2015年09月14日

夢の扉+|大阪大学教授_堀井俊宏(62)

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夢の扉+|大阪大学教授_堀井俊宏(62)



100万人の命を守るため
マラリアと闘う日本人科学者

マラリアのワクチン開発

約20年前にマラリア研究をはじめた堀井さんでしたが、国から研究予算をもらう会議の場で痛烈な言葉を浴びました。「日本にマラリアがないのになぜそんな研究をするんだ」その言葉が堀井さんの心に火をつけました。「世界中で苦しんでいる人がいるのに日本には関係ないというのか」

医療の国際貢献にまだ理解がない時代に、なんとか研究予算を獲得し堀井さんは走りだしました。しかし、マラリアワクチンの開発は不可能に近いといわれていました。これまでイギリスやアメリカがワクチンの開発に取り組んできましたが、その予防効果は3割から4割程度でした。劇的な効果を上げるワクチンはいまだ世界には存在していません。

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免疫システムを利用したワクチン

ワクチンとは人間の免疫システムを利用する方法です。免疫システムは病原体が進入すると敵だと判断し、攻撃をする抗体を作り出します。身体は一度攻撃した病原体を覚えているため同じ病気にはかかりにくくなるという仕組みです。この免疫システムを利用したのがワクチンです。毒性を弱めた病原体をワクチンとしてあえて体内に入れることで抗体をつくらせることで、その病気に対する強い抵抗力が生まれるのです。この方法でこれまで多くのワクチンがつくられてきました。

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攻撃すべき標的が多いマラリア

ではなぜマラリアのワクチン開発は不可能に近いのか?その理由は、マラリア原虫には抗体が攻撃すべき標的が数千種類存在し、さらにその組み合わせが原虫毎に異なるためです。そのため、たとえ一つの抗体をつくっても他の原虫が現れると標的が変わるため攻撃できず、マラリアに感染してしまうのです。堀井さんはその不可能に研究者人生を捧げてきました。難しいことに挑戦するのが科学者としての本分、相手にとって不足はないと堀井さんは語ります。

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共通の標的「SERA(セーラ)」発見

堀井さんはマラリア発祥地においてマラリアを発症しにくい人がいることに注目しました。ウガンダやソロモン諸島で彼らの血液を調査しました。堀井さんはあらゆるマラリア原虫に攻撃できる抗体が存在すると仮定しました。手がかりはアメリカ留学時に偶然発見したマラリア原虫の標的「SERA(セーラ)」でした。

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数千種類の標的を持つと言われるマラリア原虫ですが、実はすべてにSERAという同じ標的が存在することを発見しました。この発見により、人工的にSERAに対する免疫システムを持つことができればマラリアに感染しなくなるという可能性が出てきたのです。

研究をはじめて15年が過ぎた頃、ワクチンが形となりました。臨床実験の結果、72%の予防効果が認められました。2015年8月、アフリカ大陸のブルキナファソで5歳以下の子どもでの臨床試験がはじまりました。結果が出るのは2016年12月ですが、堀井さんが開発したワクチンは年齢が低いほど効き目があるとされているので、8割以上の予防効果を得たいと堀井さんは考えているといいます。ワクチンは5年後の実用化を目指しています。




posted by CYL at 18:48 | 夢の扉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする