2015年07月21日

オイコノミア|絶滅させない!経済学

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オイコノミア|絶滅させない!経済学


今回のテーマは、絶滅です。人の経済活動は多くの動物たちに影響を与えています。わたしたちはどのように動物たちとつきあっていくべきなのでしょうか、経済学の視点から考えてみましょう。

今回の講義をしてくれるのは、大阪大学特別教授の大竹文雄先生です。そして、ゲストは魚類学者で東京海洋大学名誉博士のさかなクンです。さかなクンは、2010年に絶滅したとされていたクニマスを再発見し、内閣総理大臣賞を受賞した経験をもつ言わずと知れたさかな博士です。

絶滅の恐れがあるウナギは取りすぎが原因

2014年、ニホンウナギは国際自然保護連合のレッドリスト(絶滅の危機にある動植物のリスト)に指定されました。レッドリストに指定されたからといってすぐに禁漁になるということはありませんが、今後国際的な世論によってウナギが食べられなくなることも考えられます。実際にニホンウナギの漁獲量を見てみると、およそ50年前、1960年には3387トンでしたが、2014年では113トンにまで落ち込んでいます。漁獲高の減少の大きな理由は、ウナギを捕りすぎたことにあります。

なぜ取りすぎてしまうのか??|共有地の悲劇

魚は海を自由に行き来する資源です。たとえば、農作物の場合は、収穫する農作物が誰の畑にあるかで所有者は明らかです。しかし、魚の場合は、海を自由に行き来するため、取られるその時まで誰のものか定かではありません。そのため、海洋資源の場合、放っておくと枯渇を招いてしまうことがあります。どういうことか実験で確かめてみましょう。

スーパーボールすくいの実験
縁日などで見かける金魚すくいならぬスーパーボールすくいで、スーパーボールを魚と見立てて実験を行います。ルールは下記の通り。

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実験の重要なポイントは10個以上残っていれば、1分ごとに補充されるということです。参加するのは大竹先生、又吉さん、さかなクンの3人です。スタートはまだみな慣れていないせいか、なかなかスーパーボールをすくうことができません。1分後、10個のスーパーボールが投入されます。さらに時間が経過し、残りの数を数えながらスーパーボールをすくっていきますが、すくうことに夢中になりすぎるあまりに取りすぎてしまい気がつくと、残りのスーパーボールの数が10個を切って9個となってしまいました。

ルールによってスーパーボールの補充は永遠にありませんので、残りの9個は早いものが勝ちです。すると大竹先生が鬼のごとく半分ヤケでほとんどのスーパーボールをとってしまいました。結果は、大竹先生17個、又吉さん7個、さかなクン6個となり、3分8秒ですべてのスーパーボールがなくなってしまいました。実験のような現象を経済学では、「共有地の悲劇」と呼ばれています。

共有地の悲劇とは、誰もが利用することができる共有地では乱獲が起こり、資源の枯渇を招いてしまうという経済学の法則です。海は人類の共有地で、魚という海洋資源はもともと競走を生みやすく、放っておくと過剰に取られやすいという性質があります。

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乱獲を防ぐ|個別割り当て方式
個別割り当て方式とは、決められた漁獲枠を漁師や漁業団体、漁船などに個別に配分する方式です。さらに譲渡可能割り当て方式では、自分の漁獲枠を使わずに他の人に売ることも可能です。

スーパーボールすくいで個別割り当て方式を採用してもう一度挑戦してみます。ひとり1分間に3個までと割り当てを決めます。その結果は下記の通りです。結果からわかるとおり、資源の枯渇を防ぐだけでなく、資源を増やすこともでき、さらに継続的に利用できるようになるのです。

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ただし、実際には個別割り当て(量)を誰が決めるのかという難しい問題がありますが、その問題を解決することができれば、漁業資源の確保に、個別割り当て方式は有効な手段となります。実際に、個別割り当て方式を取り入れたアメリカやカナダ、ノルウェーでは漁業資源が回復し、生産性が向上しているといいます。


絶滅危惧種のクロサイの保護

クロサイは、絶滅が危惧されている希少な動物です。野生のクロサイは世界でおよそ5000頭しかおらず、絶滅危惧種でも最も危険度の高いカテゴリーに指定されています。クロサイの減少の主な原因は密漁です。サイの角はアジアの一部ではガンやエイズに効くと信じられ漢方薬の材料として使われています。(ただし、科学的根拠はないと言われています。)

クロサイを守るための条約が裏目に
クロサイを守るために角の取引は30年以上前に禁止されていますが、密漁を止めるどころかさらなる悲劇をもたらしました。1977年、ワシントン条約によりクロサイの角の国際的な取引禁止が決定します。するとクロサイの希少価値が高まり、ブラックマーケットでクロサイの価格が高騰し、逆に密漁が進んでしまったのです。この場合、クロサイを守るための国際取引の禁止が逆効果となってしまいました。


南アフリカ政府が行ったインセンティブを使ったクロサイの密猟対策
インセンティブとは、人の意欲を引き出すため、外部から与えられる刺激や動機づけのことをいいます。経済学は、インセンティブを考える学問とも言われています。たとえば、人のやる気を引き出すために会社が給料を上げたり、福利厚生を充実させたり、子育て支援制度を設けたりしますが、それらはすべて社員にとってのインセンティブとなります。

クロサイを保護したくなるインセンティブ設計
南アフリカ政府がクロサイを守るために行ったことは、クロサイのいる土地の地主に対して、クロサイの狩猟権の販売を許可したのです。それを受けて地主は、お金持ちの趣味で猟を行うハンターに、クロサイを撃つことができる狩猟権を1500万円で販売しました。お金持ちの趣味ハンターは、滅多に撃つことでできないクロサイを撃つことができると大金をはたいて権利を買い取ります。地主は、密猟者からクロサイを守り繁殖をさせる方が得をするという金銭的なインセンティブが働くようになり、クロサイの保護や繁殖に設備投資を行い、密猟者からクロサイを守るようになるのです。その結果、南アフリカではクロサイの個体数が増えました。

ここでのポイントは、狩猟権に数の制限を設けたことです。つまり、限られた数のクロサイを犠牲にすることが、クロサイを絶滅から救う手段となっているのです。この南アフリカ政府の政策については賛否両論がありますが、クロサイの個体数が増えたことは事実なのです。


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posted by CYL at 17:12 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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