2015年08月31日

NHKスペシャル|老人漂流社会〜親子共倒れを防げ〜

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NHKスペシャル
老人漂流社会|親子共倒れを防げ



親と同居する中年未婚者増加

いま、親と同居する未婚者(35歳〜44歳)が増えています。その数は、1980年では39万人でしたが、いまでは305万人にまで数が増加しています。さらに、その失業率は10.4%と同世代の平均の2倍以上になっています。

調査にあたった総務省の研究官は危機感を募らせています。親が万一の状態に陥った時には、共倒れになってしまう危険があると指摘します。今後、5年10年でこのような事案が大量に発生する可能性があるといいます。

本来ではあれば、子どもたちと同居することで生活が安定するのですが、失業などの理由で収入を得られない子どもを親が年金収入で支えることで、さらに苦しい状況へと陥る高齢者が増えているのです。

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子どもとの同居による老後破産

年金だけでは暮らしていけず、医療や介護などを切り詰めるなどギリギリの生活を送っている高齢者を老後破産といいます。これまでは一人暮らしの高齢者が病などで倒れ、支える家族がいないために老後破産となるケースがありましたが、さらに調査を進めると支えてくれるはずの子どもと同居することで高齢者が老後破産に陥るケースがあることがわかりました。子どもと同居すれば老後は安心できるとかつては思われていました。しかし、いま同居したことでますます破産状態に追い込まれてしまう新たな老後破産が増えて来ているのです。

問題の背景には|不況と非正規雇用

その背景にあるのが働く世代の所得が減り続けているということです。90年代後半から平均所得は減り続け年間所得は100万円あまり減少しました。所得が減った理由は、20年にわたる不況と非正規雇用の増加です。非正規雇用は年々増え続け、いまでは雇用全体の約4割を占めるようになりました。所得が少ないことや仕事が不安定なため、親と同居しても暮らしは安定せず、結果的に親子共倒れともいえる、厳しい状況の追い込まれてしまうのです。


札幌市の安田義昭さん(80)のケース

札幌市の団地に暮らす安田義昭さん(80)は、45歳の息子が失業し、同居することで生活が苦しくなりました。息子と同居する前の義昭さんの収入は年金9万5千円でしたが、それだけで生計を立てていくことができず、生活保護で家賃や医療費の保護を受けていました。

しかし、息子の昭男さんが戻ってくることで状況は一変します。働く世代の子どもと同居していると生活保護は原則受けられません。義昭さんは、生活保護が打ち切られたことで、免除されていた家賃や医療費を負担しなければならなくなったのです。新たに増えた負担は3万円、義昭さんの年金は次の支給日前に底をつきます。さらに、4年前に脳梗塞を煩った義昭さんは、再発を防ぐ為には血圧を下げる薬を毎日飲む必要がありますが、1ヶ月の医療費3000円を支払う余裕がありません。

苦肉の策|世帯分離

高齢者の介護や見守りの拠点「地域包括支援センター」で、親子が同居したままでは救済ができず命にかかわる恐れがある場合に行っているのが世帯分離という手段です。

働く年齢の子どもと同居していると、子どもの収入が少なく生活が苦しくても生活保護はなかなか受けられません。そこで、親に高齢者施設に移ってもらい親子の世帯を分離します。働くことが難しい高齢者の場合は生活保護を受けることができます。一方、子どもには就労支援をして自立を促します。

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専門家の指摘

放送大学教授で家族社会学が専門の宮本みち子さんは、親の年金を頼って親と同居する中年の世代が増えている現状を放置すれば、今後、老後の負担を行政が背負う税金を使って親子をサポートする時代がやってくるといいます。

青山学院大学教授の榊原英資さんは、問題の背景として正社員と非正規社員で働く所得の格差を問題視しています。正社員の場合、年齢に応じて給料は上がり、中高年になると安定した所得が得られます。一方で非正規で働く人は年齢を重ねても所得は上がりません。ちょうど親の介護を担う年齢になったとき、非正規で働く人たちは、正社員と比べて不安定な状況にあるのです。非正規雇用の問題は国が政策を打ち出さない限り、増えていくのはやむを得ない状況にあると指摘します。

最悪のケース|岩手県奥州市

子どもがいれば大丈夫だろうと周囲も行政も気がつかないまま最悪の結果となったケースがあります。2014年1月、岩手県で親子の遺体が自宅で発見されるという痛ましいニュースがありました。高齢の母を介護していた無職の息子、二人きりで暮らしていました。

亡くなったのは、佐藤ミツさん(享年91)と息子の武さん(享年64)です。生活の糧は母親の年金でした。体調が悪くても病院に行くことができなかった武さんは突然倒れそのまま亡くなりました。ほとんど寝たきりだった母親のミツさんは助けを呼ぶことができずその後凍死してしまいました。

これは、親子で暮らしていても生活に行き詰まってしまうというかつて想定していなかった事態です。行政側も息子と同居をしていたために見守りを必要とする家庭とは考えていませんでした。

一方、武さんは、弟や友人たちに、一切介護の愚痴や金銭面での困窮を訴えることがなかったため、周りの人も武さんの苦境に気がつくことができなかったといいます。親子で暮らしていれば安心だというこれまでの常識は、いま崩壊しつつあるのです。


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posted by CYL at 17:59 | NHKスペシャル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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