由は、ハイキング客でした。東秩父村には、ハイキング初心者に人気のコース「外秩父七峰縦走ハイキングコース」があるのです。30分も山道を登れば山頂に到着です。山頂からの眺めは絶景で、天気のよい日には遠く八ヶ岳連峰まで見渡すことができます。

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イーグルバスの東秩父路線の沿線には、さまざまな観光スポットがあります。そのひとつ「和紙の里」に谷島さんは目をつけました。実は、東秩父村は1300年の歴史を誇る和紙づくりの里です。地元でつくられた「細川紙」は、2014年ユネスコ無形文化遺産に登録されました。その影響もあり、和紙の里は和紙づくりができることともあって観光スポットとして人気急上昇中です。

中継ポイント|利便性UP
谷島さんは2年前から和紙の里にバスの中継ポイントをつくり、周辺の観光地への利便性を高めようとしています。さらに、和紙の里に郵便局やコンビニ、レストランなどをつくることで観光客だけではなく、地域住民も便利になる施設を目指しています。これは、村と共同で進める一大プロジェクトとなっています。

過疎の町にこそ観光資源
谷島さんは「過疎の町にこそ観光資源」があるといいます。いまでは定年退職しても元気なひとがたくさんいます。多くのひとが健康ために「山歩き」をするのです。するとそこに足となるバスの需要が増えます。そのため、平日は利用客の少ない路線バスが、休日になるといっぱいになるのです。つまり、観光と路線バスを組み合わせれば「バスの収支が維持できる」ことになるのです。


次回
創業111年銀座伊東屋
5代目社長 伊藤明さん


posted by CYL at 11:43 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月19日

カンブリア宮殿|タニタ社長 谷田千里さん

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カンブリア宮殿|タニタ社長 谷田千里さん



”はかる”と”食べる”でニッポンを健康に


タニタの”食べる”事業
500kcalのメニューが載ったレシピ本を週に2回は活用するという主婦は、体重が増えてきたときに使うとすっと元に戻ったりすることもあると語ります。500kcalというとメロンパンおよそ1個分のカロリーです。主婦が見ていたのは、レシピ本は532万部が売れたタニタのレシピ本です。

タニタの”はかる”事業
住宅街を颯爽と歩く田代さん夫婦が揃って胸元につけているのがタニタの活動量計です。活動量計はいわば歩数計の進化版で、歩数の他に消費カロリーや脂肪の燃焼量まで測ってくれる優れものです。散歩から帰った田代さんが向かったのは屋上です。縄跳びをはじめましたが、その手に握られていたのはタニタの縄跳びです。飛んだ回数、消費カロリーを教えてくれます。さらに食事をつくる際に取り出して味噌汁の中に入れたのは塩分計です。先端を汁に入れるだけで塩分濃度を教えてくれる商品もまたタニタの商品です。タニタの本業は、健康に関する”はかる”機器なのです。その商品は90種にも及びます。

その代表は体脂肪計です。体脂肪計は実はタニタが世界で初めて開発した商品です。その体脂肪計も進化を遂げています。いまでは体組成計と呼ばれ、乗るだけで計測データを自動的にスマートフォンに転送し、体脂肪はもちろん、骨量や体内の水分量まで瞬時にはかることができるのです。

ユニークな商品ですと、二の腕などに当てるだけで皮下脂肪の厚さがわかる計測器「皮下脂肪厚計」や寝ている間の寝返りの回数や呼吸の数を計測し睡眠の質がわかる「睡眠計」などがあります。

はかる+食べる
タニタは、本業の”はかる”に”食べる”が加わって2013年度の年商は146億円と右肩上がりの成長を続けています。タニタ社長は、食が加わったことで”健康総合企業だ”と思っていると語ります。

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タニタの歴史



初代|体重計
創業は1923年、創業者は現社長の祖父にあたる谷田五八士さんです。タニタは創業当時「谷田賀良倶商店」という金属加工メーカーでした。1945年にはたばこを入れる「シガレットケース」を発売し、1946年にはパン食の広がりにあわせて「トースター」の製造をはじめました。そして、1959年には最初のヒット商品となる「家庭用体重計」を発売しました。当時体重計は銭湯にしかありませんでしたが、アメリカにはすでに一家に一台があったことを知り開発したといいます。健康をはかるタニタの原点となった商品の誕生です。


2代目|体脂肪計
2代目の社長となったのは父の谷田大輔さんです。この時に生まれたのが、タニタ最大の発明となる世界初の乗るだけで計測できる「体脂肪計」です。それまで体脂肪は脂肪が水に浮く特性を利用して水中に全身を沈めて体重をはかることで導きだしていましたので、簡単に計測することができませんでした。

タニタは、筋肉は電気を通しやすいが、脂肪は電気を通しにくいという性質に注目しました。体に微弱な電気を流し、どれだけ流れにくいかで体脂肪を計測することを発案し簡単にはかることができるようになりました。体脂肪計は発売するやいなや国内外でヒットして累計2500万台を出荷しています。

体脂肪という言葉は当時ありませんでしたので、タニタがつくった造語だといいます。ラジオなどで脂肪率というと死亡率と混同されることが多かったため、体脂肪率という造語が生まれました。


3代目|谷田千里社長
3代目の谷田千里社長は、父大輔さんとはかつて衝突(確執)があったと語ります。「おれが食わしてやってんだら言うことを聞け」と言われてカチンときていたので、早めに手に職をつけて「この人と会いたくない」と思っていたそうです。高校卒業後、調理師免許を取得しましたが、腰を痛め料理人の道を断念せざるを得ませんでした。その後、大学に入り直して、1998年に経営コンサルタント会社に入社しました。そこで多くの経営者と接するうちに父親に対する気持ちに変化が起こりました。父ではなく経営者として見てみると優れた経営者だと思えたのです。父を助けたいという思いがあったため、転職を決意したといいます。2001年、29歳のときにタニタに入社、そして、入社7年目の2008年、36歳の若さで社長に就任しました。

レストラン事業開始
当時は売り上げの状況が良くないときだったといいます。それは、体脂肪計の特許が切れ、競合他社が同様の商品を発売していました。このままではジリ貧、新たな展開を模索していました。

そんなときに舞い込んだのが社員食堂のレシピ本の出版依頼でした。会社の宣伝になればと軽い気持ちで引き受けましたが、発売してみると予想外の大ヒットとなりました。会社には問い合わせの電話が殺到しました。定食を食べようと本社まで押しかけるひともいたそうです。そこで2011年、大きな決断をしてレストラン事業を展開することを発表しました。2012年に丸の内にタニタ食堂をオープンし、本格的に”食”の事業に乗り出したのです。

当時、社内には反対の声もあったといいます。「メーカーがサービス業になってもおかしくないと思った。一歩踏み出すのが私の仕事。」と谷田社長は当時を振り返りそう語ります。まだ会社の売り上げのうち”食”が占める割合は10%に満たないといいますが、成功すればタニタの本業をレストラン事業にしてもいいと谷田社長は考えています。

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タニタ食堂のキーマン
管理栄養士 荻野菜々子さん

タニタ社員食堂のレシピの責任者が、管理栄養士の荻野菜々子さんです。もともとはカロリーと脂質を下げただけの”指導食”と呼ばれるものでした。そこにおいしさと満腹感を加えたのが荻野さんです。そんなタニタの社員食堂のレシピ本がヒットしたことでオープンしたのが、「丸の内タニタ食堂」です。社員食堂と同じ500kcalの定食をそのままお客に提供しています。ちなみに価格は830円から。開店から3年が経過していますが、現在も女性客を中心に賑わっており、全国に6店舗展開しています。

タニタシェフ育成コース
さいたま市にあるホテルブリランテ武蔵野のカフェでは4月からタニタ食堂のメニューの提供をはじめました。他のお店でもタニタの講習を受けて合格すればタニタのメニューを提供することが可能なのです。タニタシェフ育成コースは10日間の講習で受講料58万円(税抜き)です。受講生はプロの料理人ですが、歯ごたえを残し満腹感につなげるのがタニタ流で、野菜を切る大きさや歯ごたえは普段とやり方が全然違うと語ります。


大手食品メーカとのコラボ商品
タニタでは、大手の食品メーカーからのオファーを受けてコラボ商品を開発しています。たとえば、通常のお米よりカロリーが低い「タニタ食堂の金芽米」、麹を使用した「丸の内タニタ食堂の減塩みそ」など、10企業とコラボした36商品があります。そんなコラボ商品の中で最大のヒットとなっているのが森永乳業とコラボしてつくった「タニタ食堂100kcalデザート」です。何種類かありますが、プリンは通常のプリンのおよそ半分のカロリーとなっていて4年間で7000万個を出荷しています。

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社内健康プロジェクト
タニタでは「健康ビジネスに携わる以上、まず社員が健康でなくてはならない」ということで、社内健康プロジェクトを行っています。社員は常に活動量計を持ち歩き、週1回以上の健康チェックを義務付けられています。社内ではラジオ体操を行ったり、デスクワークの際にバランスボールを椅子代わりに使ったり社員はそれぞれ健康を保つよう日々心がけています。そんな社内健康プロジェクトの成果は、社員ひとりあたりの医療費が年間12%減少しと、如実に現れました。


タニタ健康プログラム
社内健康プログラムの実績から社外へと広がりを見せるのが「タニタ健康プログラム」です。”はかる”と”食べる”を軸に健康になるプログラムとなっていて、現在100の企業・団体が導入しています。

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ながおかタニタ健康くらぶ
新潟県長岡市は、新潟県第2の都市ですが、人口の約3分の1が65歳以上の高齢者が占めています。長岡市が悩んでいるのは、いまや日本中の自治体が悩んでいるといわれる医療費の拡大です。医療費の拡大防止に期待されているのが、「ながおかタニタ健康くらぶ」です。現在、会員数は約900人、年会費3000円を払うと会員証代わりにタニタの活動量計がもらえます。5000歩で10ポイントがもらえ、1000ポイント以上貯まるとタニタの商品や長岡市内で使える商品券と交換することができます。会員のひとりは「やったことが自分に返ってくるのが魅力」だと語ります。

タニタカフェ 
健康をコンセプトにタニタが運営するカフェです。ながおかタニタ健康くらぶと連携しており、タニタカフェでメニューを頼めばひとつ10ポイントがもらえます。メニューはもちろんタニタオリジナルです。たとえばオリジナルコーヒーは、脂肪燃焼効果があるという「クロロゲン酸」が通常の2倍含まれています。また、いちごヨナナスは、砂糖を使わずにバナナの甘さだけで作られたいちごのスウィーツです。さらに、カフェの奥には健康チェックのコーナーがあり、体組成計で計測すると10ポイントもらえ、計測結果をもとに管理栄養士による健康相談を無料で受けることができます。(現在は、長岡市の他、東京板橋区や静岡県三島市などでも展開)


日本が世界に先駆けて経験する超高齢化社会において、医療費を下げるモデルをタニタが成功させて、体も元気に、財政的にも元気になることで、日本全体が元気になるといいと谷田社長は考えています。


次回は
小江戸川越|イーグルバス社長 谷島賢さん
奇跡の集客を生む赤字路線バスの復活劇


posted by CYL at 15:10 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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