2015年07月06日

NHKスペシャル|生命大躍進第3集”知性誕生の謎”

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NHKスペシャル|生命大躍進”知性誕生の謎”


第3集
ついに”知性”が生まれた

「考える」という私たちが持つ高度な能力のめばえは、すでに恐竜時代にはじまっていました。なんと人間のように考え、罠をしかけることまでできたに違いないという脳を極度に進化させた恐竜が見つかったのです。

私たちの祖先は、恐竜が支配していた時代に、思いがけない偶然によって突如新しい脳を手に入れたことがわかってきました。恐竜とはまったく異なる方法で、知性へと繋がる脳の大躍進を成し遂げたのです。

それらのことは、最新のDNA研究によって明らかになりました。なぜ私たち人間だけが高度な知性を持っているのか、そのヒントは私たちよりも巨大な脳を持っていたにもかかわらず絶滅してしまったネアンデルタール人にありました。最新のDNA技術によって、ネアンデルタール人の化石からそのDNAの完全復元に成功したのです。そこからわかったのは、たった1文字のDNAの書き換えによってもたらされたドラマでした。

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巨大な脳を持った恐竜|トロオドン
人類誕生より遙か前に巨大な脳を獲得し、考えるようになった恐竜がいたという学説があります。その恐竜の化石が見つかったのは、カナダのアルバータ州立恐竜公園です。3万個を超える恐竜の化石が見つかっていることから、世界遺産に登録されています。

考える恐竜「トロオドン」の化石を分析したのがカリフォルニア州立大学のデール・ラッセル博士です。ラッセルさんは、10年をかけてトロオドンの化石を集め全身を再現することに成功しました。

トロオドンは背丈が1.2mほどの小さな恐竜でした。際だって大きな目が正面に向かってついており、ものが立体的に見えるように視覚が発達していました。さらに恐竜としては珍しく指が互いに向かい合っており、起用にものをつかめた可能性があります。そして、目や手を巧みに操る発達した脳がトロオドンの最大の武器でした。脳のサイズは恐竜の中では飛び抜けて大きなものでした。

ところがある日、直径10mほどの隕石が地球に衝突しあらゆる恐竜が絶滅してしまいました。恐竜たちの間で芽生えはじめていた知性もこの事件によって完全に消滅してしまいました。

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新たな脳|大脳新皮質
私たち人間が持つ高い知性は、およそ2億年前に私たちの祖先が獲得した新しい脳「大脳新皮質」によって支えられています。

恐竜が絶滅するより遙か昔のおよそ2億年前、私たちの祖先は、新しい脳「大脳新皮質」を持つことでこれまでにない新たな能力を授かっていました。それはいろいろな感覚をまとめる能力です。

たとえば、恐ろしい恐竜の姿が見えてきたとき、それが視覚として脳に伝えられます。さらに地面が振動してひげや毛が揺れると触覚として脳に伝えられ、だんだん大きくなる足音は聴覚として脳に伝えられます。視覚、聴覚、触覚などの情報を大脳新皮質に送ることで何がどこからやってくるのかを総合的に判断ができるようになったのです。こうして感覚が研ぎ澄まされたことで、私たちの祖先は夜の世界へと進出していきました。夜は恐竜たちの活動が減る安全な時間でした。

どのようにつくられたのか
どのように大脳新皮質を手に入れたのか、その謎に迫るのは理化学研究所の花嶋かりなさんです。ほ乳類の脳ができる仕組みを調べています。

脳の細胞がつくられるには、2つの遺伝子がかかわっています。その2つの遺伝子とはいわばアクセル遺伝子とブレーキ遺伝子です。アクセル遺伝子は、脳の細胞に増殖せよと命令物質を出します。一方のブレーキ遺伝子は、増殖するなという命令物質を出します。たとえば恐竜などの”は虫類”では脳ができるときに、アクセルとブレーキが同時に働き、それぞれの命令物質を打ち消し合います。そのため、細胞の増殖が穏やかに保たれ、脳はそれほど大きくなりません。

ところが私たち”ほ乳類”では、脳ができるときになぜか一時的にブレーキ遺伝子が故障し、働かなくなります。するとアクセルだけが踏み続けられ、脳の細胞は暴走的に増殖し続けます。こうしてできたのが大脳新皮質です。調べてみるとブレーキ遺伝子の故障が起こるのは、私たち”ほ乳類”だけだということがわかっています。

遺伝子故障の原因は?
それはなぜか、花嶋さんがその原因を突き止めました。ほ乳類のDNAではブレーキ遺伝子のすぐ脇で僅かな変化が起きていました。このことで分子レベルでDNAの形が微妙に変わり、細胞内をさまようあるタンパク質がくっつくようになりました。するとタンパク質(FOXG1タンパク質)が蓋となって、ブレーキ遺伝子は命令物質を出すことができなくなります。これがブレーキの故障でした。DNAに起きたわずかな変化が、細胞の増殖を暴走させ、大脳新皮質を生み出したのです。大脳新皮質は進化の過程で一層巨大化し、その後ほ乳類を大繁栄させ、やがて私たちの知性を生み出す元となるのです。

突然変異|ほとんどハズレ
DNAは突然変異でしばしば変化しています。しかし、そのほとんどは生きる上で役に立たないハズレ、ときには命の危険に繋がることもあります。ごくたまに奇跡が起こるのです。いまわかっている限りでは、私たちの脳がこれほど一気に巨大化するような事件は、生命40億年の歴史の中で1回しか起こっていない奇跡です。


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人間ならでは知性|言葉
4万2千年前、私たちホモ・サピエンスとは異なる別の人種「ネアンデルタール人」が存在していました。ネアンデルタール人は際だって巨大な脳を持っていました。それはホモ・サピエンスよりも1割以上大きな脳でした。その上、ネアンデルタール人は体格にも優れ、並外れた力を持っていました。

腕力はホモ・サピエンスの倍もあったと推定されています。ネアンデルタール人は当時最強のハンターでした。しかし、4万年前ネアンデルタール人は絶滅してしまいました。

石器から見る違い
ネアンデルタール人は、数万年もの間、同じタイプの石器をつくり続けました。それを狩りから調理とあらゆる用途の使っていました。一方、私たちホモ・サピエンスの石器を見ると用途ごとに大きさや形を変えた石器をつくっていたのです。そこからホモ・サピエンスは高度のコミュニケーション能力があったと推定できます。言葉がなければどんなに優れた技術でも一代限りで終わってしまうからです。言葉を使って技術が伝えられ、さらに発展させていったと考えられます。

化石からDNAの復元
ネアンデルタール人よりも高度な言葉を使っていたと言われるホモ・サピエンス。最新研究からそこに遺伝子が深く関わっていることがわかってきました。言葉がうまく話せないのはFOXP2遺伝子に変化が起きていることが原因であるとわかったのです。

ネアンデルタール人の化石からDNAを取り出し、ばらばらになったDNAの破片をコンピュータプログラムでつなぎ合わせることで、絶滅したネアンデルタール人のDNAを復元することに成功しました。

復元したDNAを使ってネアンデルタール人とホモ・サピエンスの言葉に関わるFOXP2遺伝を比べてみると、意外なことの主要部分に違いはありませんでした。そこでFOXP2遺伝子の周辺まで分析の対象を広げ、40万文字のDNAを徹底的に洗い直しました。その結果、見えてきたのは、ほんの”1文字”の重要な違いを発見します。ネアンデルタール人では”A”の部分が、私たちホモ・サピエンスでは”T”に変化していました。

Tに変化したことであるタンパク質がそこにくっつくようになりました。その結果、FOXP2遺伝子の一部に蓋がされ、作られる物質の量が減ったことで何かが変わりFOXP2に影響を与え言葉が生まれたといいます。いまわかっているのはここまです。

言葉を使って生き延びた
厳しい氷河期、私たちの祖先は言葉を武器にして生き残りを賭けました。言葉を使うことでたくさんの人が協力し合い、大がかりな狩りができたのです。さらに言葉は、知識を世代を超えて引き継ぎ発展させることです。人間以外の生き物ではどんなに素晴らしい技能を身につけても一代限りで子には伝わりません。ところが人間は言葉を使って知識を子に伝え、子がそれを発展させ、孫に引き継ぐことができるようになったのです。

現代科学では、1文字の遺伝子の書き換えだけで、私たちが言葉を持ったことのすべてを説明できるわけではありませんが、僅かな違いで大きな変化が起こるのが生命40億年の神秘なのです。


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posted by CYL at 17:40 | NHKスペシャル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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