2015年08月13日

心と脳の白熱教室|第2回本当の楽観主義とは

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心と脳の白熱教室
第2回本当の楽観主義とは


前回の講義
心と脳の白熱教室|第1回楽観脳と悲観脳


イギリス・オックスフォード大学
エレーヌ・フォックス教授

フォックス教授の研究テーマは、楽観主義と悲観主義です。危機に直面して前向きに生きる人がいる一方で、過去を思い悩み続ける人もいます。教授は、その違いの原因を人の脳に見いだしました。最新の脳科学と認知心理学を掛け合わせ楽観と悲観の秘密を紐解いていきます。


本当の楽観主義とは
楽観主義とポジティブ思考はしばしば混同されます。ポジティブ思考は楽観主義の重要な要素ではありますが、唯一の要素ではないとされています。楽観主義の恩恵を受けるためには他の要素も必要となってきます。

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ポジティブな行動
これら4つの要素が揃うことで人が逆境に打ち勝ち、人が幸せになれる作用を心にもたらすと考えます。楽観主義ではどう考えるかよりも、どのような行動を取るかがより大切です。つまり一定レベルのポジティブな思考は重要ですが、実際にもっと重要なのはポジティブな行動であり、出かけてい行って実際に行動することが、楽観主義の重要な構成要素のひとつなのです。

根気と粘り強さ
もうひとつの重要な構成要素は粘り強さと根気です。これは挫折したときに、それを乗り越えて再び立ち上がるための脳の働きに関係があります。ポジティブ思考ではなく、粘り強さとより関係があるのです。

人生をコントロールしている感覚
もうひとつは、自分の人生をコントロールできるという感覚です。うつの人は自分の人生をコントロールできる感覚をまったく持っていないのに対して、楽観主義の人はコントロールできるという感覚が強い傾向があります。それが例え幻想であったとしても私たちを力づけてくれる力があり、とても有益なのです。

楽観主義=ポジティブ思考ではない
楽観主義が大切であることは多くのメディアで見聞きしますし、学術的にもそう言われています。しかし、最近の研究からそれらがポジティブ思考とはほとんど関係がなく、むしろポジティブな行動、根気、コントロール感覚と関係が深いものだということです。おそらく健康により深く関係する構成要素だと思います。

楽観主義と健康
アメリカの研究者たちは修道女たちの日記を見つけました。1920年代、30年代にアメリカのカトリック修道院に入った20歳前後の修道女です。当時は、綿密に日記を書く習慣があり、彼女たちも毎日日記を書いていたのです。研究者は楽観主義が健康に与える影響について調べるのにうってつけの資料だと気がついたのです。

修道女たちは、似通ったライフスタイルの生活を送っていました。修道院で生活し、大量のアルコールやタバコを吸うことなく日常では共通の規則に従っていました。楽観的で前向きな人と後ろ向きで悲観的な人に分け、30年にわたる医療記録と照らし合わせてみると驚くべきことがわかりました。

楽観的な日記を書いていた人の方が、生涯を通じ健康状態が良好であったことがわかったのです。そして、その平均寿命が10年も長かったこともわかりました。この結果は、楽観主義が健康に有益であることを物語っています。

楽観主義と打たれ強さ
フィンランドの研究で5000人程度を対象とした調査があります。大きな出来事の後の労働日数を楽観主義者と悲観主義者で比較した調査です。大きな出来事とは、配偶者の死や身内の死、自身の深刻な事故などです。大きな出来事がない場合は、楽観主義者と悲観主義者の間で欠勤日数の差はありませんでしたが、大きな出来事の後では、楽観主義者の方が欠勤日数が少なかったという結果が出ました。この結果から楽観主義が打たれ強さの根底にある事実が浮き彫りになりました。

前向きで楽観的な人は粘り強さを通じてチャンスが生まれるような立場へと自らを置く傾向があります。たとえば、ビジネスを立ち上げるのには大変な困難がありますが、すぐにこのビジネスはものにならないとあきらめるのか、失敗しても何度も挑戦することで成功へとたどり着くかは粘り強さと大きな関係があります。

楽観主義は単なるポジティブ思考ではない
ビジネスでの成功や健康といった楽観主義がもたらす多くの利点が、ポジティブ思考だけでなく他の要素に起因することは確かなことです。楽観主義を強化したいと望むなら、単にポジティブ思考を強化するだけでは十分ではありません。ポジティブな行動を増やし、自分の人生に対するコントロールを強化しつつ、もっと粘り強くなる必要があるのです。


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幸福度を高めるためには
これまでの研究から幸福や健康にとって本当に重要なことは安心感や愛情といった類のものであることが判明しています。とくに子どもであれば守られているという安心感や親との間の愛情関係が不可欠です。

また金銭面での安心感も必要です。最近の研究では金銭面の安心感は一定の範囲内では明らかに重要であるとされています。お腹を満たすことができなければ健康に大きな影響を与えます。興味深いことは余分な富は、さほど意味を持たないことです。最低限足りていれば良くて、それよりも大切なことは、人生において目的を持っていたり、好奇心旺盛でいることです。

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他人との比較を止める
イースターブルックの進行逆説というアメリカの著述家、グレッグ・イースターブルックがおよそ70年間のデータを分析し、社会の経済の規模、そして各家庭の相対的富裕度を解析し、それぞれの幸福度を研究したものがあります。その研究でわかったことは、ある水準までは富が増えるにつれ、国民の幸福度は上昇しますが、経済的豊かさがある水準を超えると個人の幸福度が下降するという矛盾でした。

大半の人が、いまよりも大きな家や車があれば幸せになれると考えます。収入が増えれば幸福につながると。ところがグレッグが発見したのは逆のことでした。その理由のひとつが他人との比較にあります。

たとえば、ピカピカの新車を買って帰宅するのはとても幸せなことです。ところが隣人が自分の車よりも明らかに高価な車を乗っているのを見たとたん、感じていた幸福感は消失することでしょう。

つまり、昇進や昇給など欲しいものを手に入れたとしても、自分よりも上の人と比較することで幸福感が薄れてしまうことがあるのです。自らを不幸せにする思考方法と言えます。

自分の幸福度を高めたいのなら、他人との比較を止めることです。大切なことは自分自身の人生であって、幸せになるために何が必要かを理解することです。自分を幸せにしてくれる要素があるにもかかわらず、他人との比較に明け暮れるあまり、それに気がつかず、幸福度が高まらないのです。

他人ではなく自分を幸せの基準にするには?
私たちは多くの時間を他人の夢や期待に添うことに費やしています。しかし、本当に大切なことは自分自身に対して正直でいることです。本当は何がしたいのだろうと自問することです。じっくりと考えればそれが何か分かるはずです。

具体的な人生の目標を持つ
幸福における極めて重要な要素は、友人や家族、良い社会的つながりを持っていること、そして具体的な目標を持っていることです。スポーツでいうならば、オリンピックの金メダルを目指すのでも、ハーフマラソンの完走でもよいでしょう。大事なのは人生に力を注ぐことです。これは多くの研究で実証されてきました。

つまり物質的な富だけでなく、真の目的を持つことです。各自にとって掛け替えのない何かでよいのです。そして厳しい訓練や手間がかかるとしても意義のあることならば、心から手に入れたいと思うなら、そこに集中することです。それこそが人生が順調だと思えるために本当に効果的なことなのです。

posted by CYL at 09:19 | 心と脳の白熱教室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする