2015年05月26日

NHK「オイコノミア」子育ての経済学 少子化と女性の社会進出


NHK「オイコノミア」子育ての経済学



ひとりの女性が一生に産む子供の数を示す合計特殊出生率が1.3人となっている日本では生まれる子供の数が年々減少しています。このままのペースでいくと現在日本の人口約1億2千万人が2060年にはおよそ3分の2の約8000万人代なるという予測があります。そんな少子化が進む背景の一つとして挙げられるのが女性の社会進出ですが本当にそうでしょうか?子供を社会全体で育てる仕組みを経済学から考えてみようと思います。ゲストはシングルマザーの女性と結婚し現在小学校高学年の長男と1歳の長女の2児のパパであるタレントのユージさんです。ユージさんは家に帰るとすべての育児を奥さんに代わって行っているそうです。

女性の社会進出と出生率

女性の労働力率の国際比較を調べるとスウェーデンとフランスは日本よりも女性が働いている割合が多いにもかかわらず、合計特殊出生率は、日本より高いことがわかります。(日本1.3、スウェーデン1.9、フランス1.8)これは女性が働くと子供の数が減るという単純な関係にはなっていないことを表しています。ちなみに合計特殊出生率とは、ひとりの女性が一生で産む子供の数です。日本の特徴は「M字カーブ」で、20代まで女性が働く割合が高まって30代でガクンと落ち込み再び上がるというM字を描くような形になっていることです。それは30代で結婚や出産のために仕事を辞めている女性が多いことを示しています。日本の女性が直面する問題は、出産を取るかキャリアを取るかという二者択一を迫られることです。経済用語では出産とキャリアの関係をトレードオフと呼びます。

トレードオフとは
トレードオフとは、一方を優先または追及をしたときに他方を犠牲にしなければならない状態や関係のことをいいます。

新しい働き方

この出産とキャリアのトレードオフが少子化を引き起こす原因のひとつとなっています。そんな中、トレードオフを解消しようと新しい働き方を導入する企業があります。都内にあるIT企業のサイボウズです。サイボウズには育児を応援する制度が3つあります。1つ目が小学校にあがるまで最長6年間にわたる育児休暇制度です。2つ目は子供を連れて出勤できる子連出勤制度です。そして3つ目は在宅勤務制度です。

代表を務める青野慶久さんは話を伺うと制度導入の背景には社員の離職率の高さに悩んでいたことにありました。以前までは残業や休日出勤が多く2003年の離職率は28%という高い数値は1年で4人に1人が辞めていく異常事態でした。社員が辞めればその穴を埋めるべく新しい社員を採用し、そして教育する必要があります。その効率の悪さをなんとかしようと考えた結果できた制度が育児を応援する制度でした。その結果、2012年の離職率は4%と大幅に改善されました。

育児=市場開拓

社長の青野さん自身も第3子が生まれ現在は16時までの時短勤務を行っています。もともと大企業に所属していた青野さんは上司が率先垂範して制度を利用すべきだと語ります。多くの大企業では制度自体は整っていますが利用する人がいないといいます。それは制度を利用した場合、出世コースから外されてしまうのではという不安があるためです。社員に不安なく制度を利用してもらうよう努めています。青野さんは、子育ての大切さを社員には伝えているといいます。それは、子育ては新しい市場をつくることであるということです。子供たちはやがて成人をして消費者となります。それはある意味で子育ては市場開拓、市場創造を行っているのと一緒です。休みを取って会社に迷惑をかけているのではなく、長期的な視点からみれば会社に利益をもたらす行為、それが子育てだと伝えています。

ワークシェアリング

社長である青野さんの時短勤務を可能にしているのはワークシェアリングです。ワークシェアリングとは雇用を分け合うことで1人に集中する負担を減らしたり雇用者数の増加を図ることをいいます。仕事を属人化(人に帰属させるのではなく)させないで、病気や休みのときに代わりができるようにする仕組みづくりです。サッカーで言うなら1人が複数のポジションをこなせるようになれば、突然空いてしまったポジションの穴を埋めることができるというのと同じです。

出生率の改善の鍵は男性にあり

男性の家事・育児時間割合と合計特殊出生率の国際関係比較を調べてみると、男性が家事・育児に関わる時間が多いほど出生率が高い傾向があることがわかります。事実、夫が家事・育児に積極的でない家庭ほど第2子を作らない傾向があります。

小一の壁

ニュースなどでよく耳にする保育所の待機児童問題は、保護者が保育所に子供を預けたくても定員オーバーのため預けることができないという問題ですが、これは未就学時の問題です。小学校になると学童保育といって保護者が就労状態などによって放課後の面倒を見えてもらえない児童を保育する仕組みになります。しかしこちらも定員があり潜在的な学童保育の待機児童は約40万人と言われています。小学校入学と同時に仕事を辞めざるを得ないのが小一の壁と呼ばれる問題です。

東京都江戸川区の取り組み

江戸川区では学童保育の待機児童はゼロです。その理由は「すくすくスクール」という地元の地域ボランティアが活躍する学童保育制度にあります。すくすくスクールは平成17年から江戸川区のすべての区立小学校で実施されています。以前までは小学校3年生までで人数に制限がありましたが、現在は小学校6年生まで希望するすべての児童が受け入れています。子供たちの面倒をみるのは地域ボランティアの方々です。ストロー風車づくりや琴教室、書道教室、囲碁教室などを行っています。世代を超えた交流ができて子供たちもボランディアの人たちも楽しそうです。このような関係を経済学では「ソーシャルキャピタル」と呼びます。

ソーシャルキャピタルとは、社会のつながりや人間関係の豊かさを「社会関係資本」として捉えた考え方をいいます。ソーシャルキャピタルが高まると、人々の信頼や協力、そして幸福度が高まり経済効率がよくなると考えられています。3世代同居が珍しくなかった時代では誰かが働きに出ても子供の面倒を見てれる人がいました。現在は核家族化が進み、共働きが増えたことでソーシャルキャピタルを高めることの重要性が一層増しています。


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posted by CYL at 17:14 | オイコノミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする