2015年08月25日

心と脳の白熱教室|第4回あなたの性格は変えられる

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心と脳の白熱教室|
第4回あなたの性格は変えられる



オックスフォード大学
エレーヌ・フォックス教授

何が私たちの性格を決めるのか、それは生まれつきのものなのか、育てられ方によるのかを見ていきます。うつ病や不安障害、楽観主義において遺伝子が果たす役割について注目します。悲観主義から楽観主義に変わることができるのかを考えます。

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性格を決めるのは遺伝子か?

遺伝子はタンパク質をつくるのが役割です。遺伝子によって作られたタンパク質が細胞となり、細胞が悲観的、楽観的な脳の回路をつくるのですが、一定量の遺伝子には、僅かな差異があります。つまり、ひとによって異なる部分があるということです。

たとえば、脳内で感情の安定を図る神経伝達物質「セロトニン」を運ぶ運搬遺伝子は、その長さによって働きが違ってきます。セロトニン運搬遺伝子の長い型を持つ人はポジティブな現象に反応しますが、短い型を持つ人はネガティブな現象に強く反応します。

セロトニン運搬遺伝子は、人によって短い型を持つ人と長い型を持つ人がいます。ある実験では、ネガティブな現象に強く反応する短い型のセロトニン運搬遺伝子を持った人の方が、うつ病の発症率が高いという仮説を立てました。

そして、3歳から26歳までの23年間、被験者を観察してわかった結果は、長い型、短い型でうつ病発症率の違いはないということでした。つまり、遺伝子だけではうつ病発症のリスクを見つけるのは不十分だということです。

しかし、興味深い事実が明らかとなりました。それは、両親の死、性的・身体的虐待など3つ以上の大きな悲劇を経験した場合、短い型のセロトニン運搬遺伝子を持つ人のうつ病の発症率が上昇したのに対し、長い型の遺伝子を持った人のうつ病の発症率は平均値だったのです。つまり、遺伝子と環境の相互作用によってうつ病発症のリスクが高まったのです。

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特定の遺伝子にリスクがあると考えない

ある実験で、セロトニン運搬遺伝子の長い型を持つ子どもと短い型を持つ子どもの幸福感と健全さの度合いを調べました。第3者によって子どもの環境を評価し、良い環境にある子どもと悪い環境にある子どもで調べた結果、リスク遺伝子と呼ばれるセロトニン運搬遺伝子の短い型をもった子どもであっても、良い環境の下では幸せで健全さの度合いが高かったということがわかりました。つまり、短い型の遺伝子がいつも悪い影響を及ぼすとは限らないということを示しています。環境次第で良くも悪くも作用することがわかったのです。

そこで、性格は変えられるかを考える時に重要な考え方が、特定の遺伝子にリスクがあるという考え方を捨てることです。上記の実験のように良い環境下では、良い結果を生むことがあるということです。

脳が成長するのは何歳まで?

これまで、脳が成長するのは7歳までで、それ以降は脳を変えることはできないと言われていました。しかし、それはここ10-15年の研究により完全に覆りました。脳はいままで思っていたよりも遙かに柔軟で、時間はかかり困難を伴うが脳の回路をシフトさせる(性格を変える)ことはできると考えられています。

幸せの”ふり”をすることで幸せに

ひとつの例をあげましょう。映画の撮影で、レオナルド・ディカプリオが強迫性障害者のハワード・ヒューズを演じた時のことです。ディカプリオは、強迫性障害について学び、1年間にわたる撮影で強迫性障害者のように振舞っていたところ、本当に強迫性障害を患ってしまったのです。役柄を演じることで、自分の脳を強迫性障害になるように訓練しているのと同じ効果が生まれてしまったのです。その後、精神科に通い強迫性障害者ではない振る舞いをすることで、ディカプリオは回復しました。

落ち込んでいても幸せに振る舞うことで幸せを感じる効果を発揮することがあります。毎日10分の運動ではアスリートのような強靭に肉体にはなりませんが、毎日続けることで健康的な体を手にすることができます。それと同じように長期間をかけて精神的な訓練を重ねることで、脳の回路を変えることができるのです。

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訓練で脳内物理構造は変えられる

ロンドンのタクシー運転手は、ロンドンの街をすべて記憶にとどめていることで有名です。それを可能にするのが、脳の中で空間記憶を司る海馬という部分です。実際に、普通の人とロンドンのタクシー運転手の海馬の大きさを脳内をスキャンして比較するとタクシー運転手の方が大きいことがわかりました。海馬はタクシー運転手になるための訓練の量に合わせて増加していたことがわかったのです。このことは、訓練で脳内の物理的構造を変えることができるということを意味しています。

脳内の物理的構造を変えたもうひとつの例をあげましょう。マインドフルネス瞑想は、自分の心や体の状態に気づく力を育む「こころのエクササイズ」と言われ、おもに瞑想という形をとるストレス対策として医療やビジネスの現場で実践されています。頭の中を空っぽにして何もしない時間を1日に10分ほど設け、8-9週間後に脳内を測定すると、脳内制御に関する領域が強化されていることがわかりました。この領域が強化されていると気を散らすものや雑音から距離を置く能力が身につきます。

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物事をどう捉えるかが大事

遺伝子は自分で変えることはできませんし、周りの環境についてもほとんど変えることができません。しかし、身の回りで起こる物事をどうとらえるかはあなた次第なのです。性格を変えることは可能です。容易ではありませんが、集中し続けもう少しポジティブな方向に自分を変えようとするなら、最終的にあなたの脳は応えてくれます。


参考:第1回「楽観脳と悲観脳」より

認知バイアス
ネガティブな人を変える方法

ロンドンに住んでいたある人の話です。彼は非常にネガティブですべては最低でニュースも悪いことばかりで、実際何も良いことは起きないと言っていました。

こういったときにどうやって状況を変えるかというとまず地下鉄のホームに座って幸せそうな顔を探します。たくさんの不幸そうな顔を無視して、微笑んだり、笑ったりしている、幸せそうな顔だけを探します。日常生活におけるこのような出来事に目を向けることによって否定的な出来事に心を奪われることなく、意図的に肯定的なものを見ることが可能になります。つまり、認知バイアスが重要だということです。起こったことをいかに解釈するか、一つの物事を他の物事よりもいかに良く記憶するか、こうしたことが全て私たちの性格が形づくられる上で非常に重要なのです。

数百年前にシェイクスピアが言った言葉ですが、”ものの善し悪しは考え方ひとつで決まる”という言葉があります。わたしたちには、良いことや悪いことが起こっていますが、それらをどう解釈するかが大切なのです。シェイクスピアは、心理学や脳科学でわかってきたことが、ずいぶん昔にわかっていたのです。

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posted by CYL at 09:00 | 心と脳の白熱教室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする