2020年05月05日

欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ(3)

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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ 大いに語る(3)


利己的な利他主義
経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、1759年の道徳感情論で人間誰しもが持つという他者への共感が社会の秩序を生むと説いています。一方で1776年の国富論では、市民一人一人の利己心が社会を推進すると説いています。利己と利他は、一見相反する言葉のようですが、アタリ氏は、このアダム・スミスの道徳感情論と国富論の主張は同じであると語っています。

たとえば、パン屋さんがパンを販売したとしましょう。パンが売れる場合は顧客が喜んでいます。利他主義が自分に帰ってくることの表れです。つまり、パン屋の例では、利己と利他は相反する事柄ではないということを意味します。自分勝手にパンを売ってもパンは1度は売れたとしても2度は売れません。結局、利己主義では、ビジネスは続かないことを意味します。これが、アタリ氏が、アダム・スミスは、道徳感情論と国富論が同じことを言っていると説明する理由です。利他主義が結局は自分の利に変わって帰ってくるのです。

ポジティブ資本主義
利他主義の”利他”をどのように定義するかが大切ですが、アタリ氏の利他とは、”将来の世代の利”と考えています。そのため、将来の世代のためになるのか否かの視点をもって考える資本主義をポジティブ資本主義と呼んでいます。

資本主義の問題は短期思考であることです。株主から長期的な視点の理解を得ることは容易ではないこともあり、長期的な利益よりも目先の利益の確保が優先します。(資本主義での理想は家族経営です。家族経営であれば、子や孫に継承するために長期的な視点をもって経営にあたるからです。しかしながら現実は、短期的な視点で利益を上げて企業を亘り歩く経営者も少ないないのが現実です。)民主主義においても同様に、有権者の人気取りに躍起になってしまい短期的な視点でのものの見方が主流となってしまいます。

この問題点の解決のためにアタリ氏は欧州で”影の議会”の設置を行いました。影の議会とは、生まれていない有権者世代の代表として、将来の世代のためになるのかという視点で、ものを見ることを行います。つまり、法律が現在の我々のためになっていると同時に将来の世代のためにもなっているのかを影の議会は判断するということです。私達は、複眼的思考を持ち合わせることが不可欠であり、さらには自分たちの子供世代のことを考えるだけでは不十分で人類全体を考える必要があるのです。


その(4)に続く
posted by CYL at 11:00 | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする