2020年05月05日

欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ(4)

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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ 大いに語る(4終)


世界は統合し解体は難しい
アタリ氏は、保護主義の台頭に警鐘を鳴らしています。たとえば、アメリカが中国の製品の輸入を禁止し、すべてアメリカ国内で製品をつくろうとした場合、インフレが起こりうる危険が生じます。いまやiPhoneが約50カ国で生産された部品から構成されているように、世界はすでに統合され、その解体は難しいのが現実です。世界分業に波にはもはや逆らうことができないのです。

一方で、経済的に密接な関係が戦争を妨げることができるとは限りません。それは、1914年のイギリスとドイツの事例が示しています。当時のイギリスとドイツは経済的に密接な関係があり、戦争をすることはないと思われていましたが、実際には戦争に発展してしまいました。そしてイギリスとドイツの関係が回復したのは、つい2年前です。

日本の生きる道
日本において、少子高齢化がによる人口減少にあわせてアタリ氏が懸念するのが、外国移住に起因する人口減少です。いま、東欧のルーマニアやブルガリアのように国民が国を離れることによる人口減少が起こっており、ルーマニアやブルガリアでは今後20年間で20%の人口減少が予測されています。

外国移住による人口減少を防止するために大切なことは、国内の活力の維持です。日本は中国の活気(ニーズ)を捉えることが成功の道であるとアタリ氏はいいます。そのためには中国からの労働力に門戸を開き、中国市場のニーズを的確に捉え、イノベーションを繰り返すことであるといいます。

未来を恐れば必ず失敗する
アタリ氏は暗示のようなものあると前置きをした上で、”未来を恐れば必ず失敗する”と語ります。地震や災害など短期的にみれば世界は不確実性で溢れています。だからと予測不可能なことで行動が妨げられてはいけません。予測不可能、不確実性の中で、確実なことのリストを作成し、確実なこと、たとえば21世紀はアジアではなくアフリカの時代であるというようなことに目を向けて行動することが重要であるといいます。



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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ(3)

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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ 大いに語る(3)


利己的な利他主義
経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、1759年の道徳感情論で人間誰しもが持つという他者への共感が社会の秩序を生むと説いています。一方で1776年の国富論では、市民一人一人の利己心が社会を推進すると説いています。利己と利他は、一見相反する言葉のようですが、アタリ氏は、このアダム・スミスの道徳感情論と国富論の主張は同じであると語っています。

たとえば、パン屋さんがパンを販売したとしましょう。パンが売れる場合は顧客が喜んでいます。利他主義が自分に帰ってくることの表れです。つまり、パン屋の例では、利己と利他は相反する事柄ではないということを意味します。自分勝手にパンを売ってもパンは1度は売れたとしても2度は売れません。結局、利己主義では、ビジネスは続かないことを意味します。これが、アタリ氏が、アダム・スミスは、道徳感情論と国富論が同じことを言っていると説明する理由です。利他主義が結局は自分の利に変わって帰ってくるのです。

ポジティブ資本主義
利他主義の”利他”をどのように定義するかが大切ですが、アタリ氏の利他とは、”将来の世代の利”と考えています。そのため、将来の世代のためになるのか否かの視点をもって考える資本主義をポジティブ資本主義と呼んでいます。

資本主義の問題は短期思考であることです。株主から長期的な視点の理解を得ることは容易ではないこともあり、長期的な利益よりも目先の利益の確保が優先します。(資本主義での理想は家族経営です。家族経営であれば、子や孫に継承するために長期的な視点をもって経営にあたるからです。しかしながら現実は、短期的な視点で利益を上げて企業を亘り歩く経営者も少ないないのが現実です。)民主主義においても同様に、有権者の人気取りに躍起になってしまい短期的な視点でのものの見方が主流となってしまいます。

この問題点の解決のためにアタリ氏は欧州で”影の議会”の設置を行いました。影の議会とは、生まれていない有権者世代の代表として、将来の世代のためになるのかという視点で、ものを見ることを行います。つまり、法律が現在の我々のためになっていると同時に将来の世代のためにもなっているのかを影の議会は判断するということです。私達は、複眼的思考を持ち合わせることが不可欠であり、さらには自分たちの子供世代のことを考えるだけでは不十分で人類全体を考える必要があるのです。


その(4)に続く
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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ(2)

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欲望の資本主義2020スピンオフ_ジャック・アタリ 大いに語る(2)


家族政策が必要
課題先進国日本の課題にひとつとして少子高齢化が数えられています。世界ではシュリンク(縮小)とエコノミー(経済)の造語で、シュリンコノミーと呼ばれ、少子高齢化による経済の縮小にどのように日本が対応するか注目されていますが、一方で日本はこの課題に対して、無策であるとの認識も世界にはあります。

アタリ氏は、少子高齢化に向かう日本で大切な対策は、家族政策(family policy)であるといいます。アタリ氏の母国フランスで成功した政策のひとつで、フランスでは1945年から家族政策を実施し、GDPの5%〜7%を費やし政策を実施したおかげで、現在のフランスの特殊出生率は2.2で、人口動態の観点からはフランスは欧州諸国の中で若い国ということができます。

家族政策(family policy)では、女性が子供を産んでも働きやすい環境を整えるということ、つまり、育児手当の拡充や乳幼児や幼稚園の増設計画などを意味します。家族政策が容易ではない点は、結果がでるまでに時間がかかることとその結果が見えにくいことにあります。

未来の投資のために
2019年に消費税増税が行われましたが、アタリ氏は財政政策よりも日本の社会流動性(social mobility)を高めることが大切だと語ります。日本の社会では親の年収と子供の学歴の相関関係があることが示されているように、経済的に恵まれた家庭に生まれた子供の方が将来、成功する確率が高いと言われていますが、貧しい家庭であっても一生懸命がんばれば子供たちにより良い未来が拓けると思える社会でなければいけないということです。雑駁に言えば、社会流動性(social mobility)を高めるとは、どんな家庭環境に生まれても成功のチャンスが平等にあるという社会ということができるのではないでしょうか

関連記事リンク:日本は、労働人口減少の経済的打撃を緩和する改革が必要(OECD)

(3)に続く
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