2015年07月10日

カンブリア宮殿|東急電鉄社長_野本弘文さん

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カンブリア宮殿
東京急行電鉄社長_野本弘文さん



知られざる東急の新戦略

私鉄の中でも抜群の知名度を誇る東急(東京急行電鉄)は、年間の利用客数は11億人とダントツで私鉄のトップに君臨しています。関東には私鉄が8社ありますが、東急は渋谷を拠点に東京南部や神奈川県に路線を延ばしています。沿線には豪邸が立ち高級住宅地「田園調布」やファッションの街として知られる「代官山」、スウィーツの激戦区「自由が丘」など、全国でも有名な駅が目白押しです。

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東急電鉄|鉄道ビジネスモデル確立
1922年に目黒蒲田電鉄として開業した東急電鉄は、野原を拓いて、沿線に宅地を造成し街をつくるという鉄道のビジネスモデルを確立してきました。「街づくりを行いながら、鉄道を延伸していった会社。いかにお客が便利になるか、そして鉄道を利用してもらうか、沿線の人口をいかに増やすかということで安定的な収益源をつくった」と野本さんは語ります。

東急の街づくりの象徴が、田園都市線の田園調布です。当時の最先端のイギリスの街づくりを導入し、駅を中心に放射状に街をつくりました。豊かな緑の中に豪邸が立ち並び、現在も日本有数の高級住宅街となっています。

そのノウハウで開発されたのが、1966年田園都市線です。横浜郊外の丘陵地に線路を敷き、宅地を造成し、住宅を建て街をつくりました。その典型が「たまプラーザ」です。駅の周りに商業施設があり、その周りに住宅を配置しています。80年代、ドラマの舞台となった街には暮らしやすさの工夫が施されています。たとえば、歩道を広く設計し、安全と快適さを提供しています。また、住宅地と商業地を分離することで、住宅地に店を置かない静かな街づくりを実現しました。

暮らしやすさの工夫
・歩道を広く設計(安全、快適)
・住宅地と商業地を分離(静か)



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新しい街づくり|世代の循環

街ができて30年が経過した「たまプラーザ」には問題がありました。それは、もともと丘陵地を切り開いて作ったため、坂道が多く、年齢を重ねた住民にとって住みにくい街になっていました。”これからの開発は”出来上がったものの再生”が主となる。質を高める開発”と野本さんが語る通り、たまプラーザでは新しい街づくりがはじまっていました。

駅前|高齢者向けマンション
そのひとつが、駅前の高齢者向けのマンションの建設でした。それにより、坂が多い地域の一戸建てに暮らしていた高齢者の住み替えが起こりました。高齢者マンションの室内は段差がないバリアフリー構造となっています。また、駅までの道のりは坂や階段のない平坦な通路で駅に直結しています。駅までに道のりの途中には、クリニックやデイサービスという高齢者の利用頻度が高い施設が備わっています。さらに、料理、買い物代行、マッサージ、介護タクシー、話し相手など43種類のサービスが受けらるようになっています。

空き家|子育て世代向けリフォーム
高齢者が駅前のマンションに住み替えたことで空き家となる一軒家は、子育て世代向けにリフォームされ、若い世代を利用されています。野本社長は「街自体が住民の年齢と共に年をとるのではなく、いろいろな世代が循環をしながら成長し続けることが大事」と語ります。



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人口減少対策|街そのものの魅力をあげる

好調を続ける東急ですが、沿線の人口は2020年をピークに減少すると予測しています。人口減少に向けて、東急は生き残りをかけて新戦略を打ち出しました。そのキーワードは”ここでしか体験できない”です。

二子玉川|ここにしかない店
二子玉川ライズは、今年駅前にオープンした東急の商業施設です。そこには”ここにしかない店”が2つあります。

マヨルカ
マヨルカはスペイン王室御用達のデリカデッセンです。日本初上陸で、スペインの生ハムを使ったサンドイッチやトマトソースを使った魚の炭火焼といったスペイン風の様々な惣菜が並びます。

蔦屋家電 第一号店
本や雑誌が12万冊置かれる横には家電が売られています。ここは本と家電が融合した世界初のお店です。

職住近接
二子玉川はこれまで、住む街、ショッピングをする街でしたが、そこに”働く”という要素を加えるためにオフィスビルを新しく開発し、「住んでよし、働いてよし、訪れてよし」の3拍子揃った街づくりを目指しています。そんな新オフィスビルには、楽天本社の移転が決まっており、約1万人の従業員が街にやってくることが予定されています。しかし、東急の本当の狙いは、職場のすぐ近くで暮らすという「職住近接」です。働く人が東急沿線に引っ越してもらうことを目指しています。


オフィスが付加価値を
増大させる仕組みづくり

渋谷の大家と言われる東急は、いま渋谷で大規模な再開発に着手しています。渋谷駅の東側では、建設費577億円、工事期間17年をかけて巨大地下街の建設にむけた100年に1度と言われる大工事が進んでいます。地上では、JRやメトロを手を組んで渋谷をそっくり作り変える計画が進んでいます。

東急ではいわゆる”箱物”をつくり変えるだけではなく、新たなビジネスの種を蒔き、街の表情を変えようという取り組みを進めています。渋谷をITの街にしようとITベンチャー・クリエーターの交流会を開催し、渋谷に集まる会社が街に付加価値を増大させる仕組みづくり行っています。


野本社長の経歴

1971年 東急電鉄入社
1972年 厚木の宅地開発を担当
1988年 東急不動産出向
1991年 本社のメディア事業を担当
2004年 ケーブルテレビ子会社社長就任
2011年 東急電鉄社長就任

転機となったのが、ケーブルテレビ子会社の社長就任でした。社長就任当時、会社は6億5千万円の赤字を抱えたお荷物的存在でした。その原因は、電車は黙っていても客が乗ってくれるという鉄道会社の体質が子会社にも染み付いていることでした。会社では”待ちの営業”を行っていました。野本さんは、自らの考えを浸透させるために、400人の社員全員と1年をかけて食事をし、改革に取り組みました。その結果、3年で赤字を解消し、子会社を再建することに成功しました。


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posted by CYL at 13:27 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする