2015年08月15日

心と脳の白熱教室|第3回あなたの中のサイコパス

心と脳の白熱教室|あなたの中のサイコパス.jpg


心と脳の白熱教室
第3回あなたの中のサイコパス


本講義の第1回、第2回の講義を担当したオックスフォード大学のフォックス教授のパートナーであるケヴィン・ラットン博士は精神障害とされているサイコパスを専門としています。一般的にすぐに猟奇犯罪と結びつけられるサイコパスですが、恐怖心の欠如、冷静さ、集中力などその特性を多角的に検証していくとサイコパス性から多くの学ぶべき点が見えてくるといいます。

サイコパスとは
反社会的人格の一種を意味する心理学用語で精神病質者とも訳されます。その冷淡さ、無慈悲な特質は犯罪者だけでなく、誰しも持っているというのが、ダットン博士の主張です。実際にラットン博士の研究によると企業の重役や弁護士など社会的に成功している人たちにこそサイコパス性が高いことがわかっています。つまり、サイコパスとは、悪ではなく、ある種の特性は個人や社会にとってよい影響をもたらしうることを示します。

ワールドビジネスサテライト|サイコパス犯罪者ではない.jpg


サイコパス=犯罪者ではない
サイコパスを映画の世界で見てみましょう。善玉サイコパスの代表が、007シリーズに登場する英国のスパイ「ジェームズ・ボンド」です。冷淡で器用、優雅で残忍さの持ち主ですが、それは皆、女王陛下と祖国イギリスのためでもあります。

一方で、悪玉のサイコパスの代表は、映画「羊たちの沈黙」に登場する猟奇殺人犯の「ハンニバル・レクター」です。殺害した人の臓器を食べる悪名高い人物で、雄弁で邪悪、冷静という特質を備えています。

ワールドビジネスサテライト|サイコパス度が高い職業.jpg



サイコパス的特性と救命
サイコパスが実は救命の場面でも長けていると言ったら驚くことでしょう。一体どういうことなのか例を挙げましょう。
最初の救命の事例(事例1)です。列車が猛スピードで走ってきます。線路の上には5人の人が身動きが取れない状態でいます。幸運にもあなたは線路の軌道を変えるスイッチを見つけました。スイッチを入れれば、列車は5人がいる方向へは行きません。しかし、軌道を変えた先には身動きが取れない人が1人いて、その人が死んでしまうでしょう。ここで問題です。あなたはスイッチを入れますか?これは、トロッコのジレンマという哲学的設問です。この場合、多くの人はそれほど迷わずに、ベストな選択肢ではありませんが、5人のかわりに1人を殺すという選択肢を選びます。

8fc7865283afe24e33f58a177ed6a547_s.jpg


次の事例(事例2)は同じように列車がコントロールを失って列車が5人の方へ突っ込んでいきますが、今回あなたは線路の上の歩道橋にいて、目の前に巨漢の見知らぬ人が立っています。5人を助ける唯一の方法は、巨漢の人を線路の上に突き落とすことです。巨漢の人は確実に死にますが、列車の障害物となり5人の命を助けることができます。あなたはこの人を突き落としますか?

事例1と同じように命を5か1かで比較することには変わりありませんが、事例2の判断はかなり難しく感じることでしょう。それは、なぜでしょうか。それは一種の温度差の問題なのです。事例1は非個人的ジレンマと言われるものです。これらは”冷淡な共感”と呼び、合理的思考と関わっています。

事例2は個人的ジレンマと呼ばれるものです。これには感情領域である脳の扁桃体が関与し、”温情の共感”と呼ぶものです。つまり、他人の感情を自分のもののように感じることが関わってきます。

サイコパスの人は事例1の場合は、ほとんどの人と同じようにスイッチを切り替えて5人のかわりに1人を犠牲にしようとします。しかし、次が重要な点です。事例2の場合、通常の人と違ってサイコパスの人はジレンマをほとんど感じないのです。サイコパスは線路の上に巨漢を突き落とした方がよいという場面では、一瞬のためらいもなくそう行動します。

またこの違いには異なる神経的な違いが見られます。サイコパスと普通の人の脳の違いが、非個人的なジレンマにおいては同一のパターンを示します。しかし、より個人的な問題となると根本的に異なるのです。

わたしがあなたに2つのジレンマを与えてあなたの脳のスキャンを取ります。あなたがこれらのジレンマを解決する様子が写ることでしょう。つまり、思考が非個人的なものから個人的なものへと移行する瞬間、脳の感情領域である扁桃体とそれにかかわる脳回路がピンボールマシーンのように光るのが確認できます。しかし、サイコパスの脳ではどこも光ることはありません。非個人的ジレンマから個人的ジレンマへの切り替えは闇の中で行われるのです。


サイコパス|3つの結論
サイコパスの特性を録音装置に例えて、様々な組み合わせを調整できるつまみだとみなすと、3つの結論に辿りつきます。結論の1つ目は、サイコパスであることは、0か1か、白か黒かという問題ではなくむしろ身長や体重のようなものに近いのです。我々は皆一本の線上のどこかにいます。

結論の2つ目は、調整のつまみには絶対的な正しい設定は存在せず、むしろ自分が置かれる特定の状況に応じて変化するということです。

結論の3つ目は、つまみを自分の普段の平均値より少し上げる必要がある職種があるということです。そんな時は緻密にサイコパスの特性を整えることが求められます。もしあなたが自分の職業に必要な能力を持ち合わせていないとしても、ごり押しとはったりでのし上がっていくことは可能です。これは利口で悪質なサイコパスが実際に行っていることです。さらに、もしあなたが仕事に必要な能力を持っており、なおかつある種のサイコパス的特性を持ち合わせていれば、そういう特性を持っていない場合に比べて仕事の成果が上がるだろうということです。

ワールドビジネスサテライト|サイコパス3つの結論.jpg


何かを上手くするためには?
何かをうまくやろうとするためには二つのことが必要です。能力と同時にその能力を最大限に活用できる人格が求められます。たとえば、ある人に悪いニュースを伝える、あるいは難航しそうな電話をかけなければならないとします。先延ばしにするひとは、すぐに受話器を取って電話をかけるひとと比べて、実際にかなり多くの苦痛を経験します。なぜなら行動を予想して感じる苦痛は、実際の行動によって起こる苦痛よりもひどいからです。先延ばしにするひとは、行動に伴う苦痛だけでなく、想像を巡らせることで起こるあらゆる苦痛も経験しなければならないのです。

今度、もしやりたくないものに直面したら自分に問いかけてください。一体いつから自分の気持ちが乗らなければ何もできなくなってしまったのだろうと。つまり、感情と行動を切り離す、まさにサイコパスがしていることです。あなたのサイコパス度をやや高めることによって学べるものがあります。そうすることで少し自信がついたり成功に近づいたりするかもしれません。


ワールドビジネスサテライト|先延ばしを止める.jpg


posted by CYL at 12:08 | 心と脳の白熱教室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする