2015年07月03日

オイコノミア|”障害”を見つめ直そう

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オイコノミア|”障害”を見つめ直そう


経済学の視点から「障害」を見つめ直す
お笑い芸人の又吉さんは、東京大学の松井教授に連れられてある施設にやってきました。金町学園は、聴覚障害のある子どもたちが親元を離れて暮らす社会福祉施設です。松井先生によると金町学園に、障害について経済学から考えるヒントがあるというのですが、それは一体なんでしょうか。

障害は社会がつくりだす
金町学園で夕食を一緒にとった又吉さんは手話が分からないため、身振り手振りを交えて話しますが、なかなか会話が盛り上がりません。そして逆にまわりに人達が盛り上がる話題についていくことができませんでした。この場面では手話ができる人は多数派で、手話ができない又吉さんは少数派ということになります。ある意味で金町学園では又吉さんが”障害者”であったのです。障害は個人が持っていると考えかがちですが、多数派、少数派という社会が作り出しているものとも言えます。

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ゲスト|デザイナー今中博之さん
ゲストの今中さんは、デザイン会社などでショールームなどのデザインを手がけてきました。現在は、知的障害者のために社会福祉施設を運営しています。今中さんには、生まれつき軟骨の形成不全の障害「偽性アコンドロプラージア」という障害があります。その発症は100万人に1人という圧倒的な少数派です。

経済学の効率性
多数派だけを考えて社会をデザインすると効率性が悪くなるのではないか心配する又吉さんですが、松井先生は、経済学の効率性は誤解をされやすいと解説をしてくれました。

たとえば、障害者と健常者が、3個のアイスクリームを取りに行く状況を考えてみます。ただし、アイスクリームは遠く離れた場所にあり、障害者がたどり着くころにはアイスは溶けて半分になっていると仮定します。

Aの状況
健常者が3個のアイスと取り、障害者は一つも取ることができません。

Bの状況
健常者が1個のアイスを取りしますが、障害者がたどり着くころには2個のアイスクリームは半分になってしまい実質1個分のアイスを手にします。

AとB、二つの状況ではどちらが効率的ということができるでしょうか?

経済学的には、どちらの状況も効率的だということになります。それにはパレート効率が関係しています。パレート効率とは、経済学の資源配分の概念で、誰かの満足度を下げることなしに他の誰かの満足度をそれ以上上げられない状況のことを経済学では”効率的”といいます。

あらためてAの状況とBの状況を見てみます。Aの場合は、障害者の満足度を上げるために、健常者のアイスを1個減らした場合、健常者の満足度を下げざるを得ません。よっていまの分け方が効率的ということになります。一方のBの場合、健常者の満足度を上げようとすると、障害者の満足度を下げざるとえません。結局いまの分け方が効率的となるのです。つまり、Aの場合もBの場合も両方とも効率的ということになるのです。比較して優劣をつけることはできないのです。

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経済学の大前提|自立性
経済学では、自由に行動を選択できる自立した個人を前提に様々な理論を組み立てています。しかし、障害というテーマを扱うとき、経済学ではこの大前提をも問い直します。

又吉さんは、松井先生の紹介で障害と自立について問い続ける研究者の熊谷晋一郎さんを訪ねました。熊谷さんは出生時のトラブルにより脳性麻痺になりました。当事者として研究に取り組む”当事者研究”に取り組んでいます。その中で、自立という言葉の中に新たな意味を見いだしました。

自立の反対語について問うと多くの人は”依存”と考えます。しかし、本当にそうだだろうかと熊谷さんは考えました。東日本大震災に際に、障害者も健常者も逃げるという目的は一緒でも”依存できるものの数”に違いがあったことに気がつかされたと熊谷さんは語ります。健常者には、避難方法として、エレベータや非常階段、はしごなどがありますが、車いすの障害者の場合は、エレベータしかないといった具合です。つまり障害者の自立のためには、依存できるものを社会に増やしていくことが自立への方向だと熊谷さんはいいます。

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社会福祉施設|アトリエインカーブ
丹念に白いペンで描かれた絵が黒いキャンバスを埋め尽くしています。作者は知的障害のあるアーティストの寺尾勝広さんです。寺尾さんのモチーフは一貫して”鉄”です。自らの作品を”鉄骨の図面”と呼びます。海外からも高い評価を受けている寺尾さんの作品ですが、そのきっかけをつくったのがゲストの今中さんでした。

今中さんが2002年に立ち上げたアトリエインカーブは、知的障害がある人たちが、絵画や立体作品などを制作する社会福祉施設です。現在26名のアーティストが在籍し、今中さんは障害者のアートという枠組みを超えて作品そのものの価値が評価される市場に送り出してきました。

アトリエインカーブでは、経費を除いた収益をアーティストに還元します。一方で絵画を元にしたグッズを販売することで得る収益を均等に分配し、生活の基盤をつくるという福祉的な働きも果たしています。


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posted by CYL at 18:18 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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