2015年06月08日

「NHKスペシャル」生命大躍進|第2集「こうして”母の愛”が生まれた」1


「NHKスペシャル」生命大躍進


いままで生命の進化は、少しづつ変化しながら進化してきたと長らく考えられてきました。しかし、それだけでは説明できない事象が存在していました。その謎を解き明かす鍵は私たちの姿形を定める情報であるDNAにありました。DNAの激変が進化の大ジャンプを引き起こしていたのです。

第2集(全3集)
「こうして”母の愛”が生まれた」


最新技術であらゆる生物のDNA解析が可能になったことで、人間の愛情深い子育てが意外なきっかけで始まったことがわかったのです。もともとは卵を産んだらそれきりだった私達の祖先ですが、あるときDNAが劇的に変化して子育てをするようになりました。そんな劇的な変化の影に地球規模の天変地異と突如広がったウィルスが関係していました。


大躍進その1 母乳誕生


母乳の進化を研究するスミソニアン環境研究所のオラフ・オフテダル博士は、なぜ母親が愛情深く子育てをするようになったのか、そのきっかけは母乳にあると考えています。母乳による母と子の密着が愛情に繋がったというのです。

はじめは卵を守る汗だった
子育てを始めた私達の祖先は「キノドン」だと考えられています。キノドンの母親が子どもにぴたりと寄り添った状態の化石が発見されたからです。一体どんな子育てをしていたのでしょうか。

キノドンの子育てを現代に伝える生きた化石がオーストラリア・タスマニア島にいるハリモグラです。地球上に生きる生物の中でキノドンに一番近いとされる原始的なほ乳類です。ほ乳類でありながら卵を産むハリモグラは、皮膚から白い液体を出します。原始的な母乳は乳首はなく皮膚の表面から出ています。ハリモグラは卵がかってから約200日間にわたり子どもと密着して母乳を与え続けます。

実は、ハリモグラの白い液体は卵がかえる前からわき出して卵を濡らしています。成分を
分析した結果、2つの物資が見つかりました。それは、αラクトアルブミンという甘い栄養分をつくるタンパク質、いわば母乳の素と、もう一つがリゾチームという殺菌力をもつタンパク質です。ハリモグラはこれらを含む母乳で卵を雑菌が防いでいると考えられています。2つのタンパク質はともに複雑な形をしていますがほとんど同じ形をしているのです。それはなぜなのでしょうか?

母乳誕生の瞬間へタイムトリップ
今から約3億年前、恐竜が登場するより遙か昔、トカゲのようなディメトロドンは、太陽の熱を背中に突き出た、まるで船の帆のような体の一部で集めていました。体温を高めて活発に動きまわるためです。

この頃、ほ乳類が生物界の王者でした。しかし、子育ては容易ではありませんでした。薄い膜で覆われた卵を産み落としますが、雑菌が入り込むと卵は死んでしまいました。そのため殺菌物質リゾチームを含んだ汗のような液体で卵を濡らして雑菌の繁殖を防いでいました。私達の祖先が行った子を守るための営みの第一歩です。

そのとき、殺菌物質リゾチームをつくるDNAに変化が起きました。遺伝子から作られるタンパク質の形がわずかに変わりました。こうして生まれたのがαラクトアルブミン、母乳の素になる物質です。

つまり、母乳の起源は殺菌物質リゾチームを含んだ汗のような液体でしたが、それがあるときに変化して母乳の素となるαラクトアルブミンを含む栄養豊富な液体に変わったと考えています。

母親の汗に甘い栄養分が含まれるようになり、それを卵から生まれた赤ちゃんがなめたことで子育てに革命が起きました。子どもは甘い汗を頼りに育つようになったのです。母乳さえあれば子どもが育つようになり、母乳がつくる絆が母への愛情へとつながっていったのです。

長い年月を内にDNAはときどき変化を起こしますが、そのほとんどが役に立ちません。母乳のように奇跡的に役立つものが生まれることがあるのです。



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posted by CYL at 12:34 | NHKスペシャル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする