2015年06月27日

カンブリア宮殿|イーグルバス社長 谷島賢さん(61)赤字路線バス復活劇

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カンブリア宮殿|
イーグルバス社長 谷島賢さん(61)


赤字路線バス復活劇
愛される超地域密着戦略



小江戸川越|人気観光スポット
埼玉県の川越は小江戸と呼ばれる蔵造りの町並みが美しい観光名所です。東京から電車で1時間ほどでタイムスリップしたような気分が味わえます。食べ歩きも充実して、家族みんなで楽しめると年間650万人の観光客が訪れます。

川越の町並み


川越に来たらぜひ味わってみたいもの、それがうなぎです。かつて川越の周りの川でたくさんのうなぎが獲れました。うなぎに特産品の醤油が合わさって、名物になったといいます。創業250年の老舗で使われるタレは、継ぎ足しながら受け継がれてきた秘伝のタレとなっています。全国でも有数のうなぎの産地である静岡県の浜名湖からやってきたというお客も納得の味だといいます。

川越名物|ボンネットバス
もうひとつ川越の名物となっているのが、レトロなボンネットバスです。観光客の中にはボンネットバスを目当てにやってくる人もいます。そんな人気のボンネットバスですが、実は観光客のためのバスではなく、街のひとの足となっている路線バスなのです。川越の観光スポットをメインに、2つのルートを走っています。1日乗車券を購入すれば500円で乗り降り自由にバスを利用できます。

観光名所のひとつ「川越城本丸御殿」のバスが近づくと、運転手がガイドをはじめました。そして突然「通りゃんせ、通りゃんせ、ここはどこの細道じゃ〜」と運転手が歌を歌いました。実は川越城の裏にある三芳野神社の参道が歌詞の中にある”細道”を指しているといいます。

運転手が観光名所を案内してくれて、車内に笑い声が溢れる路線バスは滅多にありません。そんな客を楽しませる路線バス「ボンネットバス」を運行している会社が、イーグルバスです。



イーグルバス社長|谷島賢さん(61)
イーグルバスの本社は川越市にある小さな三階建ての建物です。イーグルバスは、社員193名、車両111台、売上高9億7000万円の中堅規模のバス会社です。朝の朝礼では、日課の発声練習を行います。しっかり声を出すことが接客の基本だと考えているためです。そんなユニークなバス会社を率いるのが社長の谷島賢さん(61)です。

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免許取得|10年間の実績
苦境にあるバス業界において谷島さんは独自の手法で客足を伸ばしてきました。谷島さんは大学卒業後、大手旅行代理店に就職しました。1980年、地元川越で小さな旅行会社を経営していた父とともにイーグルバスを設立しました。当時盛況であった観光バスに乗り出したいと考えていました。しかし、簡単にはいきませんでした。観光バスに必要な免許は、実績がないと取ることができなかったのです。そこでまず許可制の送迎バスで事業をはじめました。

最初に取り組んだ送迎バスには、車椅子用のリフトが設置されていました。イーグルバスは、養護学校の送迎により10年の実績を積み、1990年に観光バス事業の免許を取得しました。その後、路線バス事業へと進出を果たしたのです。

その歴史の中でヒットしたのが、いまや川越の名物となってボンネットバスの小江戸巡回バスでした。イーグルバスは、価格ではなく顧客満足で業績を伸ばしています。

もうひとつの顔|観光協会理事
毎月18日はきものの日
谷島さんにはもうひとつの顔があります。それは観光協会の理事を務めて、川越に観光客を呼ぶ活動をしています。たとえば、毎月18日に行われている「川越きものの日」は、今年で5年目を迎え、川越の名物となっています。きものを着ているとお得なサービスがたくさん用意されています。その特典は、ドリンク注文でデザートのサービスが受けられたり、小江戸巡回バスの1日乗車券が通常500円のところ350円に値引きされます。また、自宅からきものを着てこなくてもレンタルショップで、着付け台込みで1日2160円からきものが利用できます。

小江戸川越ライトアップ
蔵の街のライトアップ「小江戸川越ライトアップ」をはじめました。その目玉はプロジェクションマッピングです。毎年秋に3日間開催しており、3万人が訪れて大盛況を博しています。このイベントを一緒に立ち上げたのは、川越の若手経営者たちです。

海外からのお客|英会話
外国人観光客のために、運転手さんが英会話の自主トレを休憩時間などに行っていました。教材はイーグルバスオリジナルの英語接客用教材です。

さまざまな取り組みによりイーグルバスの小江戸巡回バスの利用者数は1.5倍に増加し、商店街を訪れる客も増えています。「地元と一緒に元気になる」というのが谷島さんのポリシーだといいます。「街が盛り上がってお客さんが来てくれば、バスに乗ってもらえる。最初に街づくりをするのが順番から考えると正しいと思う」と谷島さんは語ります。

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路線バス業界の実態(2012年度)
事業者数約2000社のうち、赤字の事業者が72%を占めています。また路線バスの廃線は、年間約900kmにのぼります。高度成長期の頃は、通勤通学の足としてバスが大きな役割を果たしてきましたが、通勤通学の利用者のリタイアや、少子化による利用者の減少が現在の状態を表しています。

公共交通路線を担うバス会社には、”公共の顔”と”民間の顔”があるといいます。民間の顔から赤字路線を見ると心揺れ動くが、廃線にあると困る人が必ず出てきます。日本のバス会社の多くは赤字を抱えながら撤退を踏みどど待っているという状況にあると谷島さんは語ります。

バス会社の品質とは
安全と顧客満足という2つの要素からなっています。安全は事故ゼロというもの、一方の顧客満足は際限なく拡大できる余地があると谷島さんは言います。最低限としての安全の品質と顧客満足、それら合わせてバス会社の品質と谷島さんは考えています。

また谷島さんは、地域が良くならなければ企業は絶対に成長できないと考えています。「シェアを争うのではなく企業同士が力を合わせていく。そこで地域が良くなれば、企業も生かされる。「地域に生かされる」という発想の転換が必要」といいます。

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赤字路線バス復活劇〜埼玉県日高市〜

埼玉県日高市は、川越市の隣に位置する人口5万人のベッドタウンです。ここでもイーグルバスは路線バスを走らせていますが、9年前に大手バス会社が撤退し、困った自治体がイーグルバスに引き継ぎを依頼してきた路線でした。

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改革1|データ収集による見える化
イーグルバスの車庫が川越市と日高市の境にあることで、日高市に交通空白の地にしないための赤字路線を引き受けました。しかし、その決断が甘かったことをのちに思い知りました。初年度の赤字は2000万円にものぼりました。赤字の原因を探るため、谷島さんはバス業界初となる乗降者数を調べるための赤外線センサーと位置を測定するGPSをバスに取り付けました。

バスが何時のどの停留所に着いたか、そこで何人の乗客が乗り降りしたかというバスの中の「見える化」を実現しました。集めたデータをもとに谷島さんは改革に取り組みました。

改革2|運行ルート変更
データは様々なことを教えてくれました。そのひとつが埼玉県飯能市にある飯能靖和病院へのアクセスの問題でした。病院から歩いて5分離れているイーグルバスの停留所の利用客がなぜかあるときから増加しました。その理由を調べると病院前に停留所をもつ他のバス会社が運行便数を減らしていたことがわかりました。もともと1日3便あったバスが、土日祝日のみ1便に変更されていました。そこで谷島さんは、運行ルートを変更してバス停を病院の前に移動したのです。

改革3|ダイヤ改正
さらにデータからダイヤの遅れの原因が判明しました。ポイントは、日帰り温泉施設「宮沢湖温泉 喜楽里 別邸」の停留所にありました。日帰り温泉施設は、露天風呂が楽しめ、食事も充実していることから観光の人気のスポットとなっています。多くのお客が訪れる観光シーズンには、乗客の乗り降りに時間がかかることがバスの遅れの原因となっていることが判明しました。そこで谷島さんは、ダイヤ全体を見直し、停車時間に余裕を持たせることで遅延を解消したのです。これで時間通りにやってくる便利なバスになりました。その結果、月間利用者は3000人も増加しました。



赤字路線バス復活劇〜埼玉県ときがわ町〜

そんな谷島さんの手腕を頼りにしたのが、埼玉県のときがわ町です。鉄道の駅は1つしかなく、住民の足は町営バスが頼りでした。しかし、2時間に1便しかないために不便で利用客が減少し、町の財政負担となっていました。

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改革1|中継ポイント設置で便数を増やす
2007年、ときがわ町の路線バスをイーグルバスが引き継ぎました。谷島さんは、「便利になれば客は増える」と、過疎の町であえて便数を増やしました。谷島さんは町の中心に、バスの中継ポイントをつくりました。そうすることで集落と駅をつなぐバスを1時間に1便走らせることが可能となりました。

改革2|デマンドバス
さらに谷島さんはバス停から遠い町民に気を配りました。85歳の女性は、最寄りのバス停まで15分かかるため、以前はできるだけ外出を控えていました。しかし、谷島さんがはじめた”デマンドバス”というサービスで便利になったといいます。

デマンドバスとは、予約をすると臨時のバス停まで迎えに来てくれるサービスです。料金はバス料金と同じで、乗り継ぎがしやすいように中継ポイントまで運んでくれます。こうした取り組みでバスの利用客は1.7倍に増加しました。



十勝バス|路線バスの旅

地方のバス業界はどこも厳しい状況ですが、生き残りをかけた取り組みが各地のバス会社で始まっています。従業員225名の北海道十勝の十勝バスは、ユニークなバスツアーで注目を集めています。バスツアーは、通常観光バスを使用しますが、十勝バスでは路線バスをつかった日帰りプランに力を入れています。

日帰りプランでは、路線バスの往復運賃と目的地の入場料がセットになっています。路線バスのため、降りるのは停留所です。目的地までは徒歩で歩いて向かいます。母と娘の親子で利用したお客は、歩くのがいいといいます。親子が向かったのは、北海道の四季織織の花が楽しめる人気の庭園スポット「六花の森」です。

バスと入場料で通常2280円のところ、十勝バスのパックを利用すると1600円で楽しめるのです。ほかにも様々なパックプランがあります。たとえば、ばんえい競馬のパックは、500円と激安のワンコインで利用できます。しかも200円の買い物券がついてくる特典付きです。幕別温泉バスパックは、通常1990円がほぼ半額の1000円で利用できます。バス会社だけではなく、お客、施設のみんなが嬉しい取り組みです。



新たな取り組み|埼玉県東秩父村

埼玉県唯一の村、人口3000人の東秩父村で谷島さんは新しい試みをはじめていました。村への入り口となる東武東上線の小川町駅にあるイーグルバスのバス停は、休日には乗り切れないほどのお客がいました。賑わいの理由は、ハイキング客でした。東秩父村には、ハイキング初心者に人気のコース「外秩父七峰縦走ハイキングコース」があるのです。30分も山道を登れば山頂に到着です。山頂からの眺めは絶景で、天気のよい日には遠く八ヶ岳連峰まで見渡すことができます。

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イーグルバスの東秩父路線の沿線には、さまざまな観光スポットがあります。そのひとつ「和紙の里」に谷島さんは目をつけました。実は、東秩父村は1300年の歴史を誇る和紙づくりの里です。地元でつくられた「細川紙」は、2014年ユネスコ無形文化遺産に登録されました。その影響もあり、和紙の里は和紙づくりができることともあって観光スポットとして人気急上昇中です。

中継ポイント|利便性UP
谷島さんは2年前から和紙の里にバスの中継ポイントをつくり、周辺の観光地への利便性を高めようとしています。さらに、和紙の里に郵便局やコンビニ、レストランなどをつくることで観光客だけではなく、地域住民も便利になる施設を目指しています。これは、村と共同で進める一大プロジェクトとなっています。

過疎の町にこそ観光資源
谷島さんは「過疎の町にこそ観光資源」があるといいます。いまでは定年退職しても元気なひとがたくさんいます。多くのひとが健康ために「山歩き」をするのです。するとそこに足となるバスの需要が増えます。そのため、平日は利用客の少ない路線バスが、休日になるといっぱいになるのです。つまり、観光と路線バスを組み合わせれば「バスの収支が維持できる」ことになるのです。


次回
創業111年銀座伊東屋
5代目社長 伊藤明さん



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posted by CYL at 11:44 | カンブリア宮殿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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